市橋織江

市橋織江 (いちはし おりえ)

写真家
1978年生まれ。
2001年に写真家として独立。
数々の広告や雑誌、アーティストの写真を手掛ける。
2009年映画「ホノカアボーイ」の映像撮影、TVCMなどムービーカメラマンとしても活躍。
昨年6月
「Orie Ichihashi IMPRESSIONNISME」
ポーラアネックスミュージアムにて個展開催。
写真集には「BEAUTIFUL DAYS」(2011年)、「PARIS」(2011年)、「Gift」(2009年)を発表するなど精力的に活動中。
今年12月に箱根彫刻の森美術館にて自身初の大型個展に向け作品制作中。

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市橋織江

今回は、市橋織江さん×ケーナ編集長のプチ対談です!実際に使用しているカメラのファインダーを覗かせて頂いたりと素敵な体験をしたケーナ編集長。市橋さんの撮影方法をはじめ、フィルムカメラに関する色んなことを質問させて頂きました!それでは、後編スタート!

Keina(以下:K):ロケーション選びは、事前にどこを撮りたいっていうのを決めていくのか、それとも行っちゃってから見つけるんですか?

市橋さん(以下:市):行っちゃってからですね。事前情報は、ほとんどなくて行くことが多いですね(笑)。

K:じゃあ、その行く先々で、面白そうとか、いいなと思ったものを撮っていく感じなんですね。

市:はい、そうですね!

K:シャッターって、たくさん切る方ですか?

市:切る枚数は、すごく少ないと思います。

K:今、ここを撮りたい!っていうタイミングで、1枚だけ撮るっていう感じなんですね!

市:そうなんです。ほぼ1つの絵に対して1枚ずつシャッターを押していくっていう感じです。

K:じゃあ例えば、人が歩いていたりして、風景も少しずつ変わっていくじゃないですか。
そんな時は、どうやって撮影するんですか?

市:ある程度、”撮りたい絵”のために待ちます。例えば、ここに人が入ってきたらいいな~って思ったら、人が来るまで待ちます。そうやって、その切り取りたい一瞬を撮影します。もしくは、結果的にそんなことを考えずに、”その瞬間”に撮っているかのどっちかですね。

K:今も、フィルムのカメラを使われているんですか?

市:むしろ、フィルムでしかやってないですね。

K:カメラは何を使われているんですか?

市:Mamiyaの中盤カメラです。
(カメラを実際に取り出して見せてくれる)

市橋織江

K:このカメラって重たいですか?

市:私にとっては重たいですけど...。男の人だったらそんなでもないのかもしれないですね。

K:フィルムチェンジとか難しそうですね。

市:そうですね~。でも、すぐ覚えられますよ。そんなに難しくないので慣れますよ!

K:撮影するときは、首から下げているんですか?

松:持って撮影します。写真集「PARIS」とかの撮影の時は、ずーっと持って歩いて、パリの街中を1日中、歩いていましたよ。

K:「あっ!」とかって、落ちちゃったりしないですか?

市:過去、ないですね、落としたことは(笑)。

K:なんか、ストラップとかをつけるのかなって思ってました。

市:どうなんでしょうね~。ストラップつける人いるのかな、あっ、でも付けるところありますね(笑)!
でも、重いしバランスが悪いから首が痛くなりそうですけどね。

K:このカメラは、ずーっと使われているのですか?

市:独立したときから、この機種ですね。もう、何代目かわかんないくらいです...。
こういった中判カメラって触ったことないですか?

K:ないです!

市:せっかくなんで、どうぞ持ってみて! ファインダーをのぞくと、横位置になってるんですけど、こうやって回すと縦位置になるんですよね。ここがフィルムの入る場所(BOX)なんです。あと、左右が逆転しているんで、ちょっと違和感があるかもしれないです。

市橋織江

K:ファインダーをのぞくと、なんかすごく奥行きがあるように感じられますね。

市:フィルムサイズが大きいので、そう感じるかもしれませんね。だから、ピントが浅いんですよ。

K:撮影するのが楽しそうですね!

市:そうなんです。ファインダーも大きくて美しいので、すごく撮る気になるんですね。

だから、フィルムでも35ミリを使用している時よりも、撮っていて楽しいですよ。

K:へぇ~。そうなんですね。

市:でも、フィルム1本で10枚しか撮れないので、フィルムチェンジは大変なんです。
だから、あんま撮りたくないんですよね...(笑)。

K:デジタルカメラに移行はしないんですか?

市:そうですね...。写真を始めたときって、当時デジタルカメラはなかったんです。でも、フィルムの中でもいろんなやり方があったんですね。で、最終的にいきついたのがこのカタチだったんですね。だから、これがすごく自分のスタイルに合っていると思っていますね。特にデジタルへ変える必要もなく、変えようと思ったこともなく、今まで来ていますね。でも、周りからは何でデジタルにしないの?って言われますけど...(笑)。

K:確かに、言われそうですね(笑)。

市:このスタイルで現場へ行くたびに、周りからは驚かれるんですけど、私にとっては普通なので、何の驚きもないんですよ。特に変える必要を、今のところ感じていないので、変えていないっていうだけなんですけどね...。ただ、「フィルムでしかやっていないんです」っていうと、やっぱりやらせていただけない仕事とかもありますね。それは、仕方ないです。

市橋織江

K:それでも、お仕事が来るわけだし...、カッコいいですね!

市:最終的な写真の仕上がりっていう意味では、デジタルの技術も発達していて、フィルムで撮ったモノと遜色がないように仕上がったり、自分がやりたいような絵になる技術はたくさんあるんです。でも、そんな環境でも、私にとって変えられない理由があって...、それは、”撮る時に、撮る気持ちになれない”ってとこなんです。いい絵が撮れる気がしないというか...。このMamiyaのカメラで覗いたときに、「あっ!ここでシャッター押そう」って思う感覚と、デジタルを持ったときだと、その感覚は違うんですね。瞬間的に”いい絵に気づけない”という...、なのでどうしても、変えられないんです。

K:撮るタイミングは、感覚的なところもあるんですね。体で覚えていたりとか...。

市:ありますねー。写真は、撮るときがすべてですからね。

K:プリントは、技術的なものであったりとか、ご自身なりの方法みたいなのってあるんですか?

市:全然ないと思います(笑)。自分で勉強して、誰に教わったわけでもないので、自己流かもしれないですけど...。
特に変わったことはやっていないです。

K:ご自身の部屋で、暗室があるんですか?

市:はい。自宅にありますよ。あの酸っぱい匂いがする部屋です(笑)。

市橋織江

K:プリントの色って、自分のイメージ通りになるように調整をされているんですか?

市:はっきりした色とか、淡めの色っていうのは、プリントの時点ではもう変えられないんですよね。なので、そんな色を出そうと思ったら、フィルムの種類を変えるしかないんですよ。あとは、カメラのレンズを変えるとかですね。ただ、撮影する時点で、私の中では色味は決まっていますね。だから、デジタル写真のようなトーンカーブとかとは全然違います。コントラストは変えられないし、彩度も変えられないし、暗部をしめるとか、ハイライトを抑えるとかもできないんですよね。なので、できるのは全体的に、青くするか、黄色くするかぐらいです。ほんとに、やれることってすごく限られていて、撮る時点でかなり決まっています。

K:すいません!素人質問ばっかりで・・・。

市:いえいえ!プリントっていうのはデジタルで撮るプリントと違うんですよね。
フィルムは、印画紙にプリントするというよりは、焼き付けるという感じなので感覚的にも違いますね。

K:みんな市橋さんみたいに、同じ写真を撮る必要もないですし、撮れないと思うんですけれども、
ちょっと上手く写真を撮るコツがあれば教えて欲しいです!

市:人によってね、全然違う気はするんですけど...。私はとにかく世の中に存在するものを”切り取る”のがすごい好きなんです。だから、自分で”作り出す”ことには全然興味がないんです。だから、撮る時の気持ちをとても大事にしています。あとは、色と光。これは、とても気をつけています。私の場合、作家性が強くない写真だと思っているんです。要は、写真にメッセージを持たせていないっていう意味です。色がきれいだとか、光がきれいだとか、そういった基準で撮っているだけであって、写真で何かを伝えたいとかはないんです。写真にメッセージを求める人にとっては、軽過ぎて面白くないっていう人もいると思うんですけど...、そこは好きずきですからね。たまたま、私はそうだったっていうことですね。

K:最後に、読者の方へメッセージをいただけますか?

市:そうですね...。 “自分はこれが好きだ!”と思う感覚を、どれだけ大事にできるかっていうことを大切にしてもらいたいです。なかなか、”好きなモノ”がコレって、わからないっていう人もいるかもしれませんが、でも、絶対にあると思うんですね。よく「どういう写真をとっていいかわからない」っていう人がいますけど、絶対にあると思うんですよ。そこは、自分との対話で、人から得られる部分ではないかと思います。「自分は何が好きなんだろう?」って、突き詰めるしかないですね!