ギャラリー、本屋、カフェ...さまざまな看板を持つ「6次元」って?

道前宏子

道前宏子 (どうぜん ひろこ)

1981年神奈川県生まれ。お茶の水女子大学卒業。映像制作会社を経て2008年より荻窪「6次元」をナカムラクニオさんと共にスタート。写真やイラストの展示、読書会、トークショーなど数々のイベントを定期的に行いながら、フリーランスとして編集やライター業も行っている。編集した書籍『人が集まる「つなぎ場」のつくり方 ~都市型茶室「6次元」の発想とは~(阪急コミュニケーションズ)』が10月24日に発売。

~「6次元」のコンセプト~
農林業、漁業といった第1次産業、そこで生産されたものを加工する第2次産業、小売や教育など形に残らないものを扱う第3次産業。これらのすべてが連携し合う”6次元化された社会”を理想とする新しいネットワークづくりの場を目指している。

【LINK】
6次元

【WORK】

人が集まる「つなぎ場」のつくり方 ~都市型茶室「6次元」の発想とは~
人が集まる「つなぎ場」のつくり方 ~都市型茶室「6次元」の発想とは~

今回お話をお伺いしてきたのは、道前宏子さん。箱庭の拠点でもある荻窪の地で、ギャラリー+古本+カフェという一風変わった空間「6次元」を運営されています。詩人の谷川俊太郎さんやミナ ペルホネンの皆川明さんといった著名人から、出版関係者、若手クリエイターまでさまざまな人が集まる「6次元」とは一体...?じっくりお話を聞いてきました!ちなみに「箱庭がつくる ほっこり雑貨手帖」出版記念イベントもここ6次元さんで行われたんですよ。

箱庭(以下:h):まずは、ここ「6次元」をスタートさせた経緯を教えて下さい!

道前さん(以下:道):元々はテレビの番組制作会社に勤めていました。美術番組の制作をしながら、「いつかアートの仕事がしたいなぁ」と思っていたんです。仕事を通じてたくさんの美術品に触れるうちに、アートの世界にどんどんハマってしまって。当時の先輩で美術マニアだったナカムラに誘われて6次元を一緒に始めました。現在はギャラリーカフェとして、絵画や写真、工芸の展示に加え、書道のライブペインティングや演劇など、実験的にいろいろなことをしています。

h:この場所は伝説のジャズバー「梵天」の跡地だったそうですが...なぜこの場所に?

道:40年前はジャズバー「梵天」、カフェ「ひなぎく」、その後を受け継いだのが今の「6次元」です。ここは長い年月をかけて、たくさんの人たちの思い出が詰まった場所です。後からわかったんですが、この場所を継ぎたい!と思っていた方が実はたくさんいたんですよね。

道前宏子

h:へ~!でもそんな激戦を勝ち抜いて、この場所を受け継いだわけですよね。

道:「店内を真っ白に改装してカレー屋を開きたい」っていう方もいらしたんですけど、”そんなの勿体ない!この空間をそのまま活かしたい”と思っていました。すると当時のオーナーさんが「6次元さんだったら、この空間を活かしてくれると思うから」と応援してくれたんです。なので、木の内装やランプも40年前から変わっていません。使っている椅子は「梵天」時代から受け継いだものをミナ ペルホネンの布に張り替えたりと少しずつリノベーションしています。

道前宏子

h:すごい!この場所の歴史や意志も、そのまま受け継いでいるんですね。このあたりに住んでいる人はもちろん、昔ここを訪れたことがある人にとっては感慨深いものがありそうです...。

道:そうなんです。「6次元」がオープンする前、知らない女性がいきなりここを訪ねてきたことがあったんですね。お店に入ってきた途端、いきなりワッと泣き始めたものだからビックリしちゃって。理由を聞いたらその女性は「梵天」時代の常連客で、ここは昔、恋人と密会していた思い出の場所だったそうです。40年前と何も変わらない店内を見て思わず涙が溢れたって。その時に思いました。あぁ、これはとんでもない場所を受け継いでしまったぞ、と(笑)。この場所には、たくさんの人たちの青春や想いが今も脈々と息づいているんです。

道前宏子

h:「箱庭」の拠点も荻窪なんですが、このあたりって土地も店も人も面白いですよね。

道:本当にそう思います。「6次元」は神社とお寺と中央線に囲まれている面白い立地で、不思議なことがたくさん起こるんです。たまたま隣に座った人同士が20年振りに会う親戚だったり、ここで出会った人たちが次々と結婚したり。実は6次元がオープンしてからの4年間で15組のカップルが誕生しているんですよ。縁結びのパワースポットです(笑)。また、荻窪には昔”文士村”があって、芸術家がたくさん暮らしていました。6次元のお店のすぐ目の前には版画家・棟方志功の家があり、太宰治、与謝野晶子、井伏鱒二など著名な作家たちがこのあたりに大勢住んでいたんです。今も昔も、ここはクリエイターが集まる土地なんだと思います。

h:なるほど、そんなクリエイターたちが今、集まる場がここ「6次元」なんですね。
今までこの場所でさまざまな企画展やイベントが行われていますが、中でも印象深いものはありますか?

道:う~ん!どうしよう、山のようにありすぎて選ぶのが難しいですね(笑)。「箱庭」さんも以前うちで出版イベントを開いて下さいましたが、6次元で出版関連のイベントをやり始めたのはリトルモアという出版社から発売された「コケはともだち」という本がキッカケでした。苔好きの女子=コケガールが集まって、苔をイメージした抹茶味のコケドリンクやコケスイーツを食べながら”コケ友”と語らうイベントを企画したんです。想像以上にたくさんの苔好き女子が集まってすごく盛り上がりました。

道前宏子

h:コケガール、いいですね!そういえば箱庭メンバーにも1人います、苔好き女子(笑)。

道:それまでフィーチャーされていなかったけど、実は意外といるんですよね。当初は2000~3000部売れれば大成功と思われていたその本が1ヶ月で何と2万部も売れて。それまでは「小さな場所だし、小さく発信していこう」と思っていたんですけど、小さなメディアでも大きなことができるんだ!と感じた印象深い出来事です。

道前宏子

h:「箱庭」もそれに近いかもしれません。私たちも最初は、小さなメディアで小さく発信していこうって思ってたんです。そしたら想像以上の反響があって「えっ、えっ!?」みたいな。

道:そうですね、すごく似ていると思います。ソーシャルネットワークの時代だからこそ、というのがあるのかも。箱庭さんにも言えることだと思うんですけど、SNSによる影響ってすごく大きい。6次元もtwitterを始めてから大きく発展しました。twitterってまるでパーティー会場みたいだなぁってよく思うんです。

h:パーティー会場ですか?

道:はい。タイムライン上で憧れの人を見かけたら、話しかけてもいいし、会話を眺めているだけでもいい。でも思い切って話しかけたら、つながるかもしれない。自分が何かアクションすることで色んな可能性があるわけです。それって6次元も似ていて、お店でお客さんが「こういうデザイナー探してるんだよね」って話してたら、隣の席の人が「いい人知ってるよ」と声をかけて、そこから仕事が生まれるなんてこともあります。6次元でやってることがtwitterでも起きている。ネット上でもリアルの場でも、そういった人と人とのつながりには無限の可能性を感じています。

つづく

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