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こんにちは!タナカユウキです。
今回は日本の玄関口である「空港」について、けんちく目線でご紹介します。

建築というと、むつかしい顔をしながら腕を組んで考える、そんな分野に捉えられがち。
建築がもっと身近に感じられるよう「建築」ではなく「けんちく」のような柔らかい部分をお伝えできればと思います。

そして、けんちく目線を取り入れた場所の紹介を通して、素敵な建物との出会いや新たな発見につながれば嬉しいです。

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ある国を訪れるとき、最初に足を踏み入れ、その国を体感する場所。それが国際空港です。
そこでは日々、たくさんの出会いや別れのドラマが繰り広げられています。
その国に降り立つとき、その国を旅立つときに色々な想いが巡るその理由として、空港という建築自体にひとの感情に訴えかける力があるから、ということがあるのかもしれません。

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日本で最初に降り立つ場所

今回は「羽田空港 国際線旅客ターミナル」について。
いまや、成田空港と双璧をなし日本の玄関口として機能する羽田空港。
国際線の発着を担う国際線ターミナルは、2010年にオープンしました。

24時間開港し、多くの外国人の方が訪れるこの建物には、日本の魅力を伝える工夫がちりばめられています。
さらに、けんちく目線で見てみると、人種・国籍を問わず、そこで過ごす時間が快適なものになるようにと考え抜かれた技術が隠されています。

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日本の自然風景をモチーフにした大空間

空港全体を覆う大きな屋根。この屋根の曲線は、富士山のゆるやかな尾根のカーブを表現しています。
また、建物のなかで見上げた時に見える屋根の内側は、すじ雲が重なった様子を表しています。

151219tanaka_04すじ雲の隙間からは太陽の光が、広く大きな空港内を明るく照らしています。
屋根に設けられたこの窓は、自然採光によって照明のエネルギーを減らす役割を担っています。
この建物に架けられた大きな屋根には、日本の自然風景を表し、省エネを実現するための工夫がありました。

151219tanaka_05一方、視線を落とすと、太陽の光を柔らかく反射するコバルトブルーの床。
これは、青空を映し出した穏やかな海面を表現しています。

屋根のつくりと、床の素材をもって、「空と海」という意味が与えられた大空間。
多くのお客さんが海外への搭乗手続きを行うこの場所では、建築の力が、旅立つ前の気持ちを盛り上げてくれます。

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柱が守る、快適な環境と安全

屋根を支えるのは、18mの間隔で配置された大きな柱。
支える構造として、柱は欠かせません。ですが、広々と視界の開けた空間をつくるために、柱は出来るだけ少なくしたいもの。
大きな屋根を支えるために必要な強度を考えながら柱を減らし、国内では最大級の広さである18mという間隔で柱が立てられることとなりました。

151219tanaka_07柱をよく見ると、なにやら怪しげな箱が。
この箱には、火災のときに動き出すスプリンクラーが隠されています。
炎を検知し、この箱から現れるスプリンクラー。そこから、消防車のホースのように水を放ちます。

スプリンクラーといえば、天井からシャワーのように水が降り注ぐものが一般的。
しかし、空港のように大きな空間では、力不足となるため、高圧で遠くまで水を飛ばすことができるタイプのものが用いられています。

けんちく目線で見てみると、万が一のとき、この場所にいる人々の命を守る設備が隠されているのでした。

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羽田空港によみがえる江戸の町並み

出発ロビーから上がると、そこには江戸の町並みが再現されています。
「江戸小路」と名付けられたこの商業スペースでは、空港を訪れた方の気持ちを盛り上げてくれるようなお店が立ち並んでいます。

このスペース全体を手がけたのは、京都を代表する数寄屋建築大工・中村外二工務店。
その二代目であり、「江戸小路」における建築に携わった中村義明さんは、次のように語っています。

初めて日本を訪れる外国の方にとって、このターミナルは最初に日本を感じる空間です。
前知識が何もなく、自分で感じたものを判断する。それを私は”赤子の心”と呼んでいますが、そういう人に見ていただいた時に「日本は素晴らしい」と感じてもらえるものをつくりたいと思いました。

木材をふんだんに使ったり、壁を左官で仕上げるなど「本物」にこだわったこの空間では、古き良き日本の景観を楽しみながら買い物をすることができます。
不燃仕様といわれる燃えにくい木材が開発されたことで、このような大きな建築にも本物の木材を使用することができるようになりました。

151219tanaka_09江戸小路の奥には、ひのきで造られた「はねだ日本橋」。
日本橋をかたどった大きな橋に、すじ雲がかかる様子がとても印象的です。

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冬の夜、綺麗に彩られる出発ロビー

毎年冬の時期になると、陽が落ちてくる頃、大きな屋根は色とりどりにライトアップされます。
長い待ち時間が生じても、日中とはまた違う幻想的な顔で楽しませてくれます。

151219tanaka_11同時に、イルミネーションも催されます。
京都から運ばれたという竹を使ったイルミネーションは、空港を訪れたときの高揚感をさらに盛り上げてくれます。

151219tanaka_12ほのかな光で照らされるガラスの筒。
「エアブリーズタワー」といわれるこの筒は、下から空調の空気が立ち上っています。
この筒自体が、冬はじわりと温かく、夏はひんやりと冷たくなることで、周囲の温度を快適に保つ役割を担っています。

151219tanaka_13ガラスの筒のてっぺんからは、空調の空気をはき出すことで、外気の影響を受けやすい建物出入り口近くの温度環境を整えています。

151219tanaka_14個人的に、とても好きなサイン看板。
うっすらと、ヒスイ色をした盤面。内部の照明器具などの影が全く浮き出ていないデザインが格好良いと思いました。

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スムーズな搭乗手続きのために

アイランド型といわれる、離れ小島のように一定の間隔で設けられたチェックインカウンター。
それぞれの島の間には、ゆったりとした空間が確保されています。
カートを押したお客さんや車椅子を利用する方がストレスなく移動することができるように。そんな想いのもと計画されています。

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誰もが安心して使えるために

ターミナルの1階には、補助犬用のトイレがあります。
国内の空港として初めて設置されたというこのトイレは、中はとても広く、補助犬の排泄物を片付けられるスペースなどの工夫がありました。
障害のある方に寄り添うパートナーとして当たり前の存在となった補助犬。
そんな補助犬のためのトイレには、誰もが安心して使えるようにというユニバーサルデザインの考え方が取り入れられていました。

151219tanaka_17日々多くの人を迎え入れ、送り出す羽田空港。
そこで過ごすひとが快適であるように、また、日本での思い出が素敵なものとなるように、という想いと知恵が詰まった建築でした。
ひとだけではない。日本の玄関口であるこの国際空港に、補助犬にも優しい機能がある。
人種・国籍、さらには、種を問わない「みんなのための建築」がそこにはありました。

    羽田空港 国際線旅客ターミナル

    住所:東京都大田区羽田空港
    営業時間:館内施設により営業時間が異なるため、詳しくはホームページをご確認ください
    URL:http://www.haneda-airport.jp/inter/

◆箱庭キュレーター
profile_tanakaタナカユウキ|Instagram
おなかの弱い一級建築士。国内を飛びまわりながら建築関係のお仕事をさせて頂いております。
好きな食べ物は、ドーナツとカレーライス。サンドイッチは縦に食べます。