©NHK・NEP・TMC

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ミスチルのMVやEテレのプチプチ・アニメ『森のレシオ』から最新作まで!名作を一挙上映する『村田朋泰特集・夢の記憶装置』が本日から順次公開

こんにちは。箱庭編集部のみさきです。
今日は人形アニメーション作家・村田朋泰(むらた ともやす)さんのインタビューをお届けします。

村田さんは1コマごとに人形やセットを少しずつ動かしたものをカメラで撮影し、それを繋げることでアニメーションにする“コマ撮りアニメーション”という技法で作品を制作している方です。
Mr.Childrenの「HERO」やGalileo Galileiの「サークルゲーム」のミュージックビデオ、Eテレ「プチプチ・アニメ」内にて現在放送中の『森のレシオ』などの作品を手がけており、観たことがある!という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな村田さんの15年にわたる活動の中から厳選した名作を一挙上映する『村田朋泰特集・夢の記憶装置』が本日3月17日(土)から全国で順次公開されます。

本特集上映では、東日本大震災がきっかけで作り始めた<生と死にまつわる記憶の旅>シリーズの最新作「松が枝を結び」が初公開されるということで、村田さんの作品をはじめて観る方がこれまでの作品をまとめて楽しむことができることは勿論、ファンの方にとっても待望の上映となります。

インタビューでは今回の特集のことや、村田さんがアニメーションに込める想い、こだわりなど色んなことをお話いただきました。

今回特別に普段村田さんが制作をしているスタジオにてインタビューに応じていただいたので、まずはアニメーションの制作現場がどんなものなのか写真とともに少しご紹介したいと思います!

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わずかな動きでやり直しになる繊細な作業現場

村田朋泰

1秒15コマの「2コマ撮り」で撮影した村田さんのアニメ―ションは、コマ撮りであることを忘れてしまうくらい滑らかで自然な動きをしています。

村田さんはセットや人形の制作のみスタッフさんに頼み、それ以外の絵コンテ作りや照明、人形の動きなども含めた撮影に関しては基本的に一人で行っています。とても大変そうですが、一人で行うことによって頭で考えた些細な仕草がうまく表現でき、自分の世界観を映像づくりに反映しやすいそうです。

一コマ一コマ確認しながら進めていき、変な動きだと思ったらやり直し。つじつま合わせな動きになってしまわないように、だめなら早めにやり直すことがポイントだとおっしゃっていました。最初の一秒を作ると、感覚でだいたいうまくいくか分かってしまうのは、プロだからこそなせる技です。
髪の毛のわずかな動きでもやり直しに繋がってしまうほど繊細な作業なので、村田さんもうまくいった時の感動はやはり大きいそうです。

村田朋泰

私たちの心に語りかけてくるような人形のまなざし

村田さんの作品は、作品によって人形の目に違いはあるもののどの人形の目も印象的で、まるで命が宿っているのではないかと思うくらいまなざす力を感じます。

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やはり人形の目は力を入れている箇所の一つのようで、動いていない人形からも目に何か感じられるように心がけているとおっしゃっていました。

村田朋泰

上の写真は、現在制作途中の作品に登場する狩人の目です。こんなに小さいんです!
まばたきが表現できるように、目が閉じるまでの過程で何通りもの目のパーツが存在します。右目と左目それぞれのパーツをコンマごとに動かすので、ピンセットで行うこの作業は至難の業。もう少し簡単に目を動かせないかとこれまで色んな策を試してみたそうですが、この方法がベストなのだそうです。

パーツが無くならないように注意しながらコンマ単位で動かす、つねに緊張感が走る現場で村田さんは日々制作しています。私たちの心に語りかけてくるようなアニメーションが完成するまでの背景には、こんな地道な過程があるんです。

動かすことの大変さを受け入れ、人形の繊細さを追求し続ける

動きの繊細さだけでなく、もう一つ注目していただきたいのは人形に使われている素材の繊細さです。

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(上の画像は2003年作の「白の路」、下の画像は2015年作の「木ノ花ノ咲クヤ森」。)

2つの作品で使われている人形を見比べてみると、初期の作品と比べ素材の種類が増え、かつ繊細な素材を使っていることが分かるかと思います。

人形が繊細になればなるほど動かす時に慎重にならなければいけないので、それを追求し続けるのは自分の首をしめるようなことであり、常に自分との闘いだそうです。でも、だからこそ村田さんの作品の中にいる人形はその中で本当に生きているかのように感じられます。

村田朋泰

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村田さんの話す言葉やまなざしからは穏やかながらも胸に秘めている強く熱い想いを感じました。
ここからはインタビューの内容を通じて村田さんや作品についてより詳しくご紹介していきます。

人形を使ったアニメーションは、一人映画制作のようなもの

3年間の浪人期間を経て芸大に入学したそうですが、村田さんが人形アニメーション作家になるに至るまでのエピソードを教えてください。

村田さん(以下、村田):小学生の頃「少年ジャンプ」が好きで、絵を描いてお話を作る漫画のお仕事に憧れがあったんですけど、中学高校から映画や音楽にも興味がでてきて。
映画は今でも一日一本観ているくらい好きなんですけど、僕の性格上大勢で何かを作るのが苦手なので、浪人期間に培った力を大学在学中に漫画でも映画でもない別の方法で、ぶつけたいという気持ちがありました。
当時は1990年代後半で、MacやWindowsを使って個人で映像制作ができるようになってきた時代だったので、初めはなんとなくの気持ちでアニメーションを選んだんです。

もともとアニメーションに興味があったわけではないんですね。

村田:そうなんです。人形を使ったアニメーションは一人映画制作というか…二次元のアニメと映画の要素を程よく合わせられる表現方法だと思って一回作ってみると、また作りたいなぁと思ったんです。それが今まで続いている感じです。

村田朋泰

ほんとに大事なことは些細なところにある

村田さんはアニメーション制作をはじめて15年ということですが、どんな作品を作りたいという想いで日々制作をしていますか?

村田:観ている人の自分のこれまでの記憶と結びついたり、自分と対話をしていると感じたりする作品を作りたいという思いがあります。ほんとに大事なことは些細なところにある、というか。ちょっとしたものや心の変化を拾っていく作品にしたいです。

村田さんのアニメーションには一貫してセリフが無いことが印象的でした。

村田:今の時代、情報の多さに押し付けられているような印象や違和感を感じるんです。たとえばテレビのテロップの言葉とか…。自分が作品を作るうえで、観る側に考える余剰を与えるものであることに重要性を感じていて、意味を全部理解できないけど映像としての美しさや何かを体験したような感覚を人形アニメーションをとおして作りたいなぁと思っています。

セリフが無いからこそこだわっているポイントは何かありますか?

村田:仕草や手の動きにはこだわっています。僕は文楽に影響を受けていることもあり、物語がジャンプせずにやり取りが続き、その間の些細な仕草やちょっとした動きで何か表現できないか、といつも考えています。
アニメーションって動きが多いし、動くものがアニメーションという定義もあると思いますが、そういうものに対するアンチテーゼというか。静寂を見つめるということが学生の時に自分なりに見出してきたスタイルですね。

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日本の風土や生きているうえで起きたことを受け継いでいくための“記憶装置”としてアニメーションを作る

『夢の記憶装置』はこれまでの作品や、最新作を一挙に上映する特集なんですよね。

村田:そうなんです。僕は学生のときから生と死の間を行き来する作品をテーマにアニメーションを作っています。生きていくうえでの不安や喪失感など、自分の中でもやもやしていて解決しないことは誰かに話したところで消えていくわけでは無い。そのもやっとしたものをもやっとしたままアニメーションにすることで、誰かが劇的ではないけれど少しでも前向きになれたら良いなぁと思っています。
たとえば「朱の路」は、花に心をとめない人が夕暮れ時に夢からさめると花の美しさに気付くというストーリーなのですが、この花を綺麗だと思えた心情のようなものを作っていきたいんです。

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<生と死にまつわる記憶の旅>シリーズは東日本大震災がきっかけで作り始めたシリーズということですが、村田さんご自身が震災前と後で変わったこと、逆に変わらなかったことってどんなことなんでしょう?

村田:生と死をテーマに静かなアニメーション作ることは変わっていませんが、震災の前と後で、自分がアニメーションを作ることの意義はやはり変わりました。
東日本大震災によって多くの方が亡くなった時、自分はただ傍観するしかできなかったけど自分なりに何かをやるしかないという気持ちになり、天災だけでなく地域のお祭りなどの日本の風土や生きているうえで起きたことを受け継いでいくために“記憶装置”としてアニメーションが機能しないか、と考えるようになりました。それまでは自分や住んでいる地域が題材になっていましたが、もっと社会とか天変地異についての物語を作っていきたいなぁ、と。

このシリーズを制作するうえで大変だったことはありますか?

村田:やはり、テーマが重いことでしょうか。例えば「松が枝を結び」には津波が襲ってくるシーンがあるんですけど、被災者の想いをくむことに特化した作品を作ると一過性の作品になってしまい、震災が起きたことを語り継いでいくのは難しいかなと思いました。
僕は天災もその地で生きているっていうことも等価だと思っていて、作中の女の子同士のぶつかり合いもプレートのぶつかり合いも、同じものとして同一線上に描けないか、というところにいきつくまでとても葛藤しました。
この作品に対し賛否両論あるのは当然だと思っていて、そういう余剰がある作品として解釈していただければと思います。

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何かを想像する力は生きる豊かさである

『夢の記憶装置』は2018年3月17日以降全国で順次上映ということで、どういう人にどういう風に楽しんでほしいですか?

村田:子どもでもお年寄りでも、幅広い層に見ていただきたいです。感じることに歳は関係ないと思うんです。何かを想像するっていう力が生きる豊かさだと思うので、何かしら感じ取ってもらえたら嬉しいですね。
あとは意味とかに執着せずに、フランクに見てもらえるといいなぁって思います。意味はあとからじわじわ分かってくるかもしれないし、よく分からないかもしれないし、それでもかまわないんです。体調や季節など観る時の状況によって感じ方って違うと思いますしね。

今後どのような作品を手がけていきたいですか?

村田:<生と死にまつわる記憶の旅>シリーズでこれまで手掛けてきた3作品って、素材を変えてどれもテイストや雰囲気が違うんです。次は縄文編を作っているんですけど、これもまた違うテイストで表現したいなって思っています。
シリーズだけど素材や世界観が違うものが作れるのは、人形アニメーションの面白さだと思うし、素材が色々使われていることのアナログさって触感的なもので魅力的だと思うので色々チャレンジしていきたいです。

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最後にこれから鑑賞する方々に一言メッセージをお願いします!
村田朋泰

村田:人形のアニメーションをみる機会があまりないかもしれないけど、僕は世の中に色んな表現があっていいと思っていて、その多様性をもう少し寛大にみてくれる人たちがいるといいなぁと思います。これはやだ!と片付けるのではなく、こういう人がいるんだな、こういうものがあるんだな、というポジティブで新鮮な気持ちでみてもらえると表現の世界で生きている人たちにとって励みになります。

人形を使った表現って表現の幅が限られていて、作品にアイデアや素材とか手間がこめられているんです。本物みたいにリアルじゃないけど親近感を感じるところがたくさんあると思うので、寛大に受け入れて観てほしいなぁって思います。

村田さん、素敵なお話をありがとうございました!

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私は今回のインタビューのため事前に何度か『夢の記憶装置』を拝見したのですが、観るたびに気付くことや感じることが違い、その違いとともに作品を楽しむことができました。
ぜひ劇場にて、みなさんにもそれぞれのまなざしで楽しんでいただきたいです。

村田朋泰

また、3月1日(土)~4月1日(日)の期間中、恵比寿にあるNADiff Window GalleryとNADiff a/p/a/r/t店内にて村田さんの作品が展示されているので、こちらも併せてチェックしてみてくださいね。詳しくはこちらをご覧ください!

    映像作家:村田 朋泰(むらた ともやす)
    1974年東京出身。東京芸術大学修士課程美術研究科デザイン専攻伝達造形修了後、コマ撮りアニメーション制作会社(有)TMCを設立。言葉やセリフを排し、仕草や佇まいによる演出で心情を表現し、光の陰影や雨風の移ろう風景を巧みに織り込み「不在」「喪失」「記憶」「死生観」を題材とした作品を通して日本人のアイデンティティを探る制作をしている。
    代表作として「睡蓮の人(2000)」「朱の路(2002)」Mr.Children「HERO」のMVなど。現在、Eテレ「プチプチ・アニメ」にて『森のレシオ』を放送中他、ランダル・ジャレル原作の『陸にあがった人魚のはなし』を制作中。

    3月17日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次公開
    「村田朋泰特集・夢の記憶装置」

    監督:村田朋泰
    脚本:村田朋泰
    音楽:田戸達英、坂巻史和
    配給:ノーム, TMC
    URL:https://www.tomoyasu.net/special2018

    <作品情報>
    本特集上映では、 “記憶”や”祈り”をテーマに、”生と死のあいだの世界”を描いた最新作『松が枝を結び』を初公開。さらにGalileo Galilei「サークルゲーム」のMVに使われた『木ノ花ノ咲クヤ森』、実在した床屋から着想を得て、古き良き昭和の世界を背景に一家に起こる不思議な出来事を描いた『家族デッキ』、娘を亡くした傷心のピアニストが体験する夢の旅を描いた『朱の路』など、15年にわたる創作活動の中から厳選した名作を一挙上映!
    “夢”の世界を用いて、 “記憶装置”として映像をつくり続ける村田朋泰の世界へようこそ!