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こんにちは、シオリです。
#mediacruise というプロジェクトで九州の佐賀県を旅してきた私たち。前回、森さんがレポートした「bowl」さんの記事からは、器の街・有田の旅をお届けしています。

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#mediacruise」とは?
地域とメディアを繋ぐ新しい取材のかたちを実現したい!という想いのもと、cocorone・灯台もと暮らし・箱庭・さんち・dripの5つのメディアが合同で地域の取材に行くという取り組みです。まだ眠っている地域のユニークな魅力と、私たちメディア、そして読者のみなさんをつなぐ新しいかたちの実現を目指して、クラウドファンディングを実施しました。(現在は終了)
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有田は、言わずと知れた陶磁器の産地。箱庭読者には、器が好き!という方も多いのではないでしょうか。私も器が大好きですが、なかなか有田には足を運ぶ機会がなく今回が初めて。素敵な器がここでたくさん生まれているんだ!と、わくわくしながら旅をスタートしました。

歴史ある有田で、“器作り”を感じる旅。

今の時代、スマホやPCで検索して好きなものを見つけたら簡単に手に入れることが出来ます。でもそんな今だからこそ、モノが生み出される場所に実際に足を運ぶということが、より魅力的に感じるのではないでしょうか。

(有田焼の始まりの地と呼ばれる泉山磁石場にて。)

(有田焼の始まりの地と呼ばれる泉山磁石場にて。)


どんな器も、作り手の想いや、職人の技術によって生まれています。器が作られている街に訪れることは、ひとつひとつ作られているんだということを改めて実感できるのです。

私たちは今回特別に器が作られている現場を見学させていただきました。普段、観光で訪れたときなどはなかなか見られないのですが、この記事を読んでいただくことによって、私たちが感じてきたことを、少しでもお裾分け出来たら嬉しく思います。

器作りの現場、藤巻製陶さんへ。

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私たちがお伺いしたのが、有田町外尾山地区にある藤巻製陶さん。1775年より約240年の歴史を持つ窯元です。

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入った瞬間、さっそく沢山の器が並んでいる光景に感動!

有田では、工程ごとに分業体制がとられており、生地の成形だけ、絵付けだけ、というような会社もたくさんあります。その中で、藤巻製陶は一貫生産を行っている窯元です。

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こちらは、10代目となる社長・藤本浩輔さん。工場の中を案内していただきながら、いろいろとお話を聞かせてくださいました。

陶土屋さんから陶土が運ばれてきたところから、藤巻製陶での器づくりはスタート。生地を成形する工程は、回転運動で作れる丸い形の器の設備と、それ以外の形の器を作る圧力成形の設備に分かれてます。

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こちらは、丸い形の器を形作る作業。職人さんにかかれば、粘土の分量は計量することなくサッと手の感覚でわかります。ヘラで伸ばすのも長年の感覚なんだとか。

このようにベテランの職人技があってこその器づくり。昔よりもクオリティの高いものが求められる今、なかなか若い経験のない職人さんが練習として行う作業がなくなってしまったんだとか。そういった現状もあり、機械の導入も進んできているそうです。

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この素敵な後ろ姿は、9代目です。

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作業場の一階から、二階へ上がらせていただくと、沢山の型が保管されていました。その中には、“CHOPSTICK REST”と書かれたものも。デンマークからの、中国向け商品のオーダーだったそう。世界からも有田の技術は注目されているんです。

職人の技術に新しいテクノロジーが加わることで広がった可能性。

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こんな面白い形の器も発見!3Dプリンターを活用して、型を作るための原型をデータでつくることで実現した形なのだそう。アナログな世界のイメージが強い器の世界ですが、最新技術も取り入れられているんですね。

「今の有田は、もともとの職人の技術と、新しいテクノロジーもあって、かつてなくいろんなことがやれる」とおっしゃる藤本さん。職人の力に支えながらも、新しいテクノロジーの導入も加わって、有田焼はどんどん進化を遂げていました。

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いろいろとお話を伺っていると、見たことある器を発見。1616 arita japanのスクエアボウルでした。2011年に誕生したブランドですが、日本の伝統的な有田の技術とオランダのデザイナーとコラボレーションして生まれた、これまでにないデザインで話題となったシリーズです。

実は、このシリーズを実際に愛用しており、自分の結婚式で引き出物にもした思い出のある私。せっかくのこの機会!と思い、1616 arita japanが生まれた時のお話を伺ってみました。

産地として下り坂だった時期の、新たな挑戦。

1616 arita japanは、今から6年ほど前、2011年に東京・丸の内にあるパレスホテルが新しくできる際、テナントとして有田焼の商社・百田陶園にお声がかかったところからスタートしました。当時、前年にはリーマンショックがあったこともあり、有田は産地として下り坂の状況。とにかくチャレンジしなくてはという想いで、店舗設計だけではなく、モノを作るところから出店に取り組むことを決めたのだとか。

そのプロジェクトに、当時30代だった藤本さんは、40代、50代の先輩方とともに参加。先輩から「振り落とされずについてこい」と言われたそうですが、実際オランダ人デザイナーとのプロジェクトは一筋縄ではいかないことも多かったそう。

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例えば、焼き物は火を入れる時に変形する性質を持ちますが、デザイナーからのオーダーは“フラットに焼いて欲しい”というもの。最初は生産性や品質を考慮し、デザイナーからの図面を、作りやすいようにちょっとアレンジして作ったそうですが、そうするとまたデザイナーから指示が入る、という状況でした。

そんな時、藤本さんたちは屈することなく新たな挑戦に立ち向かいます。

藤本さん「自分たちの感性でやってきて今の有田の状況がある、問題点があったということだから、今まで通りにやっていてはダメだ、今は技術屋に徹しよう。そして、やるだけやってダメなところはダメだと言おう、と決めたんです。まず、どこが一番譲れないのか?デザインのなかで優先順位を聞くんです。じゃあ、1番目を優先すると3番目ができなくなるから、そこをどうするか?というように進めていくようになりました。」

長い歴史のある有田だからこそ、培ってきたやり方を変えるのは簡単なことではないと容易に想像できます。その壁を思い切って越えた結果、新しいこれまでにないものが生まれたのです。

「最近は、オーダーを受けるとき、お医者さんの問診のようです」と藤本さんはおっしゃいます。そこまで細かに作られているからこそ、私たちの心を掴む素敵な器が生まれているんですね!

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ちなみに、1616 arita japanのTYスクエアボウルなどは2色展開で、ホワイトとグレーがあります。グレーの方は熱に強く、オーブンでも使用可能という便利で嬉しい器ですが、この素材は偶然の産物だったそうなんです!

店舗の内装にタイルを貼る予定で、そのための土を作ったところ、とても熱に強いものが出来上がり、これは器に使わなければもったいないということでグレーのシリーズが生まれたのだとか。

こうして、素敵な商品が生まれた時のお話を伺っていると、器ってすごいなぁと思うとともに、もっともっと素敵な器に出会いたくなりました。

新たなことにも挑戦している、器の街・有田。
これから、まだまだ見たことのない新しいものがここから生まれるのだろうと、ひしひしと感じさせてくれました。みなさんも、有田に器を感じる旅へ訪れてみてはかがでしょうか?きっと、素晴らしい器の物語に出会えるはずです。

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