イサム・ノグチと長谷川三郎

こんにちは。箱庭キュレーターのKIMIです。
今回は、横浜美術館で1月12日からスタートした「イサム・ノグチと長谷川三郎―変わるものと変わらざるもの」をご紹介したいと思います。

イサム・ノグチと長谷川三郎

日米の血を受け継ぎ、世界的視野から芸術を再び人々の生活の中に根付かせようとした彫刻家イサム・ノグチ氏(1904-1988)と、画家として生前日本の抽象美術をリードした長谷川三郎氏(1906-1957)。
二人は、1950年5月、ノグチ氏が19年ぶりに日本を訪れた際に運命的に出会い、芸術家としての互いの関心事とビジョンが驚くほどよく似ていることを知り意気投合。日本美の本質を見極めるべく、京都、大阪、奈良、伊勢を旅しました。

本展は、この二人の芸術家の交友に焦点を当て、彼らが何を見、何を考え、何を目指したのかを、二人がともに歩んだ1950年代を中心に、ノグチ氏の作品約50点、長谷川氏の作品約70点を通して明らかにしようとするものです。

ニューヨークのイサム・ノグチ財団・庭園美術館と横浜美術館の共同企画!

今回の展覧会は、横浜美術館とニューヨークのイサム・ノグチ財団・庭園美術館による共同企画展であり、横浜での開催後はニューヨークのノグチ美術館とサンフランシスコのアジア美術館に巡回するとのこと。二人の代表作をはじめ、横浜会場では日本初公開作品や横浜会場限定作品も展示されています。

イサム・ノグチと長谷川三郎(イサム・ノグチ「庭の要素」1958年 個人蔵 ©The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum, New York/ARS-JASPAR)

横浜美術館に入ってすぐのグランドギャラリーには、イサム・ノグチ氏の彫刻が贅沢に展示されていて、とても目をひく空間がお出迎えしてくれます。この作品は、日本で制作され、アメリカ発表された後、長らく門外不出だったものなんだそう。

イサム・ノグチと長谷川三郎(イサム・ノグチ「雪舟」1958年 ワズワース・アテネウム美術館蔵 ©The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum, New York/ARS-JASPAR)

6つの章で構成されている、こちらの展覧会。ノグチ氏の「雪舟(1958年)」という作品からスタートです。長谷川氏の戦前期の抽象絵画や彫刻、写真を集めた第1章から始まり、第2章ではノグチ氏と出会って以降始めた墨やポスターカラーを使った木版、および拓刷りを応用した1953年までの作品が並びます。

続く第3章は、二人の1950年代の特徴的な作品を集めて、作品に反映された2人の対話がどのようなものかをしのぶ展示。そして、19年ぶりに来日したノグチ氏が1950年〜1954年にかけて日本で手がけた作品による第4章、長谷川の1954年の渡米以降の作品による第5章を経て、最後の第6章ではノグチ氏が東洋や日本の文化からヒントを得て作った1954年以降の作品がまとめられています。

会場を順に進んで行くと、芸術の重要な歴史を旅している気分になり、2人の交友関係の素晴らしさも伝わってきました。

イサム・ノグチと長谷川三郎(長谷川三郎「蝶の軌跡」1937年 学校法人甲南学園 長谷川三郎記念ギャラリー蔵)

イサム・ノグチと長谷川三郎(長谷川三郎「都制」1937年学校法人甲南学園 長谷川三郎記念ギャラリー蔵)

まず目を奪われたのは、第1章での長谷川氏の抽象絵画や写真のコラージュ作品たち。

イサム・ノグチと長谷川三郎

イサム・ノグチと長谷川三郎

物に絵の具をつけておし付けたり、スナップショットがあったりと、実験的な作品が多く、とても刺激的で細部まで見たいと思わせる作品ばかりでした。

イサム・ノグチと長谷川三郎(長谷川三郎「桂」1951年 国立国際美術館蔵)

こちらは、長谷川氏がノグチ氏と桂離宮を訪問した1年後に制作された作品。なんと、かまぼこ板に丸や棒などの形を彫って、そこにポスターカラーを塗って、小さい紙に押し、それらを屏風に配置して仕立てたのだそう。

イサム・ノグチと長谷川三郎

長谷川氏は、ノグチ氏との交友によって、抽象芸術と日本の伝統美の関係に対する長年の迷いが払拭され、まもなく油彩画の制作をやめ、拓本や水墨による表現に移行したのだとか。

横浜美術館所蔵の6作品も展示!

イサム・ノグチと長谷川三郎

会場をつなぐグランドギャラリーに面したホワイエには、横浜美術館で所蔵しているノグチ氏の作品がズラリと並んでいました。

イサム・ノグチと長谷川三郎(イサム・ノグチ「下方へ引く力」1970年 横浜美術館蔵 ©The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum, New York/ARS-JASPAR)

どの作品も横浜美術館の建築とマッチしていて、ソファーに座ってゆっくり眺めるのもオススメです。

イサム・ノグチと長谷川三郎(イサム・ノグチ「書」1957年 イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)蔵
©The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum, New York/ARS-JASPAR)

続いて、第3章で展示されていたノグチ氏のこちらの作品。筆の動きを形取った2つのオブジェなのですが、なんだか漢字で「日本」と書かれているように見えて、このつるんとしたフォルムが親しみを感じました。

イサム・ノグチと長谷川三郎

第4章には、ノグチ氏が日本で手がけた作品が並んでおり、この真ん中の陶器の作品「顔皿」(1952年)はノグチ氏のセルフポートレートとも言われているそう。目の左右のくぼみが印象的で、実物をじっくり観て頂きたい作品の一つです。

平和記念公園慰霊碑の幻のデザイン模型!

イサム・ノグチと長谷川三郎(イサム・ノグチ「広島の死者のためのメモリアル」石膏モデル1951-52年 神奈川県立近代美術館蔵 ©The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum, New York/ARS-JASPAR)

イサム・ノグチと長谷川三郎(イサム・ノグチ「広島の死者のためのメモリアル」1/5模型1982年 広島市現代美術館蔵 ©The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum, New York/ARS-JASPAR)

そして、やはり存在感が強かったのは、この二つの模型。
建築家の丹下健三氏がコンペでデザインすることになった広島の平和記念公園の原爆慰霊施設案、ノグチ氏が丹下氏とタッグを組んで取り組む予定だったもの。このデザインは却下され、実現していません。もし実際にできていたらと想像するだけでドキドキさせられます。

現在も愛され続けるモダンデザイン!

イサム・ノグチと長谷川三郎(イサム・ノグチ「あかり(BB1-30A)」1952年 イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)蔵 ©The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum, New York/ARS-JASPAR)

イサム・ノグチと長谷川三郎(イサム・ノグチ「あかり(E)」1954年 イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)蔵 ©The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum, New York/ARS-JASPAR)

最後の章は、岐阜提灯をモダンにデザインし直して作った光の彫刻「あかり」という代表的な作品で締めくくられていました。単なる美術のオブジェではなく、モダンな生活の中で、実際に生活に機能する彫刻として作られたものだそう。今でも生産されていて、人気あるインテリア作品ですよね。

イサム・ノグチと長谷川三郎

長谷川氏はノグチ氏にとって、建築、庭園、書、絵画、考古遺物、茶道、禅、俳句など、日本の古い文化遺産への案内役となり、ノグチ氏が日本の美の本質を理解する上で重要な役割を果たしました。一方、ノグチ氏は対話を通して長谷川氏の制作意欲を奮い立たせ、長谷川氏が墨、拓刷、木版を用いてそれまでにない創作を切り開くきっかけを与えたのだそう。

そんな2人の作品の魅力を通して、日本の美の再発見になる今回の展示。ノグチ氏の友人でもあった建築家の丹下健三氏が設計した横浜美術館での開催というのも魅力の一つ。ぜひじっくりゆっくりと堪能して頂きたいです。

    「イサム・ノグチと長谷川三郎-変わるものと変わらざるもの」

    会期:2019年1月12日~3月24日
    会場:横浜美術館
    住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
    開館時間:10:00~18:00 (3月2日は20:30まで)※入館は閉館の30分前まで
    休館日:木(3月21日は開館)、3月22日
    料金:一般 1500円 / 大学・高校生 900円 / 中学生 600円 / 65歳以上 1400円 / 小学生以下は無料
    URL:https://yokohama.art.museum/special/2018/NoguchiHasegawa/