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    箱庭4周年を記念して、「イラストレーター」「フォトグラファー」「デザイナー」「作家・アーティスト」の4つのジャンル×4人=16人のクリエイターの皆さんに、仕事についてお話を伺うスペシャルインタビュー。
    自分たちの仕事と真剣に向き合い、何かを生み出し続けている16名のクリエイターのお話には、仕事に対する姿勢や意識など参考にしたいヒントがたくさんあります。同じクリエイターとして仕事をしている方やクリエイターを志している方はもちろん、クリエイター職ではない方々にも、じっくりとお読みいただけましたら箱庭一同嬉しく思います。私たちがインタビューを通じて感じた、「私も頑張ろう!」という励みをみなさんも感じてくれることを願っています。

今回のインタビューは、木工作家 iriki(イリキ)のwataさんです。
irikiは、木に自然の造形を描き、糸のこで切り抜いた作品をつくっています。2014年にwataさんご夫婦で立ち上げましたが、糸のこ作業は旦那さんのお父様が担当しているという家族クリエイターです。wataさんは、主にデザインを担当。wataさんが描く自然のなかの不思議なかたちは、とってもやわからくてあったかい、ご本人の雰囲気がそのまま作品に映し出されたようなそんな作品です。
昨年7月に箱庭のオフィスである「東京おかっぱちゃんハウス」で開催された個展で箱庭メンバーが初めて作品を目にし、その世界観に魅了され、今回お話を伺うことになりました。wataさんは、呼吸をするようにものづくりをする根っからの作家気質。仕事というよりもライフワークとしてものづくりをする姿勢は、ものづくりに関わる人もそうでない人にも、いい刺激をもらえるのではないでしょうか。

<irikiの作品>

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irikiのネームプレート。
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irikiのピアス。台紙デザインも鳥や山など自然モチーフ。
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irikiのモビール。

木工作家iriki wataさんに聞く「クリエイター」の仕事とは。

Q. 「木工作家」になろうと思った理由を教えてください。
もともとものづくりが好きで、大学は美術大学だったんですけど、そこでは木版を専攻していました。そのあとに、大学の研究室で助手として4年間働いていたんですけど、その間もずっと版画をしていたりだとか、絵を描いたりだとかは続けていたんです。そうやってものづくりを続けていく中で、一つの大きなきっかけになったのはアトリエを長野に構えたことですね。大学で知り合った夫の実家が長野にあって、その実家に大きな「蔵」があったんです。物置として使われていた場所だったんだけど、ここをリノベーションしてものづくりをする場所として使いたいねって話をしていて、当時はまだ結婚していなかったんですが、ご両親がとても理解のある人で二人で使っていいよって言ってくれたんです。そして、そのアトリエとなった蔵の横にあったのが、お義父さんの工房。お義父さんは、趣味で糸のこを20年くらいやっている人で、工房までつくっちゃったくらい糸のこを愛してる人なんですよ!それでみんなで、私の描いた絵とかを木に写して、糸のこで切り抜いたりして遊んでいたんですよね。そうやってできたものが、とっても面白いな~ってなって、木を切り抜く作品を私と夫とお義父さんの3人でつくるようになりました。ただ、これを生業として考えたわけじゃなくて、ライフワークとして、ものづくりを続けていきたいという感覚だったので、木工作家になる!って感じではなかったんです。irikiという屋号を考えて、作品をつくろう!ってなったのは自分たちの結婚式の引き出物が最初です。

Q. 「木工作家」になるために、どのような行動や心がけをしましたか?
作家になる!と決めたわけではなかったので、なにか心がけたというわけではないんですが、irikiは3人でつくりだしているので、3人の役割分担がちゃんとできている気がします。役割としては、お義父さんが職人さんで技術担当、私が主にデザイン担当なんですが、夫が企画というかアイディア担当なんですよね。作家として活動するには、作るだけでなく「人に作品を見せる方法」も重要になってきますよね。私は客観的に自分の作品をプロデュースするのが苦手なのですが、そこを夫がサポートしてくれているんです。「結婚式の引き出物を作ろう!」とアイディアを出したのも、展示会をするときのディスプレイとか、作品を飾る木枠のケースを作ってくれるのも彼です。こういった見せ方のアイディアもあって、irikiの作品がちゃんとみんなに届くのかなと思っています。
私は、自然をモチーフにしたデザインをしているので、家で植物を育てたり、長野でも少しだけ畑をやったりと、そういった自然と触れ合いながらインプットというか、インスピレーションをもらっているというのも心がけていることですね。

Q. 現在はどのような仕事(案件)を中心に活動していますか?
最近はグループ展をやったりしていますが、irikiの活動は「仕事」というよりは好きなものを作るライフワークとして始めたので、勢力的に活動をしてきたという感じではなかったかもしれません。私も美術講師のお仕事をしているので、irikiを生業として考えていなかったから、まわりからみたらゆったりしてみえるかもしれません。そんな中で、背中を押してくれるのが友達ですね。一緒に作品もつくっているテキスタイル作家のuduが高校の同級生なんですけど、ものづくりをしているならちゃんと何かに出展したりした方がいいよって声をかけてくれたり、一緒にコラボして作品も作ろうよって言ってくれたのも彼女です。昨年おかっぱちゃんハウスでやった個展も、私からしたらかなり勇気を出してやったんです。「東京おかっぱちゃんハウス」主宰でイラストレーターのBoojilさんが、おかっぱちゃんハウスもリニューアルするから展示とかどうかなって声をかけてくれたんですけど、それまではグループ展とかもあまりやっていなくて、個展というか、作品を一度まとめて展示したいなと思ってはいたんですが、不安も大きくて。しかもその時は妊娠もしていたので、躊躇していたんですけど、生まれてからしばらくはできないかもなと思ってやることにしました。その時も背中を押してくれたのは、友人です。本当にありがたいですよね。やってみたら、楽しくて、想像以上に来客もあって、こうやって繋がることもできて、良かったなって思います。

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東京おかっぱちゃんハウスでの展示。

Q. 仕事で楽しいと感じる時、辛いと感じる時はそれぞれどんな時ですか?
私が描いた絵をお義父さんが糸のこで切ってくれて、その納品物を見た時がやっぱり一番楽しいですね。私は色を塗ったり、やすりがけをしたりもしますが、基本的には描いているだけなので、紙に描いた平面の絵が、立体になった時には感動があるんですよね。版画をつくっていた時もそうなんですけど、版を作ってから刷ってとか、今も切り抜くための図案をつくって下絵を貼ってお義父さんに送って…とか、段階を経てつくっていくものづくりが結構好きなんですよね。
辛いのは、やすりがけをしていて作品の一部分が欠けちゃったとき…。作業を分担してやっている分、最終段階で作品をボツにしてしまうのが申し訳なくて。「あっお義父さんごめんなさい!欠けちゃった…。」ってなります(苦笑)。
あとは、スケジュール管理が難しいですよね。展示までにどういうスケジュールで進めていけばいいかとか、そういうのが私は苦手で…。好きな仕事から手をつけてしまったり、どうしても熱中してしまうと一つの作業に没頭してしまったりして。そういった私が苦手とする部分を管理してくれるのが夫で、だからやっていけてるという感じですね。いろんな人に支えられてます(笑)。

Q. オリジナリティを確立するために、心がけてきたことなど教えてください。
美術大学時代から自然モチーフを描き続けていて、それを作品にしています。ちゃんとモチーフとなる素材の実物を観察して、スケッチをして、そこから発展させていくことを心がけていますね。だから、元のアイディアソースは自然にあるものなんです。わざと奇抜なことをやっている意識はなくて、出来上がったものが面白かったとか、自分で思っても見ない面白さがあったりとかした時に、そこを楽しんだり、またそこからアイディアを広げていったりします。3人でやっているから、そういう広がりも一人よりも大きいかな。今の木工作品も描いた絵を切ってもらったら面白かったというところから始まっているので。

Q. 今後、挑戦してみたい事ややってみたい事を教えてください。
irikiのつくる作品は、基本的に「あったらいいな」がベースにあるんですよね。昨年子供が生まれたので、いまはおもちゃに興味があって、おもちゃを作っていきたいなと思っています。でも、木という素材にこだわらず、色々なものをつくっていきたいという意識もあって、ファブリックとか陶器とかもやってみたいですね。前回、展示会で布に絵を描いたのですがあれをもっと発展させたいかな。植物柄の布とかも作りたいと思っています。

Q. 最後に、これから「木工作家」を目指す方にメッセージをいただけますか。
私たちも作家になってやっていますということではないのですが、だからこそ言えるのは「気張らずに、作ることを続けていくこと」かな。本当にirikiとしてものづくりを続けていきたいから、もちろんこれが生業となればいいけど、続けていけなかったら意味がないので少し歩みはゆったりだけど無理なく続けて行けるペースでやっています。
あとは、ものづくりのお仕事に就いていなくても、日常に潜んでいて挑戦できるクリエイティブってたくさんあると思うんです。そういうものを見つけていく感覚が大事だと思います。

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    iriki WATA|作家/デザイナー
    絵描き/版画作家/irikiのデザイナー・イラストレーター/ときどき美術の先生
    大学在学中より版画や絵画の制作を行う。2014年よりおもに木を素材とした作品を扱うプロジェクト「iriki」を夫婦でスタートさせる。2015年夏、東京おかっぱちゃんハウスにてiriki初の個展「iriki FLOWER PARK」を開催。2016年は東京おかっぱちゃんハウスでのモビールのワークショップや、「LUCK:04 山」(Earth+Gallery /LUCK)でのグループ展示に参加。長野のアトリエと東京を往復しながら制作をしている。
    Webサイト:http://iriki.net/

    ◆今後の情報
    5/22(土) 「春の南沢フェスティバル くらしのマルシェ」自由学園(http://www.jiyu.ac.jp/event/fes2016spring/)にてブース出店。
    5/28(土)〜6/12(土) 「森 森 森」アートギャラリー101(http://www.hitomaruichi.com) でのグループ展示に参加。

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