CREATOR クリエイティブなヒト
【箱庭4周年スペシャルインタビュー】イラストレーター くぼあやこさん
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箱庭4周年を記念して、「イラストレーター」「フォトグラファー」「デザイナー」「作家・アーティスト」の4つのジャンル×4人=16人のクリエイターの皆さんに、仕事についてお話を伺うスペシャルインタビュー。
自分たちの仕事と真剣に向き合い、何かを生み出し続けている16名のクリエイターのお話には、仕事に対する姿勢や意識など参考にしたいヒントがたくさんあります。同じクリエイターとして仕事をしている方やクリエイターを志している方はもちろん、クリエイター職ではない方々にも、じっくりとお読みいただけましたら箱庭一同嬉しく思います。私たちがインタビューを通じて感じた、「私も頑張ろう!」という励みをみなさんも感じてくれることを願っています。
今回のインタビューは、イラストレーターのくぼあやこさんです。
くぼさんは現在、広告や雑誌、絵本などで活躍しているイラストレーターさん。クレヨンをアイロンで熔かす独特の技法を用いており、版画のようなほっこりぬくもりあるイラストを描いていらっしゃいます。
箱庭は、以前シルクスクリーンのイベントでイラストをご提供いただいたのですが、ニコニコあたたかなお人柄が、ほっこりした絵柄に表れていました。
そんなくぼさん、実はもとよりイラストレーターになろうとは思っておらず、大学を卒業したのち一般企業で事務職をしていた経験が。会社を辞め、美術学校に入り現在の職に就いた経緯とは?
毎日目の前の仕事に追われながらも、夢や表現を追求したい気持ちを持ち続けている読者の方に寄り添うようなお話しを聞けるはず。そう思い、取材をお願いさせていただきました。「夢の叶え方」について、聞いてみましょう。
<くぼさんのお仕事>
「DiscoverJapan vol.44」特集 草花生活(表紙・特集ページイラスト)
大宮の盆栽美術館に、実際に取材に行って描いた盆栽のイラスト。
「築地食べる通信」(表紙イラスト)
今年豊洲に移転する築地のいいところを詰め込んだ、タブロイド型情報誌。毎回テーマに沿った食材など。
「人間は料理をする」マイケル・ポーラン 著(装丁イラスト)
鈴木成一デザイン室と最初のお仕事となった、装丁のイラスト。
イラストレーター くぼあやこさんに聞く「イラストレーター」の仕事とは。
Q. 「イラストレーター」になろうと思った理由を教えてください。
絵やデザインなども表現は好きでしたが、実は今まで一度も「イラストレーターになりたい」と思ったことはないんですよね。というより一握りの人がなるもので、私にはなれるわけがないと思っていました。実家が呉服屋だったので、女子美で服飾を専攻しました。でも服よりも、テキスタイルやデザイン画の授業の方が楽しかったんです。卒業後、一般企業に就職し事務をしたんですけど、「この仕事を3年続けるんだったら、3年間好きなことを勉強したい!」という気持ちがわいてきちゃって。会社を辞めて、阿佐ヶ谷美術学校という専門学校に入りました。エディトリアルデザインを学んで、在学中にボローニャ国際絵本原画展に入選し、せっかくだからとその見本市に行ったんです。世界から1500くらいの出版社などが集まっていて、そこでフランスの出版社から声をかけていただいて。その時初めて、「イラストが仕事になるんだな!」って気付いたんですよね。25歳くらいの頃の話です。そこがスタート地点で、結果的にイラストを仕事にできた、という感じかもしれません。
Q. 「イラストレーター」になるために、どのような行動や心がけをしましたか?
イラストレーターになるのって、難しいことではないんです。だって、資格は必要ないですし、極端な話「私はイラストレーターです」って名乗ればOKなんですもん(笑)。でもそれを仕事にするためには、畑を耕して種をまくように、準備が大切だと思って。まず、ボローニャの見本市に行く前に、名刺代わりになるような自分のHPを作りました。慣れないなか自分で作ったので簡単なサイトでしたが、作品を見てもらえる場所を作らないといけないなと。あとは、そこに載せる作品を作り溜めましたね。そして、HPに掲載するだけではなくて、コンペに出す。賞を獲れば知名度が上がりますし、プロフィールに書く実績ができます。また、イラストの先生からお仕事を紹介していただいたり、売り込みとして自分の作品ファイルを送ったり…今振り返ると、「よく乗り切れたな」と感心するくらいノリノリに動いていたんですけど(笑)、「チャンスは逃さず!行ける時に行ける場所に行こう!」って、すごく前向きだったんですよね。
Q. 現在はどのような仕事(案件)を中心に活動していますか?
最近は、雑誌の挿絵や広告のほかに、日本の四季を紹介する『えほん七十二候 はるなつあきふゆ めぐるぐる』(講談社)という絵本のイラストを担当しました。季節の移ろいを感じられる絵本で、動物たちが登場してかわいいんですよ。あとは『築地 食べる通信』(一般社団法人 日本食べる通信リーグ)の表紙も、描かせていただいていますね。1つの食材をテーマにした食材付きの情報誌です。絵本は、知人のデザイナーさんにご紹介いただいたお仕事です。ありがたいことに、どこかの媒体で描いたものを褒めていただいて次につながるなど、仕事が仕事を呼んできてくれているんです。駆け出しの頃、コンペに出したり作品を作り溜めたりして蒔いた種が、実っている感じです。
Q. 仕事で楽しいと感じる時、辛いと感じる時はそれぞれどんな時ですか?
楽しいと感じるのは、作品が出来上がって、反響をいただけた時です。ただ、ご感想をいただいても、あまり信じすぎず、浸りすぎずに。ナルシストにはなりたくないので(笑)。それと良いものが描けたな!と手応えを感じた時が何より嬉しいです。辛い経験は、イラストレーターになりたての頃が多かったかな。今はクライアントの意向を汲みつつ私のテイストも残しつつ、という折衷案を出したりできるけど、前は意向を汲むあまり「私が描かなくてもよくない?」っていう出来になっちゃって悩んだり、ずさんな対応をされたり…。引きずることがある時は、好きな作家の画集を眺めて、展示に足を運んで、スーパー銭湯に行ってます。
Q. オリジナリティを確立するために、心がけてきたことなど教えてください。
オリジナリティってどう見出せばいいのか、難しいですよね。自分が「素敵だな」「美しいな」と感じるものを集めていくと、なんだか「自分らしさ」って感じられると思うんですよね。だから、まずは「お気に入りを集めに行く」楽しい作業をするといいんじゃないですかね。技術的な面では、まだ下手な段階は、とにかく試作を繰り返す、描くしかないと思うんです。私はボール紙に描いたり色々やっているうちに、線と面を組み合わせる方法を見つけました。あと、線画があまり得意ではなかったのですが、ある時「いいね」と言っていただけて。オリジナリティを意識しすぎてしまうと型にはまってしまうので、どんどんチャレンジしていくことも大切だと思います。
Q. 今後、挑戦してみたい事ややってみたい事を教えてください。
前に『小説現代』で漫画を描いたことがあるんです。初めてだったので難しくて、締め切り直前まで筆が進まなかったんですけど、仕上がってみたらイラストよりも「自分の作品だ〜!」っていう感動が大きかったんですよね。自分の幼少期の思い出を描いた話だったので、余計だったのかもしれません。あの感覚が面白かったので、漫画はこれから挑戦したいと思っています。
Q. 最後に、これから「イラストレーター」を目指す方にメッセージをいただけますか。
「どうやったらイラストを仕事にできるだろう」「本当になれるのかな?」なんて考えているだけではなく、とにかく、手を動かして、行動することが大切だと思います。いろんな人に見せに行ったり、展示を開いたり、コンペに応募したり。先輩イラストレーターが作ってきた道があるので、実現するためのルートはあるんです。怖がらずに、前進してほしいですね。とは言いつつ、私も悩んだり迷ったり立ち止まったりしながら絵を描いているんですけどね。
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くぼあやこ|イラストレーター
山形県出身。女子美卒業後、一般職に就くが諦めきれずに、美術学校に入り直す。在学中、ボローニャ国際絵本原画展入選を期にイラストレーターとして活動。クレヨンをアイロンで熔かしてイラストレーションを制作する独特の技法を用いる。ボローニャ国際絵本原画展入選、日本タイポグラフィ年鑑 グラフィック部門ベストワーク賞、東京TDC賞 入選など受賞歴多数。
WEBサイト:くぼあやこ.com http://kuboayako.com