CREATOR クリエイティブなヒト
【箱庭4周年スペシャルインタビュー】切り絵作家 mimoeさん
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箱庭4周年を記念して、「イラストレーター」「フォトグラファー」「デザイナー」「作家・アーティスト」の4つのジャンル×4人=16人のクリエイターの皆さんに、仕事についてお話を伺うスペシャルインタビュー。
自分たちの仕事と真剣に向き合い、何かを生み出し続けている16名のクリエイターのお話には、仕事に対する姿勢や意識など参考にしたいヒントがたくさんあります。同じクリエイターとして仕事をしている方やクリエイターを志している方はもちろん、クリエイター職ではない方々にも、じっくりとお読みいただけましたら箱庭一同嬉しく思います。私たちがインタビューを通じて感じた、「私も頑張ろう!」という励みをみなさんも感じてくれることを願っています。
今回のインタビューは、切り絵作家・mimoeさんです。
mimoeさんは、まずお呼びするのに「切り絵作家」と一言でお伝え出来ないほど多彩な方。Porter Classic(ポータークラシック)というブランドで創業当時から洋服や雑貨の柄等のアートワークを手掛けられながら、切り絵の作品展示を開催したり、アーティストのCDジャケットで作品を提供されたり、壁面のライブペインティングではその場で手を動かし絵を描いていく様子が印象的。バラエティ豊かな場で、幅広く活躍されています。
切り絵というと、紙を切って作られた絵柄が額に入って飾られるような作品を想像してしまいますが、おせんべい屋さんという面白い場所で初めて出会ったmimoeさんの切り絵作品は、モビールや写真を使った動きのあるものだったんです!空間すべてが展示作品であるような感覚になったのを覚えています。
そこで気になったことがきっかけで昨年は箱庭DIYワークショップに参加して頂き、電動工具を使って木の板に絵を描いて頂きました。躊躇なく手が動きすらすらと絵が生まれてくる様子は圧巻で、いつまでも見ていたい!と思わせるような心地よさを感じるほど。作品を拝見するたびにどんどんその魅力に引き込まれてしまう、そんなクリエイターさんです。
ひとつの方法にとらわれることなく、ご自身の世界をいろんな形で広げた活動をされているmimoeさん。気になる“お仕事”について伺ってきました。クリエイティブなことをされているすべての方に、何かヒントとなることが見つかるのではないでしょうか。
<mimoeさんのお仕事>
左:コトリンゴ「ツバメ・ノヴェレッテ」CDジャケット(切り絵)、右:ビューティフルハミングバードのワンマンライブ告知ビジュアル(水彩)
左:Porter Classicとスターバックスのコラボレーション商品(昨年末クリスマスシーズンに全国のスターバックスコーヒーで販売)
右:ビブレ横浜1階porter Classic壁面へのペイントの様子
写真家 矢野大輔さんと一緒に作った作品。切り絵を実際に土の上に立てて撮影。
切り絵作家・mimoeさんに聞く「クリエイター」の仕事とは。
Q. 「切り絵作家」になろうと思った理由を教えてください。
ちょっと変わってるかもしれないんですけど…。もともと絵を描くことが得意で、幼稚園くらいの小さい頃からずっと“絵の上手い人”と言われて来たくらい、もうそれしか無かったんです。自分は絵を描くんだって、自然に思っていました。なので、まったく迷いなく今まできちゃいました(笑)。
中学受験をしたんですが、そのまま進学した高校が美術系のある学校だったので、そこから美術系の道に入りました。その後は美術系の専門学校に入って卒業したんですけど、自信満々だったのか(笑)、就活せずにいたんです。
そんな時、吉田カバンの吉田克幸さんが父とのつながりで知り合いだったんですが、「俺が独立するときに一緒に仕事しよう」と言って下さったんです。それで、ポータークラシックというブランドの仕事をするようになりました。そこでは、ロゴをつくったり洋服の柄をつくったりしていて、今でもそれは続いています。
21歳でその仕事を初めて、5年後くらい経った頃から自分個人としての仕事の依頼もくるようになり、その活動を始めました。
Q. 「切り絵作家」になるためにどのような行動や心がけをしましたか?
まず、絵を描くことを仕事にするために一番努力したなぁと思うのは、高校時代の専門学校への受験勉強ですね。その1年は思いっきり夢にむかってがんばったときでした。
学校で勉強した後、放課後は予備校に行ってさらに受験勉強という生活で、大変でしたね。
でも、そのおかげで絵の力がついたと思います。受験のためではあったけど、デッサン等の基礎の力がついたので、今思うとこの時期勉強したことが今に繋がっているなぁと感じます。デッサンは自分の好きなように描けないから嫌だと言って挫ける人もいましたけど、自分はそれも楽しかったんです。
切り絵自体は、いつから始めたというのは覚えていないんです。小学校からすでにやっていたのが残っているくらい。ちゃんと作品をつくったのは、専門学校のときですかね。でもそれも、授業で習ったというわけではなく、自然にやってたことなんです。気分転換に紙を切っていたら、それが楽しくて(笑)。
私の作品はすごい細かいことを追及するタイプではないんですが、もともと絵を描く作業で“線”を整理するのが好きで、それが切り絵という手法だった、というだけなんです。切り絵で作品をつくろうと決めているわけではなくて、デザイン的要素が強いですね。このデザインは切り絵で作ったらいいかも?という感じです。
Q. 現在はどのような仕事(案件)を中心に活動していますか?
紙媒体よりも、洋服や、今回のけん玉などのお仕事をすることが多いですね。アパレルとかプロダクト系とか、誰かと一緒に作り上げるような案件が多いかも。自主的に一つの作品をつくるというより、いろんな人と話しあって一緒に作り上げていく、ということが多いですね。
例えば、ミュージシャンのライブのデザインをつくるときは、まずミュージシャンの方にどんなライブをやりたいか?を聞いてイメージを膨らませます。そこから、告知のビジュアルはどんなものがいいか?とか、ライブ当日の会場装飾はどんな雰囲気か?なども一緒に考えてつくっていくんです。
そのやり方は、誰かに教えてもらったという訳ではないんですが、いろんな仕事をやりながら身についていっている感じです。
最近は、レストランやお店の壁に絵を描く仕事も多いですね。チョークであたりをつけて、直接壁に描いていきます。白い壁だと修正しやすいんですが、色のついた壁だと緊張しますね。最初は、大きい壁に描くことも緊張したけど、何回もやっていたら「もっと大きい方がいい!」ってなってきました(笑)。
“営業”ということをしたことがないんです。吉田さんにあったときから、ミュージシャンとか俳優とか出版社の方とか、とにかく“大人”の方にいっぱい会っていました。そのおかげか、いろんな方と構えることなくしゃべれるようになったし、その時に会っていた方と何年後かにお仕事することになったりしています。やった仕事を見て、知り合いの人が声かけてくれたりもします。仕事が仕事を呼んでくれています。
営業はしてないんですが、私はわざわざポートフォリオを持っていかなくても、洋服を着ていればそれを見せられるし、けん玉を出せばそれもすぐに見てもらえます。飲み屋さんで、つけていたスカーフを広げて「こんな事してるんですよ~」って。堅苦しく作品を見せるんじゃなくて、そうやって自然に見せられるのが良いのかもしれないですね。
(この時もご自身が柄を手掛けたアロハシャツ「Porter Classic 2016ss」を着てきてくださったmimoeさん)
Q. 仕事で楽しいと感じる時、辛いと感じる時はそれぞれどんな時ですか?
出来た瞬間とか、クライアントさんやお客さんが喜んでくれた時、ですね!
あとは、自分が手掛けたものを、自分が見ていないところで誰かが使ってくれいることが実感出来たときも、うれしいなぁと思います。
逆に辛いのは、ラフを考えていて全然思い通りにいかないとき…ですかね。考えるときは結構考えますよ。一日中ずっと考えても浮かばないときもあります。あとは、仕事を進めていく中で、この仕事もう無理かも…と思うときがあります。自分の作品がうまくいかなかったり、先方のイメージに届かなくて何回出してもOKが出ないことも。やるからには、向こうの期待をはるかに超えたいじゃないですか。それがスムーズにいかないときは、辛いですね。そういう時は、逆に遊んでみたりして気分転換します。
でも、基本的に仕事は楽しいです。自分のこと褒めながらやってますよ。「なんでこんなにうまいんだろう?」って思いながら!そうすると楽しみながら出来ます。自分がやりたかった仕事が別の方になってしまったりしたときも、「私がやった方が絶対いいのに~!」って思います。落ち込んでいても仕方ないので。
Q. オリジナリティを確立するために、心がけてきたことなど教えてください。
私は、画材を決めているわけではなくて、水彩も線画もやれば、切り絵もやる。仕事をし始めた当初は、いろいろやっていることを良く言わない人もいたんですけど、それをずっとやり続けてきて今があるので、自分のやり方でやってきたことは良かったなと思います。画風にこだわらないで、その時にスタイルに合わせて画材を選んで行くことが、いろいろやりたい自分には合っていたんだと思います。
あと、今お話していて思ったことは、壁画を描ける人は貴重かもしれません。自分の周りにもあまりいないですね。そういう意味では、絵のタッチで自分の特徴をつけるより、出来ることを増やしていくことが良いのかも。あまりたくさんの人がやっていないことが出来るというのは、オリジナリティになるかもしれないですね。自分自身で意識したことはなかったけど(笑)。
Q. 今後、挑戦してみたい事ややってみたい事を教えてください。
切り絵を使って、もっと展開していきたいです。例えば、切り絵と別のものの融合とか。照明さんと組んで、影絵のような使い方をしてみたいですね。それは今までやったことないことだから。光を使えば、絵を歪ませることが出来るんですよね!そういうことをやってみたいです。
切り絵はデザインカッターで作っているんですが、時間かかるときはかかります。
ある程度下書きするけど、色を決めないで切り始めるときは切ってみてから「この紙じゃなかった!」ということもあります。それでまた色を変えて切ってみます。切り絵のときも、心の中で“コマンドZ”押しちゃうときがありますよ(笑)。それが出来たらいいんですけどね。
展示もやりたいと思っています。またアイデアが浮かんだら、半年後くらいにやりたいです。展示の内容は、アイデアが先のときと、展示が決まってから考えるときもありますね。毎回技法を変えて展示をしています。写真家さんと組むこともあったし、モビールを作ったときもありました。切り絵をベースにして何をするか?を考えます。同じことをやるのが得意じゃなくて、変えたくなっちゃうんです。
Q. 最後に、これから「切り絵作家」を目指す方にメッセージをいただけますか。
いろいろ疑ってかかるのがいいと思います。誰かに「君の絵のここが良くない」と言われても、そこで諦めないで一回考えてみたり、みんなが就活で履歴書を書いてるときに「ほんとに自分に必要なことか?」を考えてみたり。あの就活の流れってすごいので、飲み込まれそうになりますよね。でも、いろんな方法があるので、本当に自分に必要なことなのかを考えてみて、必要じゃなければ違う道を選択するという判断も“あり”だということを考えておくと良いと思います。
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mimoe(みもえ)|切り絵作家・イラストレーター
2006年桑沢デザイン研究所卒業後、フリーランスで活動中。
主な仕事は雑誌やwebのイラスト、店舗の壁面ペイントやワークショップなど。
アパレルブランドPorter Classicのアートワーク、グラフィックデザインもてがけている。CINRA.storeにてオリジナルグッズ販売中。代表作はコトリンゴ「ツバメ・ノヴェレッテ」のCDジャケット。
WEBサイト:http://www.mimoe.jp
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