CREATOR クリエイティブなヒト
【箱庭4周年スペシャルインタビュー】デザインチーム minna 角田さん、長谷川さん
左から:minna 角田さん、長谷川さん
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箱庭4周年を記念して、「イラストレーター」「フォトグラファー」「デザイナー」「作家・アーティスト」の4つのジャンル×4人=16人のクリエイターの皆さんに、仕事についてお話を伺うスペシャルインタビュー。
自分たちの仕事と真剣に向き合い、何かを生み出し続けている16名のクリエイターのお話には、仕事に対する姿勢や意識など参考にしたいヒントがたくさんあります。同じクリエイターとして仕事をしている方やクリエイターを志している方はもちろん、クリエイター職ではない方々にも、じっくりとお読みいただけましたら箱庭一同嬉しく思います。私たちがインタビューを通じて感じた、「私も頑張ろう!」という励みをみなさんも感じてくれることを願っています。
今回のインタビューは、デザインチームminna(ミンナ)の角田さん、長谷川さんです。
minnaは、角田さん、長谷川さんを中心とする、みんなのためのデザインチーム。【みんな】のために【みんな】のことを【みんな】でやるをコンセプトに、グラフィックやプロダクトなどのジャンルにとらわれず、領域を越えて幅広くデザインを行っています。グッドデザイン賞、日本パッケージデザイン大賞金賞、その他様々な賞を受賞するなど、いま大活躍のデザインチームです。
話を聞くきっかけとなったのは、以前ご紹介した、竹からうまれた紙ブランド「MEETS TAKEGAMI」。こちらをデザインしていたのが、minnaです。minnaのデザインは、かわいい、カッコイイという見た目の部分だけではなく、プロダクトやグラフィックの奥にある想いを顕在化しています。どうしてそこにデザインが必要で、デザインを通して何を伝えたいかがminnaにはあります。私たちもメディアとして何を届けたいかを考えることが多く、「MEETS TAKEGAMI」取材を通して、minnaの考えに学ぶことが多いと感じました。
今回あらためてminnaのお二人にお仕事についてお聞きしました。きっとデザイナー以外のあらゆる職業の方にも、ヒントとなる考えが沢山あるんじゃないかな。そんな風に思っています。
<minnaのお仕事>
【NEWSED】
「古くなってしまったものを新たな視点でみることで、別の新しいものへ生まれ変わらせる」が、コンセプトのアップサイクルブランド。minnaは、2010年からブランドのデザインディレクターを務めています。
【ROOMBLOOM】
ペンキをもっと身近にしたいという想いでスタートした、日本ペイントの小売向け室内塗料ブランド。ロゴやパッケージ、オリジナルグッズ、展示空間、HPなどトータルでデザインをしています。
【ヨツバコナツヤスミ】
横浜のセンター北駅の商業施設ヨツバコのサマーシーズンイベント。
イベントロゴ、スイカのフォトスポット、それと連動したうちわのスタンプラリーも企画し、イベント全体のデザインを担当しました。
デザインチームminnaに聞く「デザイナー」の仕事とは。
Q. 「デザイナー」になろうと思った理由を教えてください。
長谷川(以下、長):好きなことを仕事にしたいと思ったのが一番ですね。小学生や中学生の頃はずっとサッカーをやっていたんですけど、サッカーでプロにはなれないだろうなと思っていて。サッカー以外に好きなのが美術だったので、こちらの道を選びました。美術は、褒められたから好きになったというのも大きいです(笑)。
角田(以下、角):私も絵を描くことやモノをつくることが好きというのはありましたね。あとは、子どもを「おかえりなさい」と迎えてあげられる環境で働きたいと思ったからです。もともと、子どもは好きだったので、いつかは欲しいという想いも学生時代から強かったんです。私は、自分の母親に「おかえり」と言ってもらえる環境で育ったことにとても感謝していて、そういう当たり前だけど大事なことを、自分でもしたいと思いました。そう思ったのが中学生の時で、家でもできる仕事ってなんだろうって考えて、入り口はドラマとかのイメージで建築だったんですけど、そこからデザインの道を目指しました。有名なデザイナーに憧れて目指したという人の方が多いと思うので、動機が変わっているかもしれません。自分の納得のいく生き方を考えた時にデザイナーがあっていると思いました。
長:角田とは、大学が一緒なんですが学科は別で、卒業間近に付き合いだしたものの、卒業してから1年くらいは別々の活動をしていました。お互いデザインをやっていただんけど、それぞれが意見をもらえるほど素直ではなかったというか…。横目で見て茶々を入れるみたいな感じでした。
角:卒業してからしばらくは、ユニットを組みつつ、大学の研究室に在籍していたんです。長谷川も私もお互いのやっていることが少し分かるから、気になってしまうというのが、あまりいい方向に働かない気がして。そんな中で二人で、今後の働き方、人生の歩み方を考えたときに、「一緒にやった方がいいんじゃないかな。」っていう話になったんですよね。
長:話していく中でやりたいビジョンがはっきりと見えて、コンセプトやチーム名が決まった時に、僕も角田も前に進めたというか。デザインチームでやっていこうという決意が出来ました。
Q. 「デザイナー」になるために、どのような行動や心がけをしましたか?
角:今も継続中ではあるんですけど、幅広いジャンルの方々とお話しする機会が多いので、色々な言葉を覚えるようにはしていますね。地方の職人さんたちとのお仕事と、ベンチャーで立ち上げたばかりの方とのお仕事では、使っている言葉が全然違うんです。様々なジャンルの方たちと言葉を揃えて話せるというのは、コミュニケーション上ものすごく大事だと思っています。お互い気持ちよく会話を進めて、お仕事ができるように、日々勉強させてもらいながら、覚えるように心がけています。
長:グラフィックやプロダクトなどを見たときに”かわいい”とか”かわいくない”とか、そういう感覚ってあると思うんです。その時に、どうしてそう思ったのかをちゃんと考えるようにしています。理由を洗い出すことで、自分の無意識的な部分をきちんと言語化するトレーニングです。それを蓄積することによって、感覚的な言葉に対する表現の引き出しが増えます。たとえば、クライアントからの依頼で「かわいい感じでお願いします。」と言われたとします。そのクライアントが玩具業界と家電業界では、同じ言葉でも、そこにあるイメージは全く違ってきます。”かわいい”などの言葉に対するたくさんの表現の引き出しを持つことで、様々な要望に応えられるようになるんです。これは昔、無意識でやっていたんですが、大学生の頃にためになるなって事に気づいて、そこからは意識的にやっています。
(minnaの長谷川さん)
Q. 現在はどのような仕事(案件)を中心に活動していますか?
長:グラフィックやプロダクトだけではなく、コンセプトメイク、パッケージ、ウェブなどブランディングも含むデザインの仕事が最近は多いです。minnaを立ち上げた頃は、やっぱりプロダクトだけだったり、グラフィックだけという依頼が多かったんですが、ここ最近になってトータルでデザインしてくださいという依頼が増えました。
角:はじめてのブランディング案件は、2010年に携わった「NEWSED」という廃材を活用したアップサイクルブランドになるかな。ただ、はじめの依頼はブランディングではなかったんです。私たちは「旧NEWSED」と呼んでいますが、もともとminnaが携わる前から既にブランドがあり、あまり売れていないという状況でした。そこで売れる商品を1点作ってくれないかという依頼が最初でした。もちろん商品を1点つくることは可能だけど、ひとつだけ売れる商品ができたところで、ブランド自体が良くなるわけではないんじゃないかということを投げかけました。色々話していく中で、じゃあ、コンセプトの見直しから携わってくれませんかということで、リブランディングすることになったんです。
(minnaの角田さん)
長:ちょっとおせっかいな感じなんですが、「本当にそれでいいんですか?」とか、「どうしてそれをやるんですか?」とか、なぜなぜを繰り返していって、相手が抱えている問題点を見つけ出し、その問題点に対して一番最適な形でデザインがかかわっていければと思っています。大学在学中から、プロダクトデザインだけ、グラフィックデザインだけという限られた部分のデザインだと、足りないというか、ちょっと不足している感覚があって、伝えたい事が届いていないと感じていたんですね。トータルでかかわることで、届けたい人にきちんと届けることが出来るし、デザイナーとして役立てることが多いと思っています。
Q. 仕事で楽しいと感じる時、辛いと感じる時はそれぞれどんな時ですか?
長:基本はやりたい仕事をやっているので、楽しいという想いが前提にあります。デザイン事務所は不規則上等なイメージがあって、辛いことが多いと思われがちですけど、僕たちは出来るだけ普通の生活を心がけているんで、作業が永遠続いて辛いっていうこともないですね。朝はちゃんと起きるし、夜は19時に帰って、ごはんをつくって食べて、子どもとお風呂に入って寝る。もちろんテレビも見ます。世の中に必要とされる”機能するデザイン”というのは、世の中の人たちと同じ感覚で生きていないと分からないと思っているんです。僕らの当面の目標は帰宅時間を1時間早めて18時に、もう1時間早めて17時にとすることです。
角:こういう風に言うと嘘みたいに聞こえるかもしれませんけど、本当に楽しいがほとんどです。その中でも、やっぱりクライアントと一緒にミーティングを重ね、悩みながらつくりあげていくので、それが形になり、結果が出たときや、クライアントのその後のビジョンがより一層見えてきたりした時には、やりがいと嬉しさでいっぱいになります。基本的に社会に機能していかないと意味がないと思っているので、もちろんクライアントの想うものを実現することも大事なんですけど、デザインを通して、クライアントが想像していた以上の可能性を見えるようにしたり、ポテンシャルを引き出せた時は「やった~!」って思います。そして、そういう風にデザインがかかわることで、解決できることがあるということを理解してもらえた時や、デザインの力をちゃんと分かってくれた時は、本当に嬉しいですね。
(一生懸命お話してくれる角田さんと、「凄いいい話だね~。」と感心しながら角田さんの話を聞く長谷川さん。(楽しくて温かな空気感がお二人からも溢れ出てます!))
Q. オリジナリティを確立するために、心がけてきたことなど教えてください。
角:アーティストではないので、自分たちのテイストや作家性というのは、無いに等しいと思っています。どの仕事もクライアントありきで、それをどう一番よく発信するかっていうことを考えて可視化しているので。ただ、共通していえるとしたら、ハッピーにすることが得意だとは思います。世の中に難しく問うというよりも、明るくどう解決していくか、ハッピーにしていくためのデザインを得意としていて、そこが私たちの味なのかなと思います。
長:「MEETS TAKEGAMI」も放置竹林というシリアスな問題を抱えていて、そういう問題にストレートに向き合うデザインの仕方もあると思うんです。だけど、僕たちはできるだけ明るく世の中に問いかける方を選びたいと思っていて、その方がいい問題解決のきっかけをつくれるんじゃないかなと思っています。
Q. 今後、挑戦してみたい事ややってみたい事を教えてください。
長:デザインされていないところに対してデザインしたいというのが、僕らの大きい軸にあるので、気になっているところだと工事現場とかですね。工事現場をはじめ、そこで働く方々の職業自体もデザインをする余地があるのかなと感じることがあります。
角:いま、様々な領域がその中だけでできることに限界がきていると思います。その閉塞感を打破するために、領域と領域の間をデザインする事にすごく可能性を感じますね。
Q. 最後に、これから「デザイナー」を目指す方にメッセージをいただけますか。
長:今、デザイナーっていう言葉は、IllustratorとかPhotoshopでいい感じにデザインできる人みたいな意味合いで使われていますけど、もう何年かしたら、そういうデザインは小学生や中学生が簡単にできるようになる。そうなるとその仕事は、デザイナーではなくオペレーターでいいと言われるようなそんな時代になると思っています。クライアントの依頼の先に、本当のお題として何が隠れているのか考えていける人じゃないとデザイナーとして生き残っていけないと思うんです。表現のスキルを磨くのも大事だと思うんですけど、「なぜだろう?」って問いかける姿勢は持っていた方がいいと思います。
角:いま美大とかだと7:3くらいの割合で、圧倒的に女子の方が多いんですよね。だけど、大学を一歩出てみると、独立してデザイナーという仕事をしている人はほとんどが男性だったりします。特にプロダクトのジャンルは女子が圧倒的に少ないと感じていて。どのイベント等でも男友達しか出来なくて単純にちょっと淋しいんです。世の中で見ると女性で起業する人は増えてきてると思うので、そういう道を歩む女性デザイナーがもっと出てきたら嬉しいなと思います。
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minna|デザインチーム
2009年設立。2013年、株式会社ミンナとして法人化。
角田真祐子と長谷川哲士を中心とする、みんなのためのデザインチーム。
【みんな】のために【みんな】のことを【みんな】でやるをコンセプトに、グラフィックやプロダクトなどのジャンルにとらわれず、領域を越えて幅広くデザインを行う。グッドデザイン賞、日本パッケージデザイン大賞金賞、他受賞多数。
Webサイト:http://minna-design.com/