CREATOR クリエイティブなヒト
【箱庭4周年スペシャルインタビュー】イラストレーター ニシヤマイスキーさん
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箱庭4周年を記念して、「イラストレーター」「フォトグラファー」「デザイナー」「作家・アーティスト」の4つのジャンル×4人=16人のクリエイターの皆さんに、仕事についてお話を伺うスペシャルインタビュー。
自分たちの仕事と真剣に向き合い、何かを生み出し続けている16名のクリエイターのお話には、仕事に対する姿勢や意識など参考にしたいヒントがたくさんあります。同じクリエイターとして仕事をしている方やクリエイターを志している方はもちろん、クリエイター職ではない方々にも、じっくりとお読みいただけましたら箱庭一同嬉しく思います。私たちがインタビューを通じて感じた、「私も頑張ろう!」という励みをみなさんも感じてくれることを願っています。
今回は、イラストレーターのニシヤマイスキーさんにお話をうかがいました。
モダンでかわいいけれど、ちょっと変で、クスッと笑える。そんな、味のあるイラストを描くニシヤマイスキーさんは、普段は会社員として働きながら、クリエイターとしても活躍されています。3月に発刊された『LOVE! 京都2016』(宝島社)の挿絵が、ニシヤマイスキーさんのイラストレーターとしての本格的なデビュー作になりました。同書の企画展「Kanocoさんのチェキと歩く京都さんぽ」展を、箱庭メンバー2人が別取材でたまたま見かけ、そして2人ともニシヤマイスキーさんのイラストに心奪われたことが今回インタビューするきっかけとなりました。
自分のセンスや感覚をいかして描いているうち、それが自然と自分の持ち味になったと話すニシヤマイスキーさん。絵を描くことに対する柔軟で真摯な姿勢には、気づかされることがたくさんあります。
<ニシヤマイスキーさんのお仕事>
『LOVE! 京都2016』 誌面掲載イラスト(ポストカードとして写真展でも販売されました)
<ニシヤマイスキーさんの作品>
「Steak house」 オリジナルイラスト
「Hey! girls」 オリジナルイラスト
イラストレーター ニシヤマイスキーさんに聞く「イラストレーター」の仕事とは。
Q. 「イラストレーター」になろうと思った理由を教えてください。
小さいころからなんとなく、絵の仕事がしたいと思っていました。得意な科目はこれといってなかったけれど、絵だけは褒められることが多かったんです。高校では美術部の部長になり、卒業後は美術の短大に進学して、そこではじめてイラストレーションを学びました。将来のことを考えると、アーティストは食べていくのが難しそうだと感じていたし、わりと早いうちからイラストレーターになりたいと思っていましたね。イラストレーターって、編集者やデザイナーなど、つねに人と関わる仕事ですよね。ひとりきりで完結するよりも、自分の絵が人の手を通して発信されるほうがおもしろいと思ったんです。
上京してからは、アルバイトをしながら、絵を学ぶスクールに通っていたのですが、その学校にはうまくなじめずに、途中でやめてしまいました。それから入社したのが今の会社です。毎日ものすごく忙しくて、絵を描くひまもなく働きました。それが、あるとき、部署に人員が増えたこともあって、仕事がちょっと落ち着いたんです。考える時間ができたことで、私がやりたかったことはなんだろう、そうだ、イラストがやりたかったんだって、ふと思い出して。それで、もう一度、絵を描き始めました。
Q. 「イラストレーター」になるために、どのような行動や心がけをしましたか?
イラストレーターを目指そうと思っても、今までのようにやみくもに描いていても先が見えるとは思えなかったし、一度、業界の人に触れてみたいとも思って、仕事を続けながら、「パレットクラブ」というイラストの学校に通い始めました。学校に通った2年間はとにかく、自分のスタイルを確立することを考えながら、講師として来てくれているイラストレーターやデザイナーの方々のお話を聞いて、プロの感覚にふれるようにしていましたね。どういうところで展示をしているとか、仕事の内容や流れなど具体的なお話を聞くことができて、「イラストレーター」という職業についても学んだ気がします。
当時、講師のひとりに、どうしたらプロになれるのかと質問をしたことがあります。そこで教えていただいたのは、自分の得意分野を伸ばすことと、売り込み先を見極めること。私は、先日、あるイラストのコンペに出品して、賞をいただきました。ずっと仕事がしたいと思っていた雑誌の編集長さんが審査員をつとめているコンペだったんです。自分の絵の方向性がかたまってきた今、そのコンペで選んでいただいたことは、その方向でチャレンジしていこうという自信になりましたし、これを機にイラストレーターとしてのお仕事を広げていきたいと思っています。
Q. 現在はどのような仕事(案件)を中心に活動していますか?
イラストレーターとしてのお仕事はまだ始まったばかりで、現在は売り込み用のファイルを準備したり、来年に予定しているはじめての個展に向けて、作品を描いているところです。
『LOVE! 京都2016』のお仕事は、高円寺で開催したグループ展「モリサクマイスキー3人展 高円寺人情商店街」がきっかけになりました。友だちの編集者がその展覧会を見に来てくれて、私のイラストが、担当している雑誌の企画に合うかもしれないから、やってみないかと声をかけてくれたのです。それまでにも、知り合いや友だちに頼まれて、フライヤーのイラストを描いたりしたことはあったのですが、イラストレーターとしてやっていこうと意識してからは初めてのお仕事でした。
(写真左奥が、ニシヤマイスキーさんの仕事場です。)
Q. 仕事で楽しいと感じる時、辛いと感じる時はそれぞれどんな時ですか?
展覧会の作品づくりは仕事ではないので、テーマを決めても、わりと自分の好きなように描いていましたが、『LOVE! 京都2016』ではじめて「仕事」として経験して、求められるものがあって描くということが、こんなに楽しいんだということに気がつきました。求められたものに対してイラストを描いて、それに反応が返ってくる。誌面という結果になるまでの過程を味わえて、とても勉強になりました。苦労したのは、納期までの期間が短く、限られた時間の中で仕上げなければならなかったこと。けれど、結果的にはそれもよかったのかも。瞬発力でできましたから。
私はどちらかというと、壁にぶつかるということはあまりないほうだと思います。迷いながら描くタイプではないので、頭の中でイメージを作ったら、ラフな下描きをして、勢いで描いていきます。ファッションやカルチャーの絵だったら、雑誌をたくさん読んだり、気になるものを写真におさめたりして、普段からひきだしを増やしておいて、コンセプトが決まったら、頭の中ではいろいろと練るんですが、実際に描き始めたら速いです。描きながらイメージが変わっていくこともありますが、気にせず自由に描こうと心がけています。私は今回が初仕事でしたが、仕事によって課題やテーマが変わっていくところも、イラストレーターのおもしろいところだと思いますね。
Q. オリジナリティを確立するために、心がけてきたことなど教えてください。
私は人物を中心にイラストを描いているのですが、見た人からは、ちょっと変だねとかおもしろいねと言われます。自分では奇をてらって描いているわけではなくて、自分の中にあるイメージを再現している感じです。例えば色づかいも、描く前から使いたい色をなんとなくイメージしています。頭の中に浮かんだ色やシーンを、資料を見ながら絵の具で再現してみる。違うなと思ったら、少しずつ調整しながら、帳尻をあわせていきます。私のイラストは、ごはんに例えると、和食よりはインド料理という感じ。もともと自分の中にスパイシーな要素があるので、それがいろんな素材と絡みあって、自分の持ち味になっているんだと思います。
自分のオリジナリティをつくらなきゃと悩む人は多いし、変わったことをやってみよう、まだだれもやっていないことをやってみようとしがちだけど、とらわれすぎるのはよくないと思っています。以前、ブックデザイナーの方に絵を見てもらったとき、私はこんな技法で描いています、あえてこんな画材を使っていますとアピールしたことがあるのですが、そこで言われたのは、「画材や技法は関係ない」ということ。結果が良ければそれが正解なんだ、ということです。私の場合は、もとから自分の中にあるスパイスを使って、うまく “自分味” にしていけたらと思いますね。
Q. 今後、挑戦してみたい事ややってみたい事を教えてください。
雑誌のイラストや本の装丁画にチャレンジしたいです。
今はふたつの方向で考えていて、ひとつはファッションとかカルチャーといったジャンルと、もうひとつは、ちょっとアダルトなもの。私の絵は “色っぽい” “魔力がある“ と言われることがあるので、女性向けのちょっとエロティックな要素がある小説とか、オシャレだけどアダルトなものに挑戦してみたいですね。
イラストの学校に通っていたころに、安西水丸さんに私の絵を見ていただく機会がありました。私自身は意識をしていたわけではないのですが、エロティックな絵を描くねと言われて、何点かある中の1枚を褒めてくださったんです。そこを伸ばすといいと言っていただいたことが、今でも心に残っています。
Q. 最後に、これから「イラストレーター」を目指す方にメッセージをいただけますか。
好きなことを仕事にするのがいいかどうかは、結局は自分で答えを出すしかないけれど、趣味の域を越えたほうが、私はおもしろいと思っています。でも、イラストレーターを長く続けていくには、生活を維持することも大切。生活がゆらいでしまうと、絵も描けなくなってしまうから。私は今、会社員と両立をしていて葛藤することもありますが、イラストはずっと描き続けていきたいので、うまくバランスをとるようにつとめています。絵を毎日描き続けることは一番大変な課題で、実際に描けない日もあるんですが、そこでやめてしまわないこと。たまに休んでも、休み続けないで、ちゃんと再開すること。それは、とても難しいけれど、大事なことだと思っています。
イラストレーターという仕事は、仕事に対する正解がその都度違っていて、きっと、興味がつきることはありません。自分自身が成長し続けながら、それが仕事になるっていう、ほんとうにおもしろい職業だと思うし、一生をかけて続けていけたら幸せですね。
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ニシヤマイスキー|イラストレーター
1980年北海道生まれ。人物のイラストレーションを中心に、雑誌の挿絵やグループ展で活動している。かわいくてスパイシーな、ちょっと笑える作風が持ち味。来年に予定しているはじめての個展に向けて、精力的に作品を制作中。
Web site : http://www.nishiyamaisky.com/
Blog : http://nishiyamaisky.blogspot.jp/
文:蓬田愛