CREATOR クリエイティブなヒト
【箱庭4周年スペシャルインタビュー】ガラス造形作家 ROUSSEAU. akaneさん
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箱庭4周年を記念して、「イラストレーター」「フォトグラファー」「デザイナー」「作家・アーティスト」の4つのジャンル×4人=16人のクリエイターの皆さんに、仕事についてお話を伺うスペシャルインタビュー。
自分たちの仕事と真剣に向き合い、何かを生み出し続けている16名のクリエイターのお話には、仕事に対する姿勢や意識など参考にしたいヒントがたくさんあります。同じクリエイターとして仕事をしている方やクリエイターを志している方はもちろん、クリエイター職ではない方々にも、じっくりとお読みいただけましたら箱庭一同嬉しく思います。私たちがインタビューを通じて感じた、「私も頑張ろう!」という励みをみなさんも感じてくれることを願っています。
今回のインタビューは、ガラス造形作家 ROUSSEAU.(ルソー)のakaneさんです。
akaneさんは、2013年に多肉植物やエアープランツと、鉱物や化石をテラリウムで表現したテラリウムブランド「ROUSSEAU(ルソー)」をスタート。以降、個展や様々なクリエイターとのコラボ展、展示品の制作、セレクトショップのジュエリーショーケース制作など勢力的に活動。そして来月からはNHK番組にも出演されるなど、ブランド立ち上げからわずか3年でご活躍の幅を一気に広げているクリエイターさんです。
akaneさんのつくりあげる作品は、シンプルでありながら立体のおもしろさや幾何学の楽しさが詰まっていて、ずっと眺めていたくなります。Instagramで見つけた1枚の写真から最終的にファンになってしまったという箱庭メンバーがお声掛けをさせていただき、今回お話を聞くことができました。テラリウムブームの先駆けとして活動されてきたakaneさんは、さぞクリエイティブなお仕事を続けてきた方なのかと思いきや、ブランドを始めるまでものづくりの経験はなかったのだとか。ものづくり初心者から作家としてキャリアチェンジされた、バイタリティと熱意あふれるakaneさんのお話は「好きを仕事にする」ヒントがたくさんありました。
<akaneさんの作品>
多肉植物×鉱物のテラリウムやプランターなどEXHIBITION用の作品。
ROUSSEAU EXHIBITION at ENCOUNTER Madu AOYAMA.2016.3
布花作家utopianoさんとの二人展の風景。布花を額装した雰囲気で飾れるフレームタイプのケースや球根植物用のベースなどを制作。
UTOPIANO et ROUSSEAU at NAOT TOKYO.2016.3
布花作家utopianoさんとの二人展の風景。ハンギングタイプの水晶結晶構造ケースにスミレの布花標本をあわせて。
UTOPIANO et ROUSSEAU at NAOT TOKYO.2016.3
ガラス造形作家ROUSSEAU.のakaneさんに聞く「クリエイター」の仕事とは。
Q. 「ガラス造形作家」になろうと思った理由を教えてください。
もともとモノを作ることが好きだったとか、ものづくりをしていたとかではなく、この作家活動を始めるまでは、家具屋さんの販売員をやったり、アロマを使ったリフレクソロジーサロンで4年くらい働いていました。いつかお店を持ちたいなと思っていましたが、リフレクソロジーを自宅でやったりとかをぼんやり考えていたんです。そんなある日、たまたま海外のサイトでテラリウムを見つけて「あ、これどうしても欲しい。これを自分の家に飾りたい!」って思ったのがきっかけです。その頃は日本でテラリウムを売っていなくて、これは自分で作るしかないなと思いました。言ってみたら、自分の欲を満たすがために始めたんです(笑)。普段だったら「石橋を叩いて砕く」と比喩されたことがあるほどの慎重派な私なんですけど、あの時だけは違いましたね。「これに挑戦すれば、いいものが作れるんじゃないかな。」って直感的に思ったんです。小さい頃から石とか化石が好きだったし、リフレクソロジーサロンでの仕事を通して植物にもはまっていたから、そういう「自分の好き」を全部詰め込めるんじゃないかなとピンと来て、ちょっとこれは本気になってみようって思ったんですよね。出逢いかなっていう。出逢っていなかったら、まさかものづくりをするとは思っていなかったし、自分の人生ながら面白いなと思います。
Q. 「ガラス造形作家」になるために、どのような行動や心がけをしましたか?
まずは技術を身につけることでしたね。「これを作りたい!」と思っても、どうやって作ったらいいかも分からないし、ものづくりの経験もなかったので、まずはサイトで調べました。海外のサイトで、ステンドグラスの技法ということを知って、近所のステンドグラス教室に毎週通うことにしたんです。ただ、こういう透明のガラスで箱を作りたいんですと伝えても、日本のステンドグラスは色付きガラスに平面が主流。立体をきっちり組み立てるノウハウがなかったので、2か月間で基礎を学んだ後は、海外のサイト動画を見てひたすらひとりで研究です。綺麗にガラスを切るにはどうしたらいいかとか、正確に角度を決めて組み立てるにはどうしたらいいかを自分で考えて、それを実行するための機材ってどこで手に入るんだろうってまた探して。そうやって「理想のテラリウム」を作るための最短ルートを求めて試行錯誤するうちに、技法が身についた感じですね。
家具屋さんで働いていた時に、インテリアって服飾品と違ってあんまり高額にできないと感じていて、テラリウムづくりは手間はかかるけど、商品としての値段を高くしちゃったら長く続けられないなと思いました。だから、量産できるスピーディーさと腕を身につけないといけないというのは常に意識はしてました。それができなくちゃ、趣味の世界で終わっちゃうし、終わらせたくなかったので。2013年に作り始めたんですが、ようやく半年前くらいに「これが目指していた作り方だ」ってところに辿り着けたところです。
あとは、発信をこまめにしていたということと、Webサイトという基盤をしっかり作ったこととかな。はじめはブログでこまめに制作記録を残して、その後Instagramで発信をしていったんですが、少しずつ広がっているのを感じて、調べてくれる方のためにもネットでの窓口をしっかり作らなきゃって思ったんです。「趣味のハンドメイドでやっている人」というよりも「本腰いれてしっかりやってる」イメージを持ってもらいたかったので。サイトが出来たおかげで、お問い合わせも増えました。Webサイトもノウハウとかまったくなかったんですが、自力で作りました。サイト上の写真も自分で撮っているんですけど、これも独学。全部自分でつくって「大変でしょ」ってよく言われるけど、自分の見せたい世界観を作るためにやっているから、好きなことなので全然苦じゃないですね。
Q. 現在はどのような仕事(案件)を中心に活動していますか?
最近の主なお仕事は制作してオンラインショップで販売することと、イベントへの出店ですね。オンラインショップの方が全国の方に見てもらえるのでいいとは思うんですが、イベントの方が少し多くなっているのが現状ですね。イベントでその他の作家さんとコラボ展をしたりコラボ制作をすることも増えました。それこそInstagramとかSNSで広がっていくんですけど、声をかけてもらったり、私からも気になった作家さんのイベントに出向いてお声掛けさせていただいたりですね。そして、その繋がりでまた繋がっていってという感じです。一人でやっているので、いろんな作家さんと繋がることでものづくりの相談をしたりもできますし。私のつくっているモノって結構ボーダレスというか、ガラスの箱なのでコラボレーションしやすいんですよね。だから、私の共感できる作家さんと、新しく何かつくるっていうのは面白いし、自分でも気づかなかった作品の方向性が見つかってすごく勉強になります。
Q. 仕事で楽しいと感じる時、辛いと感じる時はそれぞれどんな時ですか?
それこそ、コラボで思いもよらない発見に出会えたり、新しいお客さんに見てもらえるときは嬉しいですね。つい先日は、布花作家のUTOPIANOさんと二人展をやったんです。UTOPIANOさんは女性的で繊細な作品を作られている方で、私はどちらかと言えば男性的でミニマムな作品を作っているので、コラボすることで今まで自分になかった感性を得られて楽しかったですね。作る時は結構悩みましたけど(笑)。どういったものだったらルソーらしさを出しながら乙女な要素を入れられかなって。悩んだ末に、石鹸をイメージしたジュエリーケースを作ったんですが、完成まで何度も試作しました。コラボする相手に「これがいい!」って思ってもらえないとつまらないので、責任感を持って取り組んでます。UTOPIANOさんと2人の世界観が出るものがいいねと相談しながら、制作しました。
辛い時は、黙々と単純作業しているとき。5時間ハンダ付けをやっているときとか(笑)。工場のラインの一部になった気分になります。でも、昔リフレクソロジーサロンで働いていたときに長時間お客様の身体をマッサージする忍耐力や集中力、身体を触る気遣いとかを身につけたことがここで役に立ってるんですよね。意外とそういうものが繋がるんだなあって思います。
Q. オリジナリティを確立するために、心がけてきたことなど教えてください。
他にないなというものを意識してつくるようにはしているんですが、でも始めたきっかけが「自分が欲しいと思ったもの」っていう部分はあるので、先駆者はすでに海外にはいたんですよね。ただ、先駆者に敬意をはらいながらそのままマネにならないようにっていうのは強く意識しています。そのために世の中で売っているものや作家さんはよくリサーチしますよ。他の人のものに似ちゃうと失礼だし、オリジナリティにならないですよね。私の「植物と鉱物をあわせた世界観」をしっかり作り込もうって思ってます。Instagramの写真も、独特の雰囲気が出ればなあっていうイメージで背景を真っ白に加工したりして、伝える世界観を決めて発信しています。
Q. 今後、挑戦してみたい事ややってみたい事を教えてください。
コラボで生まれる色んな展開というのは、じわじわ感じているので、今後もっとやっていきたいです。私は植物も自分の好きな植物をセレクトしてはいますけど、どちらかというと「ガラス」をメインでやっているので、植物を本職でやっている方とのコラボとかをやってみたいですね。
Q. 最後に、これから「ガラス造形作家」を目指す方にメッセージをいただけますか。
お客さまがお金を出して買ってくださるものを作るわけだから責任を持って「妥協無いものを作るぞ」って思ってます。常に良いものを作りたい、と追い求めないと。だから、作った時はベストのものを作ったぞ!と思っても3ヶ月経つと反省点が色々と出てきます。例えば手づくりのラッピングのフォントとか、ほんと些細なことなんですけど気になりますね。自分が飽きちゃったりするとつまらなくなるので、楽しく続られるように、感性が枯れないように、良いもの見て吸収して、色んな人と話して挑戦していく環境を作ることが大事かなって思います。
akaneさんの読者プレゼントは、こちら!
akaneさんがつくるROUSSEAU.の大人気商品「GEOMETRIC VASE Small / copper」を1名様にプレゼントします。
詳細は、プレゼント応募ページをご覧ください。(下記画像をクリックしてください。)
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ROUSSEAU. akane|ガラス造形作家
植物や鉱物などの自然物の暮らしの中での愉しみ方を追求し、2013年名古屋にてテラリウムブランド「ROUSSEAU.」スタート。
現在は東京を拠点とし、リノベーション会社と提携し竣工記念品や展示品の制作、セレクトショップのジュエリーショーケース制作など活動の幅を広げている。
Webサイト:http://rousseau.jp
オンラインショップ:http://rousseau.theshop.jp/
◆今後の活動予定
・NHK Eテレ 趣味どきっ!出演
テラリウム講師役として、身近なもので気軽に始められるROUSSEAU流のテラリウム作りを紹介。(6月7日より毎週火曜午後9時30分〜9時55分、全8回)
・NHK出版「趣味どきっ! アクアリウムとテラリウム わたしの部屋の小惑星」5月25日発売予定。(テレビでの放送内容が、アクアリウムと合わせてテキストして発売されます。)
・三省堂 神保町いちのいち ROUSSEAU作品の展示販売 6月1日〜30日まで。