かくたみほ
今回お話を伺ったのは、雑誌やCDジャケット、ファッションブランドカタログなどで活躍中の写真家 かくたみほさんです。今年2月に、ライフワークとして10年前から撮り続ける森と湖の国フィンランドの写真集「MOIMOI そばにいる」が発売となりました。かくたさんが撮影するやわらかな光が溢れるやさしい写真と、あたたかい撮影エピソードでおくる、フィンランドの魅力がたっぷりの写真集です。

インタビュー前編では、写真集「MOIMOI そばにいる」に込めた想いやフィンランドについてたっぷりと聞いてきました。写真好きな方、フィンランド好きな方はもちろん、フィンランドにまだ行ったことがないという方にもフィンランドの魅力を感じることが出来るインタビューです。 

みなさんが旅行で行かないフィンランドの素敵な場所を伝えたい

MOIMOI そばにいる
箱庭:まずは、写真集「MOIMOI そばにいる」で伝えたかったことを教えてください。

かくたさん:私は、わりとスタジオワークよりロケのお仕事が多くて、いろいろな場所に足を運びますが、綺麗な景色にたくさん出逢うんですよね。その時に、自分ひとりで満足するより、この素敵な景色をみなさんにも見て欲しいなという想いがありました。フィンランドを撮り続けた10年間で、みなさんが普段旅行で行かないような場所にも行っていて、すごく素敵な場所がたくさんあるので、それをまとめて出せたらいいなと思いました。
仕事では掲載できる枚数が決まっているので、もっとたくさん見せたいという想いがありました。
10年ぐらい前から撮り始めたのですが、そのころはギリギリ仕事もフィルムでした。デジタルに移行してからもこの美しい景色をフィルムで残したいなと思い、ずっと通っています。

箱庭:それは、すごい量の写真がありそうですね。

かくたさん:そうなんです。今回掲載されているのは、ほんの一部です。膨大な写真の量だったので、色々な切り口で出したいねという話になって、「MOIMOI そばにいる」では動物が多めです。私がもともと動物が好きという点と、撮り溜めた写真を見ると、人物の写真と同じくらいの比率で動物の写真があったことを編集の方が珍しいと言ってくれて、動物にしましょうということになりました。これから植物にフォーカスしたものだったり、オーロラなど冬の季節をまとめたものなど、続編を出していきたいなと思っています。

MOIMOI そばにいる

フィンランドの夏の夜の光の角度が好き

箱庭:仕事でいろいろな国に行かれると思いますが、フィンランドの魅力ってどんなところですか?

かくたさん:私の好きな光の角度の時間が長いのが、北欧と南米なんです。これは緯度の関係がありますが、フィンランドの夏は日が長くて、太陽の位置が低く、夜なのに西日みたいな角度の時間がすごく長いんです。それで、自分が好きな光の感じの写真がたくさん撮れるのが好きです。あと、フィンランドは一番最初に行ったヘルシンキがコンパクトだったので旅行しやすいという印象が強く残り好きになりました。日本からも9時間ですし、都市であるヘルシンキから1時間くらいで大自然が広がっているので、移動ロスが少ないというのが良いですね。ヘルシンキの次は何時間も電車や長距離バスに乗り、北に向うようになりました。いろんな方に、1ヶ月ぐらい撮りに行ってるんですかって聞かれるんですけど、5日~1週間で撮影できてしまうんですよね。

MOIMOI そばにいる

箱庭:今回の「MOIMOI そばにいる」でも、素敵な光の写真がたくさんありました。日が傾いている時間に撮られている写真なんですね。

かくたさん:そうです。白夜だと夜11時‬頃にようやく夕焼けっぽくなってくるので、夜通し撮って朝寝るということもあります。フィンランドに着いた日と帰国日はヘルシンキに宿泊しますが、他の日は地図を見て、宿のすぐ近くに湖があるとか、大きな公園がある場所をチェックして宿泊しています。田舎の方のコテージはそういうロケーションが多く、簡単に景色のいいところが見つかったりするので、撮影するには最高の場所だと思います。表紙もホテルの敷地内の湖に桟橋があるところで撮影しました。

MOIMOI そばにいる

箱庭:色合いが美しいですよね。

かくたさん:深夜はこういう風に青っぽくなります。ラップランド(北の方の地域)まで行くと、太陽が沈まないのでずっと見えていますが、ヘルシンキはそれよりも少し緯度が低いので、多少日が沈んで、こういう薄暗い感じになります。

箱庭:思わず夏に行きたくなりますね。

かくたさん:夏はやっぱりおすすめですね!ぜひ夏に一度行ってみてほしいです。6月のヘルシンキは、町の人も夜な夜なカフェのテラス席とかで飲んでいたりして、雰囲気がとてもいいんですよ。でも、冬もオーロラが見られるので好きですし、秋は紅葉も綺麗ですが、ベリーとかキノコ採りとか色んなことがあって楽しいので好きなので、他の季節でも楽しめます。 

すべて手焼きでプリントし、仕上がりの色にこだわる

箱庭:仕事の時はデジタルで撮るということでしたが、作品撮りをフィルムにこだわっているのはなぜですか?

かくたさん:逆光や半逆光で撮ったときに階調が綺麗に出るのと、丁寧に向き合って撮るということを、自然と意識しなくてもできる気がします。あとは、自分で手焼きプリントをしているので、仕上げの色の調整を自分の思い通りに再現ができるというのも大きいですね。

箱庭:今回もすべて自分でプリントされたんでしょうか?

かくたさん:はい。手焼きの原稿なので、トータルで何十日間か籠っていましたね。

箱庭:この色を出すために、何回も調整してということですよね。

かくたさん:そうなんです。最初テストピースみたいな、小さいサイズを焼いて、それでOKって思うけど、全体を焼くとちょっと違ったりするので、微調整を繰り返して焼いていきます。1枚焼くのに1時‬間ぐらいかかりますね。

箱庭:そうやって出来上がった写真に、今回はエピソードもご自身で書かれているということですが。

かくたさん:私は写真だけで良いと思っていたんですが、以前個展をした時のDMに掲載する説明文みたいなのを書いたのですが、その展示をしたギャラリーのオーナーさんが「かくたさんの文章面白いですね」って言ってくれて。自分では面白いつもりとか全然ないんですけど(笑)。そのオーナーさんが今回の出版社の方をつないでくれたということもあり、写真と文章の本を出しましょうとなっていたんですよね。文章はキャプションみたいな感じでいいと言われたので、それならできるかもということでお引き受けしました。

箱庭:エピソードがあることで、そのシーンというか情景が思い浮かぶというか、ちょっとクスッと笑えるというか。私もかくたさんの文章、いいなーと思いました。

フィンランドの島で自然を満喫するのがおすすめ

MOIMOI そばにいる
箱庭:この写真集を見てフィンランドに行きたくなる人がいると思いますが、みなさんに行ってもらいたいおススメの場所などありますか?

かくたさん:わりと世界観が味わえて、簡単に行ける島がおすすめですね。たとえば、中心地の港から一番行きやすいスオメンリンナ島。中心から少し離れた港からはハラッカ島。ハラッカ島は、とても小さいので、1周15分ぐらいで歩けちゃうんですが、鳥もたくさんいて、夏はお花もきれいなので、フィンランドの自然を満喫できると思います。この写真もハラッカ島ですね。

箱庭:こんな写真が撮れたら嬉しいですね。かくたさん、ありがとうございました!

「MOIMOI そばにいる」を見ていると、まだまだ知らないフィンランドに出逢えますし、フィンランドの自然に魅了されます。「MOIMOI」はフィンランドの挨拶で「やあ!」という意味。ぜひこの写真集を入口に、フィンランドの魅力を感じてもらえたら嬉しいです。

後編では、かくたさんに写真家になるまでの経緯や、お仕事に対する想いなどを伺います。

    ◆写真家 かくたみほ
    77年三重県鈴鹿市生まれ。
    スタジオLOFTスタジオマンを経て、写真家小林幹幸に師事後独立。
    雑誌やCDジャケット、ファッションブランドカタログなどの撮影と並行し、光とトーンを活かした作風で活動中。
    ライフワークでは、フィルムカメラを愛用して旅をベースに光・暮らし・自然・対なるものに重きを置いて制作。全国でグループ展・個展も多数行っている。
    http://mihokakuta.com/
    Instagram:@mihokakuta
    MOIMOI そばにいる
    – 単行本(ソフトカバー): 112ページ
    – 出版社: 求龍堂; 190×190版 (2017/2/1)
    – 言語: 日本語
    – ISBN-10: 4763017101
    – ISBN-13: 978-4763017109
    – 発売日: 2017/2/1
    https://mihokakuta.thebase.in/
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