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小さい頃からキャラクターに親しんで育ってきた私たち。年を重ねるごとに接する機会は少し減ったけれど、いくつになっても、かわいいキャラクターを見ると、心がときめいたり、癒されたり、自分の奥の方にある乙女心が目を覚ましてきて、キャラクターの力の偉大さを感じます。

そういうキャラクターたちは、どうやって生み出されているの?

今回は、2016年に株式会社バンダイと株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツの協業プロジェクトで誕生した、臓器×動物をテーマにしたキャラクター「Zookies(ズーキーズ)」の生みの親のお二人、株式会社バンダイの久々津(くくつ)さん(写真右)と、元株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツで現在はイラストレーターのあかりさん(写真左)にお話を伺いました。キャラクターの制作秘話をたっぷりとご覧ください。

臓器×動物をテーマにしたキャラクター「Zookies」

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(c)BANDAI / Sony Creative Products Inc.

キャラクターづくりは、こうやって始まる!

– Zookiesというキャラクターのプロジェクトは、どういう風に始まったのでしょうか?

株式会社バンダイの久々津さん(以下、久々津):ソニー・クリエイティブプロダクツ様は、キャラクターのライセンス事業を行っている会社で、バンダイはキャラクターを玩具やアパレル、生活用品等にするメーカーなんですが、もともとライセンサー(※)とメーカーという関係性がありました。キャラクターとモノづくり、お互いのノウハウを活かしたビジネスに挑戦しようということで、私達がプロジェクトメンバーとして参加することになりました。
※キャラクターの利用に際し、許諾を与える側をライセンサー、許諾(ライセンス)受ける側をライセンシーと言います。

– 一番初めに動き出したのはいつ頃ですか?

久々津:2014年の下期にキックオフしたので、誕生まで丸2年かかりましたね。

– 協業となると、役割分担も難しそうですが…。

イラストレーターあかりさん(以下、あかり):そうですね。ソニー・クリエイティブプロダクツは、ライセンサーとして様々なキャラクターの権利を抱えている会社なので、プロモーションとかライセンス展開のノウハウを活かして、バンダイさんはものづくりのノウハウを活かして、両者の強みを掛け合わせましょうという感じだったので、そのあたりの線引きはなんとなくありました。最終的には、私がイラストも描けるということもあり、アートの管理はソニー・クリエイティブプロダクツで、物作りや販売周りをバンダイさんで、プロモーションとかはお互い一緒に考えていきましょうというかたちでした。今は各社5〜6人ずつで全員で10人くらいのプロジェクトチームでやっていますね。

– それはいいものが出来そうですね!制作は、どんなところから始まっていくのでしょうか?

久々津:まずは大人の女性がターゲットということが決まり、そこからモチーフを何にしようかアイデアを出し始めました。その時は紅茶や妖精のキャラクターがあったりして。

– 今とは全然違いますね。

久々津:そうですね、結構ガーリーな雰囲気でした。最初はモチーフを考えるのですが、デザインが決まったらバンダイでいろんなプロダクトをつくるという構想が見えていたので、私の方では割とプロダクトの観点から考えたりしました。こういうものが今流行ってるんでこういうのどうですかという具合に。お互いに提案を持ち寄った中に臓器っていうアイデアがキーワードとしてあったんです。これならちょっとブラックな、ちょっととんがった体あるあるネタとかやったら面白そうだねっていう感じでした。

あかり:臓器は、誰もが持っているものだからという点や、海外でも使えるかもという観点もありましたね。

久々津:人種とか年齢とか性別とかあまり関係なく、みんな共感できるポイントがどこかしらにあるんじゃないというところで、臓器をモチーフにしたら面白いんじゃない?っていう具合に。

– 動物と掛け合わせたのは?

久々津:大人の女性に受け入れてもらうのなら、ストレートに臓器として打ち出すより、何かと掛け合わせた方がいいんじゃない?ということになりました。フルーツとかお花とかいろんなアイデアがあったんですが、その中で動物がいいんじゃないかとなり、臓器と動物の掛け合わせ案をたくさん出してみようということで、今ここにいないアイデアもたくさん出しました。直腸、子宮、腎臓とか、最初は本当にたくさん。

– そこから、少しずつ絞られて、ということなんですね。

モチーフからデザインへ。なかなか決められないデザイン案の決め手は!?

あかり:モチーフが決まったら、臓器と動物の掛け合わせをイラストに起こしていく作業に入りました。これはいろいろな案をまとめた一覧ですが、最初のイラストは少し子供っぽさがありました。

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(イラスト案をまとめた一覧。一番上のイラストが最初のイラスト)

– 全然違いますね!

あかり:そうですね。オーガニック感も出したいということで、こういう水彩イラストも描きました。

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– これはまた先程とはガラっと変わりましたね。こちらもあかりさんが!?

あかり:そうなんです。こういうタッチで描いてみては?と具体的に打ち合わせでご提案いただけるので、描きやすかった記憶があります。

久々津:当時は、月1回のペースで両社が集まって打ち合わせをしていたんですけど、こういう方向性のデザインが良いですねと意見をすると、あかりさんが何も言わずに次のミーティングにイラストを描いてきてくれるっていう。毎回ハイクオリティーなものを出してきてくれるので、すごく助かっていましたね。

あかり:楽しんでました(笑)。

久々津:ほかにも、デザインフェスタやInstagram、Twitterとかでコツコツ探して、この人のテイストいいんじゃない?っていうのを選んでコンタクトを取り、こういう企画があるんですけど、イラスト描いてみませんか?という風に依頼したりもしました。でも、なかなか決められなくて…。ある人はコレがいいと思うし、ある人は別案がいいと思うってなってしまって。アンケートをとる話もあったんですけど、せっかくのプロジェクトだから、自分たちがいいと思うものでやった方がいいという話になり、ターゲット層である年代の女性3人で決めることに。それで私とあかりさんと、もうひとりプロジェクトにいた20代後半の女性の3人で、1日会議室に閉じこもって、みんなでちょっと落書きみたいなのを描きながら、「これ可愛いね。」「こういうのいいね。」みたいな感じで決まったのが、これです。

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– もうほぼ現在の形に等しいですね。

あかり:そうですね。その後、こちらが初めてペン入れした時のイラストなんですが、どういうタッチにしようかという話になったときに、漫画家さんが使っているペンで描いたりしたら可愛いかも…、という話になったんです。

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– 確かに、鉛筆とペンで結構印象が変わりますね。

キャラクター設定、カラー、ぬいぐるみ制作、山ほどある決めるべきこと!

– キャラクター設定や住まいも細かく決まっていると思うのですが、どんなふうに決めていくのでしょうか?

あかり:キャラクターの性格は、臓器の機能をなんとなくヒントにしていて、住んでいる場所は、体を島に見立てたら面白いな~と。恋をすると隣の島が現れる、みたいな結構細かい設定もあります。

– 面白いですね~。

あかり:心臓をモチーフにしたドキドキうさ子は、たくさん恋をするんですが、その恋する相手がまた面白いんです(笑)
いわゆる世の中の女性がトキメキそうなのど仏とか、上腕二頭筋とか、引き締まったお尻とか。

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– ひとつひとつ設定を考えていくのは、結構大変ですよね…?

久々津:そうですね。でもそのあたりは、本当にあかりさんのイマジネーションのおかげですね。私はどうしても理屈で考えちゃうんですけど、あかりさんは「ああ、これいい!」って直感で思えるものをいつも出してくれるので、すごく良かったなって思います。

– あかりさんは、どういう風にそのアイデアを考えているんでしょうか?

あかり:う~ん。お風呂とかで考えたりしますね。

– アイデアマンなんですね。

あかり:でも久々津さんもいつも四コマ漫画のおもしろネタとかを戦略的に考えてくれるので、私が持って無い部分を沢山持たれていて、いつも、より面白い方へ可愛い方へ導いて下さります。

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(4コマ漫画。WEBサイトやInstagramで公開している。)

– バランスが取れた2人ですね。右脳と左脳みたいな…

久々津:確かに。右脳と左脳かもしんないですね。

– ひらめきのピカリープと、博学のメモリープ。今日のおふたりの洋服の色もキャラクターカラーと同じですね(笑)!

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– キャラクターカラーはどういう風に決めていくのでしょうか?

久々津:明るすぎず暗すぎず、ちょうどいい色味のカラーをたくさん探ってもらいましたね。

あかり:全部で7キャラクターいるので、色味が被らないようにするのが、大変でした。あと、私が最初ファンシーな色をつけていて、バンダイさんが指摘してくれました。「ファンシーだよ」って(笑)。

久々津:そうでした…?(笑)

あかり:指摘してもらって、本当に良かったな~と思いました。ファンシーになってましたから。

– ぬいぐるみもキャラクターごとに違う生地が使われていて、すごくこだわられているなと思いました。

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久々津:そうなんです。最初は生地問屋街に行って、キャラクターのイメージに合う生地をひとつひとつ探して買いました。普段使う生地は、コットンやソフトボアという生地がほとんどなんです。でも、Zookiesに関しては、普通のぬいぐるみと違った見せ方をしたいという想いがあったので、生地選びはかなり時間をかけた気がしますね。生産のことを考えるとキャラクターすべて同じ生地の方が効率も良いし、コスト面も良いんですが、それだけはしたくなくて、全種類変えるっていうのは決めてやりました。

– どうしてそこまでこだわろうと決めたのでしょうか?

久々津:やはり20~30代女性をターゲットとしているので、普段ぬいぐるみなどのキャラクターものを買わないけども、これだったらお部屋に置いてもいいかなって思ってもらえるようなものにしようっていうのが物づくり面において一番大切にしていたポイントだったので、工場との交渉とかもトコトンやりぬきました。

毎月積んだり崩したり。一筋縄ではいかない、キャラクターづくりの苦悩

– 制作の中で苦労した点など、教えてください。

久々津:やっぱりデザインを決めるまでが、本当になかなか決まらなくて、苦しかったような気がしますね。何をメインの商材にするかというのも結構決まらなかった部分なんです。最初は、「様々なアートを展開して平物(印刷物)を中心に商売しましょう」というアイディアも出てました。でも、平物とかは、せっかくプロダクトがつくれる弊社の強みをいかせないので、「それってバンダイがやる意味ってあるの?」っていう意見もあったり。あとは、そもそもキャラクター好きじゃない人にとっては、どんなにモチーフやデザインをひねっても結局届かないんじゃない?みたいな話もあって。そのあたりが打ち合わせする度に行ったり来たりしちゃうんですよね。

– なるほど。

久々津:やっぱり、わかりやすくコテッとしたキャラクターにした方がいんじゃないとか。いやいや、大人路線がいいんじゃないかとか。毎月毎月積んだり崩したり、積んだり崩したり(笑)。途中から議事録つけるのも面倒くさくなっちゃうみたいな(笑)。そういうときが一番しんどかったですね。

-ターゲットが20~30代女性っていうところが、結構難しかったんですね。

久々津:そうですね。

あかり:臓器という、ちょっとグロテスクなイメージのあるものを、どう好きになってもらうかが一番のチャレンジポイントだったので、その分苦労しましたね。
あと意外と、ネーミングも大変でしたね。商標とか良いネーミング案が出ても商標調査すると使用できないことが分かったり・・・。2社で何度も何度も案を出しあいましたよね。商標調査はバンダイさんがめちゃくちゃ調べてくれました。

久々津:商標もすごく大変でしたね(苦笑)。キャラクターひとつひとつを確認しなきゃいけないのと、ライセンス展開をするためには、ぬいぐるみ以外にも、衣服やカバン等、いろんなジャンルで商標をチェックしなくちゃいけなくて。商品化するであろう部分を全部クリアしようとすると、なかなか…。

– それは聞いてるだけで大変そうです。

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久々津:例えば、『チュリッピー』は最初、『マウチュ』だったんですよね。マウス(口のmouth、ネズミのmouse)とネズミのチューと掛けてマウチュみたいな。最終的にチュリッピーになりましたけど(笑)あっでも今はチュリッピーっていう名前がお気に入りです!

– なるほど。結構いろんなところで苦労があったんですね…。

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– 大変な事がたくさんありますけど、途中で心が折れたり、辞めようと思ったこととかありますか?

久々津:全然ありましたよね(笑)。

あかり:ありましたね(笑)。

久々津:きっとメンバー皆心の中で「もう辛い・・」って思ってたんじゃないですかね? 誰も口には出しませんでしたけど(笑)。

あかり:ありましたね、でも私は止めないで欲しい~って思ってました。描くことが楽しくて。辛いこともあったけど、楽しい仕事だったんです(笑)。

久々津:あかりさんの「やりたい!描きたい!」っていうパッションが本当にすごくて。それにみんな引っ張られたところはありますね。

親しみやすいキャラクターきっかけで、自分の臓器に想いを馳せてもらえたら嬉しい

– 逆に一番楽しかったという場面は??

久々津:今年2月に開催した、「臓器の世界に触れる晩餐会」という、グッズ発売直前のお披露目会ですね。Zookiesをイメージした料理を作ってもらって、それをみなさんに食べてもらいながらZookiesのことを初めて一般のお客様に紹介するっていう会を開いたんです。やっとここまで来れた!という想いと、あかりさんと私が思い描いていた「やりたい事」を全て実現できたという達成感で、本当に心に残る瞬間になりました。

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(晩餐会時の様子)

あかり:私も楽しかったです。いぶくろうがいつも抱えているお肉をモチーフにした「肉のなる樹」とか、自分の中のドキドキうさ子(心臓)がドキドキするのを体感できる「ジェンガサラダ」とか。楽しいアイディアがたくさんでしたよね。

久々津:あと、やっぱり商品が発売した時も、ひとしおって感じでしたね。やっとここまで来たっていう…!

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– そうですよね。2年半かかってますもんね。今後Zookiesでこういう商品展開あったらいいな、みたいなのとかありますか

久々津:それこそ食品系ですかね。晩餐会の時に、食との親和性をすごく感じたので。

あかり:そうですね、ぜひやりたいですね。

– では、最後になりますが、ターゲットである20~30代女性に、このZookiesをどう楽しんでもらいたいかっていうのを教えてください。

あかり:臓器は自分の体の中にあるものなので、共感することも多いかなぁと思うんです。そういうちょっと面白い部分をたのしみつつ、おしゃれな雑貨として親しみを持ってもらいたいなと思います。

久々津:そうですね。あとはこの子たちが自分の体の中に「居るのかも!」って思って欲しいですね。例えば、お腹空いている時とかに、いま私の「いぶくろう」はお腹すかしてるんだなぁとか。 Zookiesがきっかけで自分の体の内側への意識が強まってくれたら嬉しいです。

あかり:確かに。なんか、孤独を感じた時に…(笑)。

久々津:ひとりじゃない!みたいな!(笑)

– 体のことを知るきっかけにもなりそうですね。今日は、本当にありがとうございました!

10月14日(土)&15日(日)の2日間、品川シーズンテラスにて開催されるイベント『FUDGE Holiday Circus with Shinagawa Open Theater』にZookiesブースが出展決定!

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【Zookiesブース内容】
・ZookiesのSNS(Facebook、Twitter、Instagram)をフォローしてくれた人にZookiesマスコットプレゼント!※既にフォローされている方も対象です。(無くなり次第終了)
・まるでサーカスに登場しているような写真が撮れる?!不思議なトリックフォトブースで記念撮影!
・「リサとガスパール」ブースで、Zookiesグッズ引換券が貰える!(無くなり次第終了)
・Zookiesのぬいぐるみやグッズの展示コーナー

盛りだくさんの内容でお待ちしております。ぜひお越しください!

    FUDGE Holiday Circus with Shinagawa Open Theater

    開催日:2017年10月14日(土) 15日(日)
    開催時間:各日11:00 OPEN
    会場:品川シーズンテラス(東京都港区港南1丁目2番70)
    入場料:無料
    URL:http://hc.fudge.jp/tokyo/

提供:株式会社バンダイ