そで山かほ子さん インタビュー

今回お話を伺ったのは、イラストレーターのそで山かほ子さんです。
アンドプレミアムやフイナム アンプラグドといった雑誌や、書籍の挿絵などで活躍中のそで山さん。ちょっとシュールでお茶目な可愛らしさのあるイラストからは、誌面を楽しく明るい雰囲気にしてくれるような力を感じます。

チョコレートが溶けたみたいにアクリル絵の具をたっぷり塗った作品が魅力的なそで山さんですが、近年では平面の作品だけでなく、ベニヤ板をカットアウトして作るプロダクト作品も手掛け、活躍の幅を広げています。2017年9月に、APARTMENT HOTEL SHINJUKUで「架空のホテルにある喫茶店」をテーマに展示を実施。それを発展させた形で、現在、松陰神社前・ノストスブックスにて個展「どこかの街の喫茶店」を開催中です(2018年2月25日まで)。

箱庭の展示レポートはこちら

今回は、その個展会場におじゃまして、そで山さんならではのユニークな作品がどのように生まれたのか?ということから、イラストレーターになられたきっかけまで、いろいろとお話を伺ってきました。

旅の中で見た景色の印象が、すごく“こってり”だったんです。

そで山かほ子個展「どこかの街の喫茶店」
(ノストスブックスの展示に合わせて、ご自身が思い描く喫茶店の店内をイメージして描かれた作品)

箱庭:まず、作品についていろいろ教えてください。そで山さんの作品は、“チョコレートが溶けたみたいにアクリル絵の具をたっぷり塗った”という表現がぴったりだと思うのですが、こうしたそで山さんならではの作品は、どのように生まれたのでしょうか?

そで山かほ子さん(以下、そでかほさん):“チョコレートが溶けたみたいに~”という言葉は先輩がそのように表現してくださったのですが、自分自身もすごくしっくりきています。結構絵の具をたっぷりと使うのですが、そうなったきっかけはアメリカへの旅行ですね。旅の中で目に入ってきたものの印象がすごく“こってり”だったんです。

そで山かほ子さんによるSalvation Mountainのカットアウト作品
(そで山かほ子さんによるSalvation Mountainのカットアウト作品)

カリフォルニアの砂漠の中を何時間も車で行ったところにあるSalvation Mountainというアート作品を見に行ったのですが、ものすごい素敵で!ひたすら延々と続く砂漠の真ん中に突如としてたくさんの色のペンキを使ったカラフルな大きな山が“どん”と出てくるんです。そんなカリフォルニアの風景を見てから、こってりと、もりもり絵の具を使って描くようになりました。

箱庭:そんなアート作品があるんですね。砂漠の中を何時間も!行きにくい場所にも行かれるんですね。

そでかほさん:どんどん行きますね(笑)!
絵の具の使い方もそうですが、色味も旅で見てきた時の影響があるなと思います。日に焼けたくすんだ感じで、だけれども明るい感じ。

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箱庭:カットアウトの作品にも、そうした色味が反映されていますよね。

そでかほさん:アメリカの田舎町に訪れた時に、日に焼けた古い看板が残っていて。その感じがすごく好きで、自分でも欲しいなと思ってカットアウトの作品を作り始めました。ひとつひとつ手作りで、自宅で制作しています。ミシンくらいの大きさの電動糸鋸で作っているので、部屋が木くずまみれになります(笑)。工具を使うことは嫌いじゃないんです。今回の花瓶の作品は、なかなか日常で額に入った絵を買うのは難しいという方でも、手に取っていただけたらいいなと思っています。価格帯の設定も、より気軽に作品を暮らしの中で楽しんでもらえることを考えて決めました。

箱庭:旅で見た看板が欲しい!と思い始まった作品だったんですね。暮らしのなかで楽しめるアート、素敵ですね。

古いモノに惹かれるのは、物語があるからかもしれない。

(ノストスブックスでの展示風景)
(ノストスブックスでの展示風景)

箱庭:アメリカへの旅では、アンティークモールへ行くのがお好きだと聞きました。どんなところに魅力があるんでしょうか?

そでかほさん:田舎町のアンティークモールは、すごく広い店内に個人のブースがたくさんあって、出品されているものも本当に個性的なものばかりなんです。変わったコレクションもあればガラクタもあって、それこそピンキリ。それが、200ブースくらい並んでいて、時間をかけてひたすら見て回るのは、まるで宝探しです。

(ご自身のアンティークのコレクションや思い出のエピソードから生まれた作品)
(ご自身のアンティークのコレクションや思い出のエピソードから生まれた作品)

私がそういう場所で目を惹くのは、古いエンブレムのブローチや、出展者の方が大事にしてた古いヘアピンなど、ちょっとした小物です。レアものかどうか?というよりは、自分の目線で面白いな、かわいいなと思うものを見つけるのが好きなんです。

手作りのものや、これなに?みたいなものも愛おしく感じますね。例えば、手作りの小さな可愛らしい木彫りの熊を見つけたんですが、そこに現れた出店者さんが体の大きな熊みたいなおじさんで、もうダメです(笑)。

今回の展示テーマである“喫茶店”もそうですが、古いものはこれまでの辿ってきた歴史や時間があるので、それを想像するのが好きなのかもしれないですね。

「ずっと出来る仕事って何だろう?」その答えが“絵”の仕事でした。

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箱庭:今現在、雑誌や書籍でご活躍されていらっしゃいますが、もともとイラストレーターになられたきっかけを教えてください。

そでかほさん:もともとアパレル関係の仕事などを点々としていました。そんな中である時、ずっと出来る仕事って何だろう?と考えることがあったんです。年齢的にもそう思う時期だったのかもしれませんが、“手に職”を付けたいなって。でも、今から染物の職人さんのところへ修行に出るようなことは出来ないなと思い、好きなことは何かと考えてでてきたのが、セツモードセミナーへ行っていたことがあるので絵を描くことでした。

そして、絵を仕事にしようと思い始めた頃パレットクラブスクールの存在を知り、受講することにしました。その時の講師の中に安西水丸さんがいらっしゃって授業を聴講したのですが、すごく感動したんです。その時安西水丸さんが、「塾をやっているので興味ある人は調べてみて」とおっしゃったので、「これは行くしかない!」と思いました。ただその後、調べても調べても情報が出てこなくて、あきらめかけてたんです。そんな時、たまたま友人の友人に通っている方がいて、紹介してもらうことができて、滑り込みで入りました。

箱庭:滑り込みとは、すごいですね!

(展示会場のノストスブックスにたまたま置かれている安西水丸さんのポストカード)
(展示会場のノストスブックスにたまたま置かれている安西水丸さんのポストカード)

箱庭:安西水丸塾は、どんな授業だったんでしょうか?

そでかほさん:特に絵をこう描きなさいと言われたことはなく、描いたものを先生が見て、ちょっとアドバイスをくださるんです。それがすごい的確で、イラストレーションとはどういうものなのかを教えていただいたと思っています。そこで絵を見ていただけたことは、私にとってとても大きな財産となっています。また、先生のおかげでたくさんの先輩たちと出会えたことも、今に繋がっていると思います。

雑誌のお仕事がきかっけで、独立できたって言えるようになりました。

箱庭:絵の勉強をされて、その後のお仕事はすぐに雑誌などのお仕事だったのでしょうか?

そでかほさん:最初から順調に仕事が来ることはなく、しばらくはアルバイトをしながら、たまに頂く仕事を喜んで描いていました。そんな中、リニューアルしたばかりの雑誌『GINZA』で、挿絵のお仕事をいただいて。そこからいっきに問い合わせをいただくようになり、そこから独立できたといえるようになりました。どんなお仕事もひとつひとつ大切ですが、やっぱり雑誌は見てる方も多いので宣伝にもなるんだなと実感しました。

箱庭:より多くの方に見ていただける機会というのは、大事ですね!これからやってみたいことがあれば、教えてください。

そでかほさん:インテリアやアパレルなどのディスプレイの仕事があればやってみたいですね。今あるカットアウトの花瓶で、もっともっと大きいものも作ってみたいです。

箱庭:ぜひ見てみたいです!

続けることと、知られることで繋がるんじゃないかな、と思います。

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箱庭:箱庭読者の中のクリエイターを目指している方や駆け出しの方へ、メッセージをお願いします。

そでかほさん:続けることと、知られることで繋がるんじゃないかなと思っています。今考えてみると、これまで人との繋がりでお仕事を紹介して頂いて、また繋がってお仕事出来るということの積み重ねで。繋がりに日々感謝という感じです。今であればインスタグラムなどのSNSもあるので、そういうものを使って発信して、自分の仕事や活動をより多くの方に知っていただけるようにすることもとても大事だと思います。私の場合は、いろんなグループ展に積極的に参加している時期がありましたが、そこで知っていただきお仕事を貰うことも多かったです。グループ展では他のクリエイターさんとの出会いもあるので、そうした機会は大切だなと思います。

そでかほさん、ありがとうございました!
お話を伺いながら、そでかほさんの旅で得た感動が詰め込まれた作品たちを見ていると、私も旅にでていろんな景色やモノ・コトを通して、素敵な物語に出会いたくなってしまいました。

ノストスブックスで開催中の個展「どこかの街の喫茶店」は2月25日(日)まで。ぜひこの機会に足を運んでみてください。今回は間に合わない!という方も、これからのそでかほさんの活動に注目してみてくださいね。

    ◆そで山かほ子 プロフィール
    イラストレーター。
    1978年新潟県生まれ、東京都在住。安西水丸塾受講。
    チョコレートが溶けたみたいにアクリル絵の具をたっぷり塗った作品や、独特のタッチの線画が特徴。2009年よりグループ展多数参加。2013年よりフリーランスのイラストレーターとして、広告・雑誌・書籍などのイラストレーションを中心に、幅広く活躍中。近年、プライウッドのカットワークのプロダクトも手がけている。
    http://sodekaho.com/
    https://www.instagram.com/sodekaho/

    そで山かほ子個展「どこかの街の喫茶店」

    期間:2018年2月10日(土)~2月25日(日)
    会場:nostos books
    東京都世田谷区世田谷4-2-12
    12:00~19:00 水曜定休
    03-5799-7982
    https://nostos.jp

    詳細記事:https://nostos.jp/archives/176511