CREATOR クリエイティブなヒト
24歳若手人気イラストレーター・てらおかなつみさんインタビュー|作者表記がなくても、自分の絵だと分かってもらえるイラストレーターになりたい
今回お話を伺ったのは、かわいい犬のイラストでご存知の方も多いであろうイラストレーター・てらおかなつみさんです。
てらおかさんは広島出身の現在24歳。バンドやアーティストのCDジャケットやグッズのお仕事を中心に幅広いジャンルで活躍中の、注目の若手イラストレーターです。箱庭では、筒形のぽち袋「POCHI-PON」の記事でちょっぴりご紹介させていただいたことがあります。
てらおかさんは4月28日から5月19日の期間、東京・蔵前にあるおいしい紅茶が飲めるカフェ・meme meal/Tにて、「てらおかなつみのライフワーク展」を開催しています。
今回のインタビューではてらおかさんにイラストレーターになったきっかけや、イラストを描くうえで大切にしていること、そして今回のライフワーク展についてなど色々お話しいただきました。
てらおかさんといえば“良い犬の絵を描いてくれる人”と思ってもらいたい
(本展のフライヤー。「いい展示会にしたいので、フライヤーもこだわって作りました。」とおっしゃっていました。)
箱庭:まずは現在てらおかさんがどんなお仕事を手がけているのか教えてください。
てらおかさん:イラストレーターとしてアーティストさんやバンドのCDジャケットやグッズなど、音楽まわりのお仕事をさせていただくことが多いです。お土産や商品のイラストとか、本の挿絵も描いています。
箱庭:最近ほんとに色んなところでてらおかさんのイラストを見かけます!てらおかさんといえば犬のイラストの方という印象がありますが、当初から犬のイラストを描いていたのですか?
てらおかさん:そうですね、犬のイラストはずっと描いてきました。特にここ1、2年はてらおかさんといえば良い犬の絵を描いてくれる人、と思ってもらいたくて意識的に犬の絵を描いていました。
箱庭:てらおかさんのイラストは柔らかい線と優しい色で、見ていてほっこりとするところがとても素敵だなぁと思います。ずっとこのようなテイストの絵を描いてこられたんですか?
てらおかさん:はい、テイストはずっと変わっていないです。でも実は、どちらかといえばふんわりとした絵ではなくかっこいい絵に憧れていて…。
箱庭:かっこいい絵ですか!?すごく意外です。
てらおかさん:ただかっこいい絵を真似して描いてみても、ふんわりしてしまうんです。自分が好きなものと描けるものが違うので、誰かの真似とかにならずに済んでいるのかなって思っています。
小学生の頃に何度も借りて読んだ本がきっかけで、イラストレーターというお仕事の存在を知った
箱庭:てらおかさんには、影響を受けたイラストレーターさんっていらっしゃいますか?
てらおかさん:私と同じ広島出身のBOOSUKA(ブースカ)さんというイラストレーターさんに影響を受けています。広島にいると色んな所でBOOSUKAさんのイラストを目にするんですけど、名前が描いてなくてもBOOSUKAさんの絵だって分かるんです。私も名前がなくても自分の絵だって分かってもらえたら良いなっていう思いがあります。
箱庭:そもそもてらおかさんがイラストレーターになろうと思ったきっかけはなんなんでしょう?
てらおかさん:実はイラストレーターになろうと思ったきっかけが、BOOSUKAさんのイラストなんです!
小学生の頃同じ本を何度も借りて読んでいて、なんでいつも私はこの本を借りるんだろう?と考えた時、表紙と挿絵が好きだからだと気付きました。その本のイラストを手がけていたのがBOOSUKAさんだったんですけど、“イラストレーター・BOOSUKA”という文字を見て、こういうお仕事をしている人がイラストレーターって言うんだ!と気付き、それからイラストレーターになりたいと思うようになりました。でも当時はイラストレーターがまわりに一人もいなくて、遠い夢みたいな感じでした。
(小学館の「ぷっちぐみ」の挿絵を担当された時の原画)
箱庭:大学ではデザインを専攻されていたんですよね?
てらおかさん:はい。中学生になってもやっぱり絵を描くことが好きで、高校は普通科の美術コースに進んで油絵を描くようになったんですけど、油絵画家もまわりにいなくて…。油絵画家にもイラストレーターにもなれなさそうだけど、絵をお仕事にしたいって思った時、デザインのお仕事についたらちょっと挿絵を描かせてもらうとか、絵にかかわるお仕事ができるんじゃないかと思い、京都にある美大でデザインを学びました。
箱庭:大学卒業後はイラストレーター一本で生活されているんですか?
てらおかさん:そうですね。大学時代にデザインを学びながら趣味で絵を描き続けていたら、ちょっとずつお仕事をもらえるようになってきて。もしかしたらイラストレーターって名乗ってみたらやっていけるんじゃないかなって思えたので、思い切ってイラストレーターになりました。
まわりの人がくれる小さな仕事をやっていくことで、活躍の場を広げた
箱庭:てらおかさんは若手のイラストレーターさんのなかでも特に勢いのある方だなぁと感じます。活躍の場を広げるために何か工夫したことがあるんですか?
てらおかさん:なんでしょう…(笑)。学生の時は修学旅行のしおりや高校の合唱コンクールの絵をお願いされることがあって、まわりの人がくれるそういった小さな仕事をやっていったら、それがちょっとずつ広がっていって今に至る感じなんです。
箱庭:てらおかさんの素敵な人柄や、一つ一つの仕事に丁寧かつ情熱的に取り組んだことで、今があるんですね。てらおかさんはTwitterやInstagramで発信をたくさんしていらっしゃいますが、SNSやネットの力を感じた経験はありますか?
てらおかさん:ネットの力を感じる経験はたくさんあります。京都に住んでいた頃も東京の方とネットで繋がってお仕事ができていましたし、私はイラストレーターとしてCDジャケットを手がけることが夢だったんですけど、ねごとっていうバンドのメンバーの沙田さんという方は犬がお好きで、SNSで私のイラストをみて声をかけてくださったんです!そこからねごとのグッズデザインを手がけさせていただきました。
(会場には本展のフライヤーを文字組みするために書いた文字とイラストもありました。)
箱庭:お仕事をする時、大学でデザインを学んだことが役に立っていると感じますか?
てらおかさん:Photoshopやillustratorを使うことができるので、イラストを描いたあとデータ化して商品にするまでのことを考えたり、フライヤーを作る時には自分で文字組みができたり、大学で学んだ知識が役に立つ場面は多々あります。グッズを手がける時も、自分の納得のいく仕上がりにすることができるので、デザインを学んでいて良かったなぁと思います。
小さい子からお年寄りまで、みんなに好かれるイラストを描きたい
箱庭:ここからはてらおかさんにイラストについて、もっと色んなお話をうかがえればと思います!まずはてらおかさんがイラストを描くうえでいつも心がけていることを教えてください。
てらおかさん:昔から小さい子からお年寄りまで好きになるようなイラストが好きだったので、私も若者や女性とかだけじゃなくて、駅とかに貼られるようなみんなに好かれる絵を描きたいなぁと思っています。
箱庭:お仕事で描くイラストと個人で描くイラストでは、何か意識に違いはありますか?
てらおかさん:お仕事の場合は依頼してくださった方のものになるイラストを描こうと思っているんですけど、個人的に描いて個展で発表しているイラストは、見に来てくださった方の「自分の犬に似てる…」とか「こういう風景見たことある…」とか、ちょっとでもその人に共感してもらえるような絵になればいいなと思って描いています。
お仕事でも個人でも、いつも誰かのためのものになる絵を描きたいという気持ちがありますね。
箱庭:普段てらおかさんは色鉛筆などアナログなイラストが多いイメージですが、それはなぜですか?
てらおかさん:小さい頃からパソコンで描いたイラストより、手で描いた鉛筆のイラストの方が好きなんです。今でもパソコンを使うことはあっても、まずは必ず鉛筆で描いてからにしています。なぜか手で描いたイラストの方が魅力的に感じるんですよね。
箱庭:虹色の鉛筆で描かれているイラストもすごくいいなぁと思います。
てらおかさん:虹色の鉛筆で描いたイラストは、油絵の技法を取り入れたものです。油絵は何かを描く時、背景の色を少し混ぜた色を使うことで絵に一体感を生み出すことができるんですけど、虹色の鉛筆のなかには背景の色が混じっているから、背景と馴染むかなって思って。
油絵のこってりとした感じがすごく好きなので、今はこってりと色を塗るのも好きなんですよね。
箱庭:高校生の油絵を描いていた経験がここで活きているんですね!てらおかさんが普段イラストで描くのは、どんなものが多いんですか?
てらおかさん:日常で目にしたものをイラストにしています。自分の想像で描いたイラストは、自分だけのイラストになってしまう気がするので描かないです。イラストを描くときは、散歩や旅行の時に見た風景とか、人が見た風景でも良いんですけど、とにかく写真を見て描くようにしています。
今年は戌年なので特に頑張って個展を開催!
箱庭:現在「てらおかなつみのライフワーク展」を開催中ということですが、これは定期的に開催しているものなんですか?
てらおかさん:個展を一年に一度開催するということを目標にしていて、毎回基本は「てらおかなつみのライフワーク展」という名前で個展を開催しています。去年だけは犬を描く人というイメージを持ってもらいたいという気持ちがあったこともあり、「犬の絵展」という名前の個展にしました。
箱庭:「てらおかなつみのライフワーク展」で発表する作品の内容は毎回変わるんですか?
てらおかさん:そうです。毎回1年間で描いたイラストを発表しています。
今年は戌年なので特に頑張ろう!と思い、展示会を何度か開催したいなぁと考えているので、前回の展示会からあまり経っていないんですけど開催します。
箱庭:今回はどんな作品が飾られるんですか?
てらおかさん:いつもは落書きとかも含めて100点くらい作品を飾るんですけど、今回は良いイラストだけを飾ろうと思っています。
あと春なので花が多いです。以前「犬のイラストも好きだけど、花のイラストも好きです。」と言ってくださる方が結構いて、意識的に花のイラストを描いてみました。
オリジナルの紅茶アイスにイメージソングに…展示会には注目ポイント満載!
箱庭:今回の会場は蔵前にある、meme mealさんという紅茶専門のカフェなんですよね。紅茶といえば、今回限定メニューで紅茶のアイスがあるんだとか!
(箱庭編集部も紅茶のアイスをいただいてみました。紅茶の味と香りがたまらない、とっても美味しいアイスであっという間に食べ終わりました…!)
てらおかさん:そうなんです!私が小学生の頃好きだった思い出の紅茶アイスがあるんですけど、今回特別にmeme mealさんがそれを再現した美味しい紅茶アイスを作ってくださいました。この紅茶アイスを頼むと私がデザインした犬の絵のお皿をお持ち帰りいただけます。たくさんの人に食べてもらえたら嬉しいです。
(てらおかさんデザインのお皿)
箱庭:会場で販売しているグッズはどんなラインナップなんでしょうか?
てらおかさん:去年販売して完売したTシャツとキャップを、色違いで再販します。あと、今回のフライヤーのイラストの真っ白なトートバッグなども販売します。
箱庭:可愛いのでどれも欲しくなっちゃいそうですね…!
てらおかさん:グッズに関してだと、今回展示会のイメージソングとして紅茶の歌を辻林美穂さんという方に作ってもらったので、そのCDも販売します。つじばやしさんとmeme mealさんの紅茶とケーキを「おいしい!」って言いながらお話をしたんですけど、その時の楽しい様子を曲にしてもらいました。CDを購入した方が曲を聴くことで、展示会のことを思い出してもらえたら嬉しいです。
箱庭:今回の展示会は注目ポイントがたくさんあるんですね!
てらおかさん:そうなんです。あともう一つ、今回は額ではなく紙の箱に入れてイラストの展示をします。蔵前が職人さんの町ということで、紙で箱を作っているおじいさんに作品を入れる箱を作ってもらったんです。額がついていないので、ガラス越しではなく直接イラストを観ることができて面白いんじゃないかなと思います。額がないので作品をいつもより安く販売します。
なるべく毎日在朗して新しい絵を描いて飾っていくので、それも楽しみにしていいただければと思います。
(タイミングが良ければ、こんな風に普段はなかなか見ることができないてらおかさんの制作現場を生でみることができるかも…!)
箱庭:最後に、今後てらおかさんがやってみたいことはありますか?
てらおかさん:私はもっと頑張れる、もっと頑張ったらもっと良いイラストが描けるという気持ちで取り組んでいて、人とアトリエを借りて影響しあうことで、もっとたくさん作品を作りたいなぁと思っています。毎日引きこもってイラストを描いているので、それだと広がりがないような気がしていて…。
箱庭:まだまだてらおかさんのご活躍の勢いは止まりませんね!
実はかっこいい絵がお好きだったり、穏やかな雰囲気をお持ちでありながら心にとってもあついイラストレーターとしての想いを秘めていたり。今回のインタビューは私がこれまで抱いていたてらおかさんのイメージとのギャップを感じて、とても面白い時間となりました。今後てらおかさんが一体どんなご活躍をされるのか、とても楽しみです。
てらおかさんの展示会は5月19日(土)まで。土日は混雑してカフェのお席には座れないかもしれない場合もありますが、カフェを利用しなくても展示は見られるそうなので、ぜひ足を運んでみてくださいね。
イラストレーター:てらおかなつみ
1993年生まれ。広島出身。京都精華大学デザイン学部卒業
フリーランスのイラストレーター。自らが描く柔らかい線が特徴のイラストを用いてデザインもしている。
主に音楽アーティストのCDジャケットやグッズ、雑誌の挿絵、お菓子のパッケージ等を手がける。
Twitter:https://twitter.com/teraoka_natsumi
「てらおかなつみのライフワーク展」
日時:2018年4月28日(土)~5月19日(土)
定休日:月・火曜日
営業時間:11:30〜18:00(最終日は17:00まで)
場所:meme meal/T
住所:東京都台東区鳥越2-5-1 恵比須ビル1F
café instagram:https://www.instagram.com/meme_meal/