RITUAL the crafts

こんにちは、箱庭編集部です。
今回お話を伺ったのは、長野県飯田市の伝統工芸品、水引を使ったアクセサリーや美術品を制作している「RITUAL the crafts」(リチュアルザクラフツ)の仲田慎吾さんです。

RITUAL the crafts

仲田さんは2016年に出身地である飯田市で「RITUAL the crafts」の活動を始め、現在は飯田市にあるアトリエを拠点に、全国各地の百貨店やイベント会場でポップアップショップや展示を開催しています。

RITUAL the crafts

水引を使ったアクセサリーは最近少なくありませんが、水引を紐のような要素で使うことが一般的かと思います。「RITUAL the crafts」の作品は、水引を並べた平面のパーツで作られており、これまでの水引の印象をガラリと変えるもので、衝撃を受けました。

インタビューでは仲田さんが水引を用いた活動をはじめたきっかけやアイデアのインスピレーション、「RITUAL the crafts」の作品づくりについてなど、お話しいただきました。

一本の水引が面となり、きれいなピースができたことに面白さを感じた。

――まずは水引を使ったアクセサリーや美術品づくりをはじめたきっかけについて教えてください。

仲田慎吾さん(以下、仲田さん):僕の出身・長野県飯田市は水引産業の町で、もともと水引の存在は知っていましたが、もともとアクセサリーをやろうとか、水引を使おうとか考えていなくて、偶然できた感じなんです。
大学時代は東京の美大で版画をはじめとした様々な技法で作品作りをしていたのですが、あるきっかけで地元に戻って暮らすことになりました。妻が長野出身ではないので水引が新鮮だったようで、面白がって遊んでいて、なんとなく並べたりしていると、小さくてきれいなピースができて。もともと一本の水引だったものが面に変わったことが面白くて、ピースをいくつも作って並べたり離したりしていく中で、ふとこれを何か形にしたら面白いんじゃないかと思ったんです。それを妻と相談しながら試行錯誤していくうちに、アクセサリーづくりという目的ができてきました。

RITUAL the crafts

――なんとなく並べるところからアクセサリーづくりに辿りついたってすごいですね!

仲田さん:僕はもともとずっと美術をやってきたので、その延長線上で水引でも自分の感覚を出せると感じました。
妻には今「RITUAL the crafts」の紙もののビジュアルデザインをメインでやってもらっていて、アクセサリーに関してビジュアルは僕が考えていますが、今でも実際に着ける側として、付け心地や使う金属のパーツについてなど女性的な目線でアドバイスをもらって参考にしています。

――他にも水引をつかったアート作品はありますが、仲田さんは水引を画材に見立てて表現しているところに独自性を感じます。
RITUAL the crafts

仲田さん:一応こういった方法はもともとあるんですけど、僕はそれをやろうとしたわけではなく、一本の水引を抽象的に捉えるところからスタートしています。どんな物にも色んな見方があって、その人の経験によって色んな見方ができると思うんです。
そもそも水引は、飛鳥時代に大陸からの献上品に結わえてあった紅白の紐を日本人が献上品に付ける飾りとしてとらえ、今日の文化的な形式に発展したという一説があります。現在は冠婚葬祭の場やアクセサリーで使われていて、ビジュアルのイメージで和や伝統を感じることもできますが、かつて日本人が水引に意味づけをしたように、僕個人が水引に意味づけをして作品を作ってみても良いんじゃないかと思っています。

――植物をモチーフにした作品も素敵だなぁと思います。
RITUAL the crafts

仲田さん:植物の作品は突発的なアイデアから生まれたもので、植物が欲しいなぁと思った時、木を植物の形に糸のこで切ってそこに水引を貼ってみようと思ったんです。突発的なアイデアではありますが、もともと植物の絵を描いたり図形的な細かい描写の絵を描いたりしていたので、その感覚をそのまま水引で表現しました。

水引の新しい一面を知ってもらうことにつなげたい。

RITUAL the crafts

――作品では様々な色の水引を使っていらっしゃいますよね。水引ってこんなカラーもあるんだ!とびっくりします。
RITUAL the crafts

仲田さん:僕が使っている水引は、糸が巻いてあるマットなものと光沢があるものの2種類を使用しています。カラフルな水引は最近だとアクセサリー作りに使う人も増えてきましたが、基本的には結納品に使われるもので使い道は限られています。「RITUAL the crafts」の活動をしていくことが、水引にも色んなものがあるんだということを知ってもらうきっかけにもなったらいいなぁと思います。

――ひとつの作品でたくさんのカラーを使っていますが、作品として纏まっていて凄いですよね。色の組み合わせはあらかじめ決めているのですか?

仲田さん:色はこうして、形をこうして、とか先に細かく決めていくっていうことはないです。感覚ではありますが、それはやっぱり僕が美術をやってきていたので、色の配合を意識することが常になっていたからだと思います。
ただ、アウトラインはぼんやりあったりします。基本的には絵を描くのと同じで、なんとなく全体のイメージがある時はそれを実際に再現していくんですけど、あるパーツからどんどん広がっていってできる時もあります。

RITUAL the crafts

例えばこれは自分の中の重要な要素がたくさん出ている作品なんですけど、山とか聖母とか僕の好きないくつかの物の形になんとなく見えるよう、抽象的で曖昧な部分を表現して作りました。水引のマット感と光沢の比率もポイントです。

――作品についてのお話を聞いていて、今まで仲田さんがやってきた美術と偶然が掛け合わさって、「RITUAL the crafts」の今があるだと感じました。

仲田さん:そうですね。自分が飯田という場所に生まれ小さい頃から水引を知っていたということ、そして一時期パーツを組み合わせて大きなものを作るコラージュやタイルにはまっていたことも「RITUAL the crafts」に大きな影響を与えていると思います。
小さなピースが増えていくことで大きな形ができて、小さなピースにも、そこから生まれた大きな形にもそれぞれ異なる意味があるっていうことが好きで、これは自分の作品作りの根底にもあると感じています。「RITUAL the crafts」の作品も一本の水引の線としての意味とそれを重ねたことでできたピースとしての意味があります。

モノが生まれた時に持っていた意味を、違う見方で見てみる

RITUAL the crafts

――作品作りのインスピレーションはどこから生まれてくるのでしょうか?

仲田さん:インスピレーションと言えるかわかりませんが、考え方・捉え方を大切にしています。あるモノがあって、それが必ずしも同じ意味じゃないというか。たとえばテーブルがあるとして、これはテーブルだけど叩けば音を出すこともできるし、人によっては楽器と考えるかもしれないじゃないですか。
そのモノがうまれたとき、意味を持ってうまれたけれど意味がないかもしれないっていう。
自分はわりと抽象的な考え方をする人間なので、水引を見た時も水引として見ていなかったんだと思うんです。
アフリカでビーズを作ってなんでも作る人たちがいて、その人たちは小さなビーズで日常品やアクセサリー、それに仮面とかも作ったりするんですけど、その人たちの感覚に近いのかもしれません。

いつも新しいことにチャレンジしたい。楽しみながら続けていく。

RITUAL the crafts

――活動をはじめた当初から今に至るまでに、作風の変化はありますか?

仲田さん:作風はかなり変わっていますね。僕は今までやったことがあることや見たことがある感じが好きではなくて、いつも新しいことがしたいんです。「RITUAL the crafts」の作品は水引のもともとある限られた色や素材の中で作っていますが、組み合わせ方はたくさんあるので、活動していくなかで新しく発見したことや思い付きを次に活かしたりしながら作品づくりをしています。最近は水引と何かを色々組み合わせてみるのが面白くて、例えば今は金属との組み合わせを色々探っているところです。

――新しいことといえば、インスタを拝見すると動画や音楽を使った投稿もしていらっしゃいますよね。

仲田さん:やっぱり自分が楽しみながら活動したいんです。水引を使って表現していくうえで遊び感覚で音や映像を使ってみても良いと思っているので、Instagramに動画を投稿してみました。他にも壺が好きだからという理由で壺の形をした作品を作っていくなかで、一輪挿しのようなプロダクトを生み出してみたり、とにかく色々やっています。
「RITUAL the crafts」は、あまりデザイン、アート、工芸って限定せずに、自分が作りたいものや思い浮かんだものを制作して、後で位置付けしていくことが多いです。これまでに色んな作品ができてきましたが、それに捕らわれることなくとにかく自分が自由に作ることを今後も大切にして、自分も見ている人も楽しい作品を作り続けたいです。

――最後に今後仲田さんがやってみたいことや目標について教えてください。

仲田さん:大型の作品を作ってみたいなぁと思っています。これまで作った最大の作品は縦140cm×横160cmのものですが、もっと大きく壁一面のものとか作ってみたいです。あと立体の作品を並べてみたり、金属を使ったアクセサリーも新しいものを色々作ってみたいです。「RITUAL the crafts」とは関係ないですが陶芸にも興味があって、とにかく作ることが好きなので一日中制作をしていたいです。

仲田さんの作品作りに対する強い気持ちと独創的なアイデアで、今後どんな作品が作られていくのかとても楽しみです!
「RITUAL the crafts」は2018年11月30日(金)~12月2日(日)の三日間開催される「New Jewelry 2018」に出展するそう。ぜひ足を運んでみてくださいね。

    仲田慎吾(なかたしんご)

    長野県飯田市出身。多摩美術大学、東京藝術大学大学院美術学部卒業。
    2016年に出身地である飯田市に移住し、水引美術RITUAL the craftsの活動を開始する。

    RITUAL the crafts

    URL:https://www.ritual-dolmen.com/

    New Jewelry 2018

    開催日時:
    2018年11月30日(金) 16:00-20:00
    2018年12月1日(土) 11:00-20:00
    2018年12月2日(日) 11:00-19:00
    会場:3331 Arts Chiyoda メインギャラリー
    東京都千代田区外神田6丁目11-14
    URL:http://newjewelry.jp/nj2018/