CREATOR クリエイティブなヒト
絵描き・小澤真弓さんインタビュー|「いい意味で“事故が起こる画材”が好き」新しい画材へチャレンジしながら描くイラストレーション
今回お話を伺ったのは、絵描きの小澤真弓さんです。
雑誌、書籍の挿絵やWEBサイトのイラストビジュアルなどで活躍中の小澤さん。やわらかくて繊細で、ハッとするようなタッチのイラストは女性たちの心を掴む魅力がたくさん詰まっています。
今回は、そんな小澤さんならではの作品制作の裏側から、絵描きになられたきっかけまで、いろいろとお話を伺いました。
絵を描くことが趣味から仕事へと変わった瞬間。
箱庭:まず絵描きになられたきっかけを教えてください。
小澤真弓さん(以下、小澤さん):もともとは広告が好きで美術の専門学校に通っていました。だけど、在学中にポスターやチラシのように消費されていく広告から、形に残る書籍のデザインに興味を持ち始め、卒業する頃には何になりたいのか良くわからなくなっていました(笑)。
絵を描くことは好きだったので、友達に送るバースデーカードみたいなものを趣味で作ったりはしていましたが、そういうことと制作をするっていうことが、なかなかイコールにならなかったんです。
箱庭:そうなんですね。そこからどのように絵描きへの道へつながっていくでしょうか?
小澤さん:新聞ってよく一面に季節ごとの写真が載るじゃないですか。花や、景色など。それを好きで集めていたんですが、ある日雲の形がめずらしい富士山の写真が載っていて。なぜかそれを絵に描こうと思って描いたら、はじめて描きたいものとイコールなものが描けたんですよ。その瞬間から、いろんなものを描きたい、描ける!と思って絵を描き始めました。
小澤さんが新聞広告を見て書いたという富士山のイラスト。
小澤さん:書き溜めた絵を友人に見せているうちに、そんなに描いているんだったらコンペに出せば?と言われて。 その言葉がきっかけで、はじめて出したのが雑誌『イラストレーション』の誌上コンペ、ザ・チョイスだったんですが、1回目か2回目に入選できて。それがすごく嬉しくて、描くことに自信がつきました。そのあとにHBギャラリーのファイルコンペに出して大賞をいただいたんですよ。そこで初めて個展をしてから、いろんな方に見てもらう機会が増え、そこからイラストの仕事というものがいただけるようになりました。その時はまだイラストレーションという意識はしていなかったのですが、そこからちょっとずつ、絵を仕事にしていけるのかなって思ったのが絵描きになったきっかけです。
箱庭:新聞広告がきっかけだったんですね!それが専門学校卒業からいつくらいですか?
小澤さん:卒業から5年くらい、25歳の時に大賞をいただきました。それまではいろんなアルバイトとかしていました。
自分も飽きないように、新しい画材にチャレンジ
箱庭:先ほど山の絵を見せていただきましたが、制作を始めた当初はボールペンで描いていたのでしょうか?
小澤さん:そうですね。モノクロで描くことが多かったです。バキバキとしたタッチで。だから男性が描いてるのかなってよく言われていました。
箱庭:そこから今描いているような、インクの画材を使い始めたきっかけはあるのでしょうか?
小澤さん:ひとつの画材を使っていると自分が飽きちゃうので(笑)。油彩を描いたことはないんですが、画材屋さんに行って、油彩売り場でよくわからない道具を買って試すみたいなことをしています。正解がわからないまま使ったほうが面白いものが描けるかなって思って、自分が飽きないように工夫をしてます。インクを使い始めたきっかけは、色にチャレンジしてみようと思ったことです。もともと色を使うのが苦手だったんですが、ハッとするインクの鮮やかな色にチャレンジしようと思って使いはじめました。
箱庭:なるほど。コーヒーを画材に使用しているのも同じ理由でしょうか?
小澤さん:自分では手に負えない部分がちょっと残っているものが好きなんですよね。描いてみたら思ったより滲んじゃったとか、紙がぐちゃぐちゃになっちゃったとか。コーヒーは今ではだいぶ調整はできるようになったんですけど、いい意味で事故が起こる画材が好きなんです。
手に負えない“事故が起こる画材”という表現がとても新鮮で、小澤さんのハッとするタッチはこういうところから作られているんだなぁと改めて感じました!
子どもができて、より目標が高くなった気がする
箱庭:今はどういったお仕事が多いでしょうか?
小澤さん:元々は書籍が多かったですが、最近はWEBのイメージカットやファッションの仕事が増えてきました。書籍だと具象の世界なので、何々を描いてくださいという依頼が多いんですけど、ファッションの世界だと表現が自由なものが多いです。方向性が決まっているものを描くものもちろん好きなんですけど、自分の表現に傾いているお仕事も楽しいです。
箱庭:最近お子さんが生まれたとのことですが、お仕事との両立は大変ではないですか?
小澤さん:今3ヶ月になる娘がいますが、やっぱり制作できる時間はぐっと減りました。なかなか集中してやれないので、隙を見て制作しています。
箱庭:お子さんが出来て変わられたことはありますか?
小澤さん:時間はなくなったんですけど、もうちょっとやったらもっとよくなるっていう最後の悪あがきが増えました。ちょっと目標が高くなった気がします。
箱庭:それはなぜでしょう?
小澤さん:こういう状況だからこそ、いいものをちゃんと仕上げたいっていう気持ちが高まったのかもしれないです。ちょっとのことで諦めなくなりました。
箱庭:お子さんが出来て、強くなったんですね!なんだか素敵です。
それでは、最後に今後の制作でやってみたいことを教えてください。
小澤さん:文字の表現をもっとやってみたいです。たまにご依頼があって書くことはあるんですけど、もっと文字で遊べる気がするので、文字を描くってことでいろいろ挑戦したいです。
箱庭:見てみたいです!今後も活躍を楽しみにしています。
小澤さん、ありがとうございました。
趣味から絵描きになるまでの道のりや画材選びなど、クリエーターとしての裏話とともに、母になってからの物作りのお話はきっと読者のみなさんも参考になるのではないでしょうか?
また、8月から開催中の「届ける、乳酸菌てがみ舎」キャンペーンの第5弾となる箱庭監修の便箋デザインを小澤さんにお願いしました!便箋デザインの制作裏話や、制作に使っている画材など今回のインタビューとはまた違った視点でお話を伺ったので、ぜひそのインタビュー記事も楽しみにしてくださいね〜!
-
◆小澤真弓
painter / illustratorpainter
1984年 東京生まれ
2008年 絵描きとして活動をはじめる
受賞歴: 第157回ザ・チョイス 入選 、HB FILECOMPE VOL.19 副田高行賞 大賞
WEBサイト: http://approach894.com/
Instagram:https://www.instagram.com/ozawa_mayumi/