CREATOR クリエイティブなヒト
コラージュ作家・松下悠見さんインタビュー│見る人の心をひきつける独創的な作品制作の裏側
箱庭編集部のみさきです。
今回お話を伺ったのは、コラージュ作家の松下悠見さんです。
松下さんは5年間のインテリアデザイン事務所勤務を経て、現在はフリーランスとしてコラージュ作家と空間デザイナーという二つの肩書でご活躍中の方です。
コラージュ作家としては国内の展示に多数出展する他、2016年にはロンドンでも個展を開催。ご自身のコラージュを物販に落とし込んだ作品づくりや動画の制作など、コラージュを用いた表現の可能性を押し広げる取り組みにも力を注いでいらっしゃいます。
(松下悠見さん)
(“A disorganized form -Hands×Flower-”)
(“Collage Diary”)
西洋アンティークのイメージが漂う松下さんの作品は、非常に美しく、それでいて独創的で、見る人の心に強い印象を与えます。この不思議で魅力的な世界はいったいどうやって生み出されているのでしょうか。
インタビューでは松下さんがコラージュ制作をはじめたきっかけや、これまでの活動、作品づくりの裏側などお話しいただきました。松下さんのお話は、クリエイターとして活動している方にとって何かヒントになるのではないかと思います。クリエイターではない方も、これを機にぜひ松下さんの作品に興味を持っていただけると嬉しいです!
空間デザインとコラージュ作家、二足のわらじ。
――まずはコラージュ作品を作り始めたきっかけを教えてください。
松下悠見さん(以下、松下さん):もともと専門学校でスペースデザインを学んでいたこともあり、卒業後はインテリアのデザイン事務所で図面を引いたりデザインを考えたりする仕事をしていました。
個人で作品づくりをはじめたのは2013年頃のことです。自分でも手を動かして何か作品づくりをしようと、最初はイラストを描いたり、昔母が使っていたフィルムカメラで写真を撮ったりしていましたが、写真が増えていくうちにそれを使ってコラージュ作品を作ってみようと思ったんです。
(”Frame of Gray”)
2016年には、5年ほど勤めたデザイン事務所を退職して観光ビザでロンドンへ行き、個展を開催しました。
今は、東京で週に3日デザイン事務所で働きながら、フリーランスとしてお店のディスプレイづくりなどのお仕事を受けつつ、コラージュ作家として活動しています。
――会社を退職してロンドンで個展を開くとは、すごいチャレンジですね。
松下さん:はい。初めての個展がロンドンでした。専門学校の時に参加した一か月の体験プログラムがきっかけでロンドンの街や建築がとても気に入って、卒業後はロンドンで活動しようと思っていました。ただビザを手に入れるための抽選になかなか当たらなくて…。でも一度ロンドンで挑戦してみたかったんです。
――挑戦してみてどうでしたか?
松下さん:作品の良いところも悪いところもきちんと感想として伝えてくださるお客さんが多く、自分自身や作品について気付くことがたくさんありました。名前も知らなかったであろう私の作品を見て気に入って購入してくださった方もいて、有名無名にかかわらず、作品そのものを評価してもらえたことがとても嬉しかったです。
さまざまな素材や手法を用いて、自分ならではのコラージュ表現を探求
――日本に戻られてからはどういった活動をしてきたのでしょうか。
松下さん:制作をしながら展示を個人やグループで開いたり、ポスターを手がけたりしてきました。素材や手法を変えて色んな作品づくりをしてみたいなぁと思っていて、昨年の夏に参加したグループ展では、以前からやってみたかったコラージュをスカーフやトートバッグに落とし込んだ作品づくりもしてみました。
(グループ展「halfway」に並んだコラージュを落とし込んだ作品)
――昨年のグループ展「halfway」には私もお伺いしましたが、作品もグッズもとても素敵でした。いくつかの作品が繋がっているかのように並んでいるものも魅力的ですよね。
(グループ展「halfway」に並んだ“Collage Diary”)
松下さん:比較的小さな画の中で作品を作るのが好きなのと、単純に大きなコラージュ作品を作るにはその分のスペースが必要だったということもあり、作品をピースのように繋げることで大きくしてみました。もともと完成形をイメージして作り進めるのではなく、一枚ずつ考えて繋げ、広げていった感じです。
――松下さんは静止画だけでなく動画も作っていらっしゃいますよね。
(”TANA” 全編視聴:https://vimeo.com/281319312)
松下さん:そうなんです。静止画を作っていくうちに、それを動画で動かしてみたいと思うようになって、今は動画の作品づくりもしています。以前はPhotoshopでGIF動画を作成していて、最近動画専用ソフトを使って作り始めました。
この作品は友人の展示のオープニングレセプション用に作らせていただいた動画で、後から音楽をつけていただきました。
(動画作成時に紙の上に素材を並べたもの)
――アナログで作ったものを一枚ずつ取り込んでいるんでしょうか?
松下さん:そうなんです。Photoshop上で動かしたりしたりもしますが、基本的には紙の上にコラージュ素材を並べてPCに取り込んで、また動かして取り込んでの繰り返しで。コマ撮りで繋げて動画にしたのですが、はじめて使用したソフトだったこともあってかなり大変で、一秒作るのにこんなに時間がかかるんだ!って思いました(笑)。
最近は音楽にあわせて、動画作品を作ることにも挑戦しています。
(”VISTETE” 全編視聴:https://vimeo.com/304998824)
――お話を聞いていて、コラージュを軸に色んなチャレンジをしていらっしゃるなぁと思いました。
松下さん:コラージュはイラストなどと違ってゼロから作品を作るわけではないので、ゼロから作れる人にどこか羨ましさみたいなものがあるんだと思います。だからこそ自分だから作れるコラージュ作品を作れるよう、色々試しています。
松下さん流、コラージュ制作の裏側
――コラージュってどこから制作をはじめているんだろう…っていつも見ていて思うんですが、完成のイメージを持ってつくりはじめるんでしょうか?
松下さん:はじめから完成のイメージがあるわけではなく、実際に手を動かして素材を組み合わせていくことで出来上がっていく感じです。ぴたっとはまる表現ができた時はとても嬉しいですね。
(松下さんが集めた素材の一部)
――作品では色んな素材を使っていらっしゃいますよね。
松下さん:そうですね。自分で撮ったフィルム写真や雑誌、お菓子の包み紙など普段から色んな素材を集めていて、それを使って制作しています。
作品を作っていて自分がイメージしている素材が手元にないと大変なので、古本屋や海外のマーケットで雑誌をパラパラと見て好きなイラストや写真が一枚でもあれば買うようにしています。
――作品をつくる上でこだわりはありますか?
(松下さんが普段使っているフィルムカメラと撮影した写真)
松下さん:最低でも一枚はフィルム写真を入れることにしています。
フィルム写真は母が高校生の時にアルバイト代で買ったフィルムカメラを使って撮影しています。日頃から撮影しているというよりは、素材用に撮るぞと思った時に撮影することが多いですね。撮った写真を見返してみると、花の写真が多いなぁとかその時自分が何にフォーカスしていたのか気付かされるんです。
自分の興味や作風は変わっていくもの。作風に縛られない作品づくりがしたい。
――初期の頃から今に至るまでに作風の変化はありますか?
(初期の作品)
松下さん:はじめた頃の作品は人がモチーフになっているものが多く、だんだんと今のような抽象的なものになっていきました。その時々によって着たい服が変わったりするのと同じように、自分の興味や作りたい作風は変わっていくものだと思うので、作風にはあまり縛られないようにしているんです。新しいことにどんどんチャレンジしていきたいし、変化を楽しんでいきたいです。
――最後に今後の目標を教えてください。
松下さん:色々ありますが、とにかく色んな手法でコラージュ作品を作っていきたいです。あとはこれまでの作品をまとめた作品集を作ってみたいなぁと思います。
松下さん、ありがとうございました!
ご自身のコラージュ表現の可能性を押し広げようと日々取り組む松下さんが、今後どんな作品を手がけていくのかとっても楽しみです。
サイトやInstagramには、これまでの作品がアップされています。他にも素敵な作品がたくさんあるので、気になった方はぜひチェックしてみてくださいね。
松下悠見
Collage Artist / Designer (for space)
1987年生まれ。桑沢デザイン研究所スペースデザインコース卒業
2010~2015年インテリアデザイン事務所を経て、現在はフリーランスとして活動。コラージュ制作と空間デザインを行う。
WEBサイト:http://www.yumimatsushita.com/
Instagram:https://www.instagram.com/yumimatsushita/