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箱庭編集部のみさきです。
今回お話を伺ったのは、クリエイターのhaseさんです。紙を用いた作品づくりやロゴのデザイン、ワークショップなど幅広く活動されています。

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haseさんの作品は、アンティークのようにノスタルジックで上品でありながら、親しみも感じる雰囲気が特徴的で、質感や色合いがとっても素敵なんです。

作品を見てずっと気になっていたクリエイターさんですが、haseさんにはもう一つ気になる点が…!プロフィールに、デザイナーやイラストレーターなどの肩書がなく、“紙にまつわる事”とだけ記されているんです。

紙ものが好きな箱庭読者にはたまらない、素敵な作品を手がけていらっしゃる方なので、ご存知なかった方もこれを機にぜひチェックしていただけると嬉しいです!

自分がやることであればどんなことも、自分の活動だと考えた。

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――haseさんはご自身の活動を“紙にまつわる事”と掲げていますが、肩書はないんですよね…?

haseさん肩書は決めていなくて、「紙にまつわることだったらなんでも興味あります」と曖昧にお伝えしています。デザイナーとかイラストレーターとか、肩書を決めなきゃいけないのかなぁなんて思っていた時期もありますが、別に何者でもいいんじゃないか、私がやることであればイラストでもデザインでもそれはすべて私の活動だ、と考えたらすごく楽になりました。

――それまでは、デザイナーやイラストレーターとして活動していたんですか?

haseさん全然違う仕事をしながらイラストレーターとして展示会をしたり、たまにイラストを応募したりしていました。
美術系の高校に通った後、服飾の専門学校に進学したので服のパターンなど描いていたんですが、服のデザインよりも絵を描く方が好きだな〜と思うようになって、イラストレーターになりたかったんです。だけど、イラストの修行を何かしていたわけではなかったので、活動を続ける中でイラストレーターとして仕事をしていくのは違うのかもと思い始めて…。その時に肩書をとって、自分がやりたいことをやろうって考えて、今のような活動になっていった感じです。

――そうだったんですね。フリーになったのもそのタイミングですか?

haseさん文字を描いたり箱を作ったり、今のような紙のことで生活できるようになったのは2,3年前くらいですね。私はつくることが好きで、いまの活動一本でやろうと思っていたわけでもなく、目標は続けることだったんです。だから何をしても、作っていければいいやって思っていました。今の活動だけでやっていける目処もたっていなかったのですが、 32歳になった時に自分の時間の使い方を見直そうと思い仕事を辞めてみたら、そのタイミングでお仕事をたくさんいただけるようになりました。

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――紙にまつわる事としたのはなぜでしょうか?

haseさん小さい頃から紙に絵を描いていて、身近な存在だったからです。あと革などと違い、紙は簡単かつ気軽に破ったり染めたり、ぐちゃぐちゃに丸めて伸ばしたり、色を塗って消してみたり、いろいろな加工をすることができるところが好きなんです。
真っ白なキャンバスとか高い紙とか緊張して使えないので、梱包材の紙など書くためのものではない業務的な紙が特に好きです。

最初からシンプルであることを目指さない。そぎ落とすことでシンプルな作品にする。

――現在は主にどんな活動をしているのでしょうか?

haseさんデザインやワークショップのほか、グループ展に出展したり、イベントに出展してつくったものを販売したり。どれも同じくらいの割合でしていますね。

――例えばこういった箱もご自身でつくっていらっしゃるんですか?
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haseさんそうです。箱は工場でつくるとまったく同じサイズのものができあがるけれど、私は色んなサイズがある方が好きなので、時間がかかっても自分でつくりたいなぁという思いがあります。

―haseさんの作品は文字のニュアンスやシンプルなデザインがとても素敵ですよね。
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haseさん文字はシンプルでさっと描いているようにみえて、実はかなりの数を書いているんです。それを遠くから見たり、時間をおいてみたりしながら絞ってつくっています。

――シンプルなものにするためにそぎ落とす行為を結構していらっしゃるんですね。

haseさん最初からシンプルなものを目指してつくったものと、色々あってそこからそぎ落としてシンプルになったもの、同じシンプルでもできるものが違うのかなぁと思うんです。

――「HAND-WRITTEN SHOWCASE」(手描きアーティストの祭典)では、たくさんの英字で一つのアルファベットをつくっていて、面白いアイデアだなぁと思いました。
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haseさんDMをつくるとき、私の担当は「O」だったんですけど、私はOを書くのが苦手で…。AからZの文字でOを書けば、Oだけの勝負にならないって思ったんです。

――苦手をカバーするために考えたアイデアだったんですね。

haseさん苦手なものを解決するためのアイデアを考えることは、結構あります。作品をつくっていて、たとえば失敗してはがした跡とかも良いって言っていただけることがあって。失敗がきっかけで良くなることもあるのかも、と思います。

手を動かし、さまざまな加工を施しながら心地よいサイズやデザインを探る

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――色や質感が特徴的ですが、普段どのようにしてアイデアを形にしているのでしょうか?

haseさんこういうものを作ろう、だからこういうものが必要だ、という作り方ではなく、もともと好きで持っていた紙の素材を折ってみたりしながら、自分が心地よいサイズやデザインを探っています。

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これは私が普段文字を書く時に使っている画材の一部ですが、ペン置きを入れる箱も自分でつくりました。

――ワークショップでも箱やアルバムなど、色々作っていらっしゃいますよね。いつも楽しそうだなぁと思っていました。

haseさんワークショップの内容は自分で色々考えているのですが、つくって終わりではなく、暮らしの中で実際に使って育ててもらいたいので、完成したものに満足してもらうにはどうしたらいいのか、いつも考えています。
ワークショップは、参加して自分でつくるという経験をするから、少し壊れても「ここを糊でつければ直る」と、自分で直し方が分かるところがいいですよね。

(表紙に文字を描きアレンジしてつくる 紙製ファイルブック)
(表紙に文字を描きアレンジしてつくる 紙製ファイルブック)

インスピレーションの源は、砂糖のパッケージ!?

――作品づくりのインスピレーションはどこから生まれてくるのでしょうか?

haseさん看板など、日常で目に入ったものの空間や余白の使い方を見ています。あとは砂糖のパッケージですね。

――haseさんは砂糖のパッケージコレクターでもあるんですよね。

(haseさんの砂糖のパッケージ専用アカウント)
(haseさんの砂糖のパッケージ専用アカウント)

haseさんそうなんです。15年ほど前にオーストリアへ好きな画家の絵を観に行った時、いろんな砂糖のパッケージに出会ったことがきっかけで集め始め、今1000個以上集まっています。普段アイデアを考える時は、砂糖のパッケージの紙質やデザイン、サイズ感や色味などを一個一個じっくり眺めていますね。

――砂糖のパッケージ収集が紙にまつわることに大きな影響を与えているとは、意外でとても面白いです。集めた砂糖はどんなふうに保管しているんですか?

(飛行機シリーズの一部)
(飛行機シリーズの一部)

haseさん最初はスクラップブックとかを作っていましたが、いまは駄菓子屋のおせんべいが入っているようなガラスの瓶にいれています。瓶ごとに飛行機でもらったシリーズ、カフェでもらったシリーズ、と色々わけているのですが、私はいろんな国の言語が書かれている飛行機シリーズが特に好きです。

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数年前には砂糖と自分の作品を組み合わせた個展を開き、こんな風にこれまでに集めたパッケージを写真と文字でまとめて展示してみたこともあります。

――最後に今後やってみたいことや目標を教えてください。

haseさん砂糖に特化した何かがしたいです(笑)。以前個展でつくったものをもっと進化させて、図鑑にしてみたいたいなぁと思います。

――今後のご活動もとても楽しみです。興味深いお話をありがとうございました!

最後にお知らせです。haseさんの企画展「イメージの欠片」が、2019年6月3日~6月9日に埼玉の木末で開催されます。
その他愛知でのワークショップ開催や紙博への出展など、今後も色々予定しているそうなので、気になった方はInstagramをフォローしてチェックしてみてくださいね。