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あまのさくやの「彫る」×「掘る」インタビュー|詩人・経済分析者 George Nelsonさん

あまのさくやの「彫る」×「掘る」インタビュー|詩人・経済分析者 George Nelsonさん

こんにちは。あまのさくやです。
私は『はんこと言葉で物語をつづる』をコンセプトに、はんこを『彫る』ことと、インタビューをしてその人について『掘る』ことを仕事にしています。

仕事や活動の場に、日本を選んだ外国人クリエイター。海外から日本にきて、仕事をする。その経緯には様々な物語が凝縮されているはず。そんな外国人クリエイターを『彫る』✖️『掘る』インタビュー、今回お話を聞いたのは、ニュージーランド出身のジョージ・ネルソン

“俳句”を書く外国人、ジョージ・ネルソン。

ジョージネルソン
はじめて彼の作品に触れたのは2017年のTOKYO ART BOOK FAIRでした。彼のつくった”俳句集“を手にとって、私はなんとも言えないこの脱力感のある文字と絵、でもまっすぐな気持ちで書かれた言葉に惹かれました。

俳句
しかも彼のプロフィールには『経済分析者』と『詩人』。また、モデルの仕事をしていたり、『テクノバカ』(?)とも書いてありました。

ジョージの俳句
まず、一見してゆるふわな彼の“俳句集”と本人の雰囲気から…『経済分析者』?
対面で話してみると、流暢に日本語を話す。しかしどことなく完璧でない日本語、『ジョージ語』を操る彼は、いったいどんな人なんだろう…どんな制作をしているのだろうか…?などが気になって、改めて話を聞いてみることに。するとジョージの意外すぎる過去が次々と飛び出してきました。
(本記事では、ときどき不自然な日本語が出てきますが、『ジョージ語』ですのでご容赦ください)

授業中に暇があったから、『5・7・5』を書き始めた

ーそもそもなぜ”俳句”をはじめたんですか?
日本語学校に入って数ヶ月経った頃、少し日本語もできるようになってきて、授業が簡単で少し暇になったんです。そのとき日本語でヒップホップの歌詞を書こうと思いついたんだけど、ダサくなっちゃって…ヒップホップをやめて、5・7・5のHaikuをつくってみたんです。これがはじめて書いたHaiku。

俳句
ーたしかにヒップホップっぽくはないですね(笑)。でもなぜ5・7・5に?
Haikuって、世界でもとても有名なんです。ニュージーランドでも、高校で勉強しました。だからみんな、5・7・5の詩をHaikuと呼ぶ。でも季語までは知らなくて、それは書いたあとに知りました(笑)。今は自分の書くものを、”Haiku”じゃなくて”心のスケッチ”って呼んでるんだけどね。

ー英語でもHaikuを書けるんですか?
書けますよ!一音節ごとで5・7・5にすればいいんです。例えば英語でHaikuを書くとしたら、「I・Went・to・the・Park」と、音節ごとに区切るので、どうしても長くなる。日本語では<むずかしい>は5文字だけど、英語だと、中国語でも<難>の一音節で終わり。だから英語と中国語のほうがたくさん言葉が入る。日本語が珍しくて、あまり言葉が入らない。
僕は日本語とか他の言語で5・7・5の詩書くのが好きなんです。台湾に住んでいたときも中国語で書いていたし。Haikuは多分台湾にはないけど、自分のスタイルだから。それも僕の中国語の勉強の仕方の一つになっていましたね。これから韓国語も勉強したいから、今度はまた韓国語で書こうかなと思ってます!

ー5・7・5で詩を書くのが自分の表現でもあり、言語の練習でもあるんですね。今は日本に一時滞在中?
去年の12月から北海道でワーキングホリデーのために来日してから数ヶ月滞在して、一度オーストラリアに帰国して、また6月から戻ってきた。去年はニュージーランドの会社で仕事をしていたんだけど、ちょうどクリスマス時期はクライアントも休みがあるし、僕は北海道のスキー場で働きながらスノーボードを滑ろう!と思ったんです。でも北海道で肩を骨折しちゃって、予定が崩れた(笑)。僕の仕事はパソコンがあればどこでもできるから、入院したときにも働いてましたけどね(笑)。

ジョージネルソン北海道
ー普段何してるかと思ったら、仕事してるんですね!(笑)
よく言われる(笑)。仕事としては、経済分析のコンサルタントとして働いています。ニュージーランドの会社に所属しているけれど、職場に行かなくてもちゃんと働けばどこでも仕事やっていいよって言ってくれる社長なんです。超現代だよね!だからニュージーランドでも新宿でも、世界のどこでも分析の仕事をして、その給料で生活して、本も出版してます!あとはテクノパーティーでも使っちゃいます(笑)。

ニュージーランドの海辺の街で、のびのびと育った

ージョージはニュージーランド出身?
ニュージーランドのホークスベイというところに生まれて、大学からはウェリントンという都市に引っ越した。ホークスベイは海の近くの街で、高校生の頃は何もなくてつまらない場所と思ってたんだけど、一度出た後に帰ってきたら、天気もいいし、海が綺麗だし、実はいい地元だ!って気がつきました。

ニュージーランド

アジアでの国際ビジネスの可能性を感じた

ーそもそもなぜ日本に?
元々は日本に全然興味なかったんです。姉もフランスに留学していたし、僕も交換留学に行きたいとは思っていて。大学一年のとき、バリ島でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が開かれたんだ。そのとき成績も良かったし、大学から推薦されて、代表としてAPECに参加したんです。安倍首相もいたし、ニュージーランドの首相とも乾杯したよ(笑)。そのときに、やっぱりアジアすごい!と感動して、ビジネスの可能性をすごく感じて。

ーAPECに出席!?
ニュージーランドって、アジア太平洋なんです。ヨーロッパよりも、僕たちの近隣諸国といえばアジアだし、国際ビジネスをやるならアジアだ!とそのとき気が付いて、国際ビジネスも専攻することにした。交換留学はアジアに行こうと決めて、アジアだったら東京が一番魅力的だなぁと思ったんです。

APECに出席
ービジネス的な発想から日本を選んだ?
そうそう。真面目でしょう(笑)。日本のアニメとかもあまり興味ないんだよ。多分、日本語を話す外国人はアニメから入る人が多いと思うんだけど、僕はちょっとちゃいます(笑)。僕の日本語はビジネスというよりもストリート日本語だけど、サラリーマンたちと飲みに行ったら面白い話できる自信あります!(笑)

はじめはつらかった、日本の生活

ーはじめての日本はどうでしたか?
はじめは、全然喋れない状態で日本に来て…大変でした!東京に来てすぐのときは楽しかったんだけど……そこから数ヶ月、すごく落ち込んだんです。友達いないし、日本語話せないし、お金はなくなってきたし……とか(笑)。ここで何やってるんだろうって思って、ネガティブになって。そのときは毎日ニュージーランド行きの飛行機調べてた。でも帰っちゃったら、失敗、もう日本はダメだった、ってことになっちゃうから、帰れないんです。
そのとき、ボランティアをしたら、充実した生活を思い出せるかなと期待して、フィリピンに行ったの。

ー落ち込んでいた時期もあったんですね…。そして行動がちょっと唐突(笑)。
でもボランティアをしても、思っていたよりも充実した気持ちにならなくて…。でもそのうちフィリピンで現地の友達を作って、いろんな場所連れてってもらうようになった。現地のタガログ語も少し勉強して話したら、みんな喜んでくれて。そのときすごいハッピーな気持ちになって、言語としても、ソーシャルな意味でも自分らしくいる自信を見つけられたというか。そのあとの日本に帰ってから、まわりの日本人とも話せるようになってきて。買い物でも可愛い店員さんとおしゃべりできるようになったし、元気になった(笑)。その頃に渋谷でスカウトされてモデルもやるようになったし。モデルをやったらもっと自信も取り戻せましたね。

ジョージネルソン
ー全然印象が違う!本当にあなたですか?(笑)
これは一番最近のモデルの写真。「ファッション」でしょう!(笑)

ーこの時期に大きな変化があったんですね。その後の日本での生活はどう変わりましたか?
外に行ってとにかくいろんな人と話すようになりました。例えばバーに入って「とりあえずビール」とか、覚えておくと日本人が面白がってくれるから楽しいよね。あとは仲良い友達や、そのときの恋人の話し方がうつったり(笑)。関西弁も話すし、日本語は何から何まで周りの人から学んでるから、いろんな人の影響で今のジョージの話し方になってる。現地のちょっとディープな言葉も使うとみんなハッピーになることがわかったというか。Haikuを書き始めたのもこの時期だね。

“心のスケッチ”はピュア&ディープに

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ー5・7・5の”心のスケッチ”はどうやって書いていますか?
たとえば誰かと水泳について話していて、『ひらおよぎ』という言葉を聞いた。なんだかその言葉がすごく面白くて。そうやって気になった言葉はネタ帳に書いて、その言葉のイメージで詩にしたり。そのときに思ったことはすぐにネタ帳に書いて、フィーリングのままを詩にしてる。恋してると恋の詩ができるし、詩にも言語にも刺激が必要だね(笑)。ピュア&ディープに書きたいんだ。

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ーピュア&ディープ?
言葉にしたらそんな感じかな。言葉を格好つけてきれいにして、本当の意味から遠くしたりするとディープに見えるかもしれないけど。僕はそのままの気持ちを詩にするんです。格好良い言葉持ってないから(笑)。なんかちょっとふふふ、と笑っちゃうようなものがいい。社会ではストレスとかあって、みんな疲れてるとか仕事辛いとか、上下関係とかあるしね。これがちょっと解放になったらいいなと思います。

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ージョージは『テクノバカ』と言っているけれど、詩とテクノはどういう関係?
テクノのパーティーやイベントで踊ってる時に、すごくピュアなアイディアがくるんだ。たまにクラブで、DJブースの前でネタ帳書いてたりもするよ(笑)。テクノパーティは、僕の心の休憩かな。

テクノバカ
ー詩、たまに日本語の間違いがありますよね?(笑)
とにかく5・7・5で書いて、これかな?いや、これがいい!と考えていくんだけど。わざと日本語間違いはしません!(笑)だけど文法的に合ってなくても、僕の日本語は、おしゃべりしているものを詩にするから、これはジョージが言っていた言葉になるというか。

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ーだから正しい日本語というよりも、「ジョージが言っている」言葉で書くんですね。
そう。僕も日本が長くなって、気持ちとしても、ちょっと日本人になっちゃってるんだけど(笑)。日本の話に限らず、僕の詩には、もっと広く、やっぱり人間同じものだねっていうものを書きたい。それから自分が好きなことをやろう!っていうフィーリングも入ってる。僕、結構ハッピーだから。そのハッピーさをシェアするのもいいねと思ってます。みんなもっと遊んで欲しいし笑ってほしいな。

俳句
あまり真面目に見えないかもしれないけれど、普段詩を読めない人でも、僕の詩は誰でも読めるでしょう。壁ないし遠くないし、それがジョージの詩の良さじゃないかな。

『何でもいいから、何かをやる』

ーところで今日のジョージのTシャツ……なんて書いてありますか?
ジョージのTシャツ
“Try to do somerthing”。これ、なんかいい言葉じゃないですか?このTシャツ、まずはつづりが間違っていて英語としてちょっとおかしいんです。言葉も、『何かをやろうとする』って意味なんだけど、『何か』がちょっとはっきりしないんだよね。Try to do something, anything, just try!!みたいな、『何でもいいから、何か!やってみろ!』みたいな感じがします。
でも、このTシャツを買った後に、僕自身がここからインスピレーションを受けました。忙しい時には、やらなきゃいけないことがいっぱいあって、「大変!大変!何もできない!」ってなるときもあるから。そういう時にはとにかくこれを言われているような感じ。『何でもいいから、とにかくどれかを選んで、やってみろ!』みたいな(笑)。

ーさて、ジョージの今回の来日の目的は?
そう。すごいワクワクなんですけど…今年は新作の詩集を3冊作りました!そして7月のTOKYO ART BOOK FAIR(以下、TABF)で発売しますよ!そのあとは日本中の本屋さんに、これ販売しませんか、ってまわります(笑)。

TOKYO ART BOOK FAIR
ー新しい詩集は、どんな内容ですか?
『ジョージのジャパン』『ジョージのジェットコースター』『ジョージの病ホリ』の3冊で、僕の人生の3つのチャプターです。最初に日本にきた時のことや、主にニュージーランドでのこと、それから思い出たくさんのワーホリのことですね(笑)。

ー新作も楽しみ!この先何か作りたいものはありますか?
いま、絵本も作っていて、これはTABFの後に完成する予定です。ニュージーランドって鳥が多い国で、それまで哺乳類がいなかったんです。ニュージーランドのある小さい島には哺乳類がまだいなくて、鳥たちがパーティーしてるんだ。そこにいる、キウイというニュージーランドの飛べない鳥と、テクノを合わせたストーリーの絵本。楽しみにしててください!

ザーテクノキウイ
旅をしながら、その場所で出会う人々から言葉を学んで、ジョージ語で詩を操る。
そして経済分析の仕事からモデル、テクノまで、シーンでごとにさまざまな顔を見せる彼の七変化。世界のどこでも仕事・制作ができる彼のスタイルも、現代的かつ独特な働き方ともいえるでしょう。
朗らかでオープンな人柄が作品に出ているからこそ、ジョージの詩は、読者の心のディープな部分に触れてきます。
自分の母国語である英語ではなく、他の言語を使うという不自由さも、ジョージのピュアさを保つ秘訣なのかもしれません。

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とにかくやりたいことがたくさんある!とさまざまな野望も語るジョージ。ひとつひとつのやりたいことにとにかく着手する!という彼の姿勢が、『とりあえずおどる』に集約されているのかもしれません。
彼の詩人旅は、これからもまだまだ続きそうです。
とりあえず、TOKYO ART BOOK FAIRでジョージに会いに行ってみてください!
きっと、フレンドリーに迎えてくれますよ。

ジョージネルソン
George Nelson(ジョージネルソン)
1994年ニュージーランド生まれ。詩人、経済分析者、フリーランスモデル。座右の銘は『とりあえずおどる』。
日本語、中国語など様々な言語で5・7・5の詩を書き、”心のスケッチ”をしている。
http://www.haikujoji.com/
Instagram: @haiku_joji

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TOKYO ART BOOK FAIR

2019年7月12日(金) 15:00 – 21:00 (プレビュー) 
   7月13日(土)、14日(日)、15日(月・祝) 11:00 – 19:00
会場:東京都現代美術館 東京都江東区三好4 -1- 1
料金:入場無料

Web
聞き手:あまのさくや
はんこと言葉で物語をつづる絵はんこ作家。はんこ・版画の制作のほか、エッセイ・インタビューの執筆など、『深掘りする&彫る』ことが好き。チェコ親善アンバサダー2019としても活動中。
http://amanosakuya.com/

※プロフィールはんこ制作:あまのさくや

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