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お菓子の美味しさを、デザインで魅せる!BAKE Inc.アートディレクター・柿﨑弓子さんインタビュー

お菓子の美味しさを、デザインで魅せる!BAKE Inc.アートディレクター・柿﨑弓子さんインタビュー

こんにちは。haconiwa編集部のみさきです。
今日は、BAKE Inc.のアートディレクター・柿﨑弓子さんのインタビュー記事をお届けします。

「BAKE CHEESE TART」をはじめ、これまでに人気お菓子ブランドを多数誕生させ、日本各地、そして世界に美味しいお菓子を届けてきたBAKE Inc.。“お菓子のスタートアップ”として、従来の製菓業界にはなかった考え方や手法にチャレンジし、美味しくてデザインも魅力的なお菓子を作り上げる会社として注目されています。

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柿﨑さんは、BAKE Inc.の中でも土産菓子として特に人気を集める「PRESS BUTTER SAND」のクリエイティブを立ち上げ期から手がけてきた方です。グレーで洗練された、あのおしゃれなパッケージは一体どのようにして生まれたのでしょうか?

インタビューでは、柿﨑さんがBAKE Inc.に入社したきっかけや、手がけたデザインの裏側、そして今後チャレンジしたいことまでいろいろお話しいただきました。

“1Brand=1Product”のコンセプトに心を掴まれ、転職を決意。

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――まずは柿﨑さんがBAKE Inc.に入社する前は、どんなお仕事をしていたか教えてください。

柿﨑弓子さん(以下、柿﨑さん)私はBAKE Inc.に2016年に入社して、今入社3年目なんですけど、それまでは社会人になってからずっと同じデザイン事務所で10年以上、働いていました。化粧品や飲料、食品などいろんな業界のパッケージデザインを中心に、新しいブランドの立ち上げやコンサル、企業の枠組みやコンセプトをまとめてロゴや会社案内を作るようなこともしていました。

――前の会社は10年以上も勤められていたんですね!その会社から、BAKE Inc.へ転職したきっかけは何かあったのでしょうか?

柿﨑さん10年以上働く中で、ほんとにいろんな業界のデザインを担当してきましたが、環境や仕事の進め方などに慣れてきてしまったこともあり、自分が提案することがだんだんルーティン化してきてしまって。最初は「どこか良いところがあったら転職しようかな」くらいにしか思っていなかったのですが、たまたまBAKE Inc.のインタビュー記事を読むことがあって、こんな面白い会社あるんだなと思ったんです。それから実際に会社を見学しに行って、当時のクリエイティブメンバーにお話を聞きました。その時もやっぱり面白そうだなぁと思って、面接を受けて入社しました。

――「面白そう」と思われたのは、BAKE Inc.のどういうところだったのでしょうか?

柿﨑さん私が心を掴まれたのが、“1Brand=1Product”を基本のコンセプトにしているところですね。一般的に食品のパッケージって、見た目をきれいに保ちながら伝えたいことをいろいろ表示しなくてはいけないことが多いんです。デザイナーとしては、書かなきゃいけない商品説明や、たくさんのセールスコピーをバランスを見ながら詰め込んでいかなくてはならず、私はその作業に辟易としてしまっていて……。でもBAKE Inc.は、1つのブランドには1つのプロダクトしかないため情報量はとてもシンプルなんです。その分、表現が限られてくるという面もありますが、1つの商品にきちんと向き合い、いろんな切り口や見せ方を考えられるところが面白いなと思いました。

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――入社後はどんなブランドを手がけてきましたか?

柿﨑さん入社して最初に担当したのは、BAKE CHEESE TARTでした。当時はまだそこまで季節やイベント的なプロモーションが多くなかったんですが、ホリデーシーズンのパッケージや、バレンタイン限定でチョコレートフレーバーを出すプロモーションがあって、それを担当しました。

あと、自分の中でも大きかったのは、BAKE CHEESE TARTのブランドシンボルマークを作ったことですね。シンボルマークなんて新参者の私がやっていいのかなと一瞬戸惑いもありましたが、ちょうど商品を海外展開するタイミングだったこともあり、商標をとるために開発する必要があって。ブランドの顔となるデザインをつくる作業は、とても勉強になりました。

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(BAKE CHEESE TARTのロゴ)

それと平行して、ちょうど入社3ヶ月ほどの頃からPRESS BUTTER SANDの立ち上げにも携わることになって。デザインやコンセプトメイキングなどをやり始めたんです。

デザインは色から決める。前例のない色への挑戦

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――PRESS BUTTER SANDは東京駅でも特に人気の商品ですよね!どのようにして生まれたのでしょうか?

柿﨑さんまず、BAKE Inc.独特の文化として、当時参画していたファウンダーの長沼が商品一つ一つを見ていたのですが、PRESS BUTTER SANDの時も、彼の頭の中にあるアイデアを引き出して、少しずつ形にしていくという作業でした。

PRESS BUTTER SANDは日持ちのする商品で、袋に詰められた状態のお菓子を販売するのはBAKE Inc.として初めてのことだったんです。これまで大切にしていた、焼きたて感を工房のある店舗でアクティブに見せるということを、箱菓子でやったらどうなるんだろう?ということが始まりでした。いわゆる日持ちのするお土産の箱菓子であまりやっていないことをやっているんです。

それがまず一つの挑戦だったんですが、もう一つ、日本を代表する土産菓子をつくるという目標も掲げました。東京駅に出店が決まっていたので、せっかく東京駅でやれるんだから、うちの会社のシンボルになる。他がやらないことをやって、どこかへ行くときには毎回選んでもらえる土産菓子にしたいなって思っていたんです。そういう想いを商品開発担当と話しながら、それをパッケージにしていく上ではどうしたらいいのかを考える。そこからが私の仕事ですね。

――会社としてもいろいろとチャレンジしたブランドなんですね!そこからどの様にデザインを進めていったのでしょうか?

柿﨑さん商品開発の現場を見せてもらった時に、すごく職人的でカッコいいな!と思ったんです。クッキーを焼くための鉄板、ひとつひとつ手間暇かけて作る様子がすごくカッコよくて。

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東京駅のお土産って女性がターゲットでかわいいものが多いと思うんですが、場所柄サラリーマンも多いですし、男性にも持っていただけるような、商品の持つ男らしさを表現したパッケージにしたいと思いました。鉄の塊や職人が焼いている光景、クッキーがたくさん焼かれて積み上がっていく様子などから“インダストリアル”というテーマを設定しました。

――そのテーマから生まれたのが、このグレーと蛍光オレンジの組み合わせが印象的なパッケージなんですね!

柿﨑さん私はブランドを色から決めることが多く、PRESS BUTTER SANDでは蛍光オレンジを絶対使いたい!っていう気持ちがあったんです。蛍光オレンジは、鉄が溶ける時のビビッドなオレンジをイメージしていて、機能的でストイックなグレート合わせることで、より際立たせました。

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――なるほど。グレーの差し色としてではなく、まず先に蛍光オレンジを選んでいたんですね!

柿﨑さんそうなんです。全部蛍光オレンジだと店頭の販促POPみたいになっちゃうので(笑)、箱を留めるシールや袋の持ち手などの機能的な部分に蛍光オレンジを使っています。
でも実は、このグレーの箱に使っているザラっとした紙を使いたい!という思いもありました。デザインをやっていると、素材との幸運な出会いってあると思うんです。パッケージ開発をちょうどやっているときに、たまたま包材メーカーさんから今回箱に使っている紙を紹介していただいて。

パッケージって、手で持って触るものなので、みなさん言葉にしなくても手触りとして覚えていると思うんです。それを考えると、無意識に記憶に残るような紙をどうしても使いたくて。その紙の質感を生かすために、PRESS BUTTER SANDの箱は全面に印刷をしないで素材そのままの状態の紙を使用しています。一般的にパッケージは紙の全面に印刷を施して色や素材感を表現することが多いですが、インダストリアルというテーマを決めたときに、“生(き)のまま”でかっこいいことを裏テーマに、紙は地のままで印刷はしないことを掲げました。

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(紙袋になる前のロール状態の紙。こちらも全面印刷していない素材そのままの状態だそう!)

――いろんな要素がバチッと組み合わさって出来ているんですね。完成するまで、いろいろ大変なこともあったのではないでしょうか?

柿﨑さん前例がないことをやるのは、やっぱり大変でしたね。蛍光オレンジを紙袋のハンドルに使うなんて、印刷会社さんもやったことがなく、「袋の持ち手部分に印刷すると色が手についてクレームになる」とか「蛍光色はケミカルなイメージがあるから使わない」とか、いろんな意見がでました。でも、決して奇をてらいたいのではなく、きちんとコンセプトに沿って選んだ色なので、粘ってなんとか実現させました。

――コンセプトからブレずに粘ったことで実現したデザインだったんですね。とても素敵です!

色にストーリーを重ねた、新ブランド「Chocolaphil™」のデザイン

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――今年誕生したばかりの新ブランド「Chocolaphil™(ショコラフィル)」も、柿﨑さんが手がけられているんですよね。

柿﨑さんはい。Chocolaphil™は今年の2月に誕生したガトーショコラ専門店で、BAKE Inc.が初めて挑戦したチョコレート菓子のブランドです。商品開発メンバーに最初の説明で「チョコレートよりもチョコレートを感じるお菓子なんです」って言われて、その言葉すごく良いなと思って。それをそのままブランドの軸にして進めていきました。
チョコレートは鎌倉のアロマ生チョコ専門店・ca ca oさんのコロンビアで栽培から加工までした、エシカルなこだわりのものを使っています。

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――ロゴやパッケージに使われている青色がとてもきれいですが、Chocolaphil™も色からデザインを考えたんですか?

柿﨑さんそうなんです。真っ青なブランドつくりたいなって。太平洋をわたってチョコレートがくるってところから、“青”だなって思ったんです。もちろん青がブランドの方向性に合うか、それを検証するところから始めます。インスピレーションにも何か理由があると思っているので、なぜ青が浮かんできたのかを、自分の中で掘り下げていきました。

ウルトラマリンブルーっていう色がありますよね?その色の語源を調べた時に、海を越えてきた色、とあって。もともと中東でとれる鉱石をヨーロッパに運び、絵の具にしていたっていうことから名前が作られたって知った時、「これだ!」って思ったんです。海を越えてチョコレートが運ばれてきたストーリーと重なるなと思い、ウルトラマリンブルーをブランドカラーにしました。

――シルバーにも何か意味が込められているんでしょうか?

柿﨑さんウルトラマリンブルーの青は、直接チョコレートにつながる色ではないですし、青はそもそも食品に使わないとされている色で。それを補う意味もあって、チョコレートらしさって何だろう?と考えてみました。その時思い浮かんだのが、銀紙に包まれているチョコレートのイメージだったんです。なんで銀紙に包まれているんだろう?と調べてみたら、昔から銀紙はカカオの風味を守るために使われていたという記述があったことから、銀紙を剥がすと出てくるチョコレートの姿もチョコレートらしいんじゃないかと思い、シルバーのイメージを組み立ていきました。

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――袋のデザインも特徴的ですよね。

柿﨑さんChocolaphil™は1号店の出店が自由が丘に決まっていたので、大人の女性が色んなものを食べてもやっぱりこれが美味しいなって思ってもらえるようなブランドを目指していました。そこで大人の女性が持ち歩くおしゃれでシルバーなものとして、クラッチバックをイメージしたんです。ショッパーはブランドの一番の広告塔になるものなので、こだわりましたね。

ブランドのリーダー役?!BAKE Inc.でのアートディレクターの仕事とは

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――パッケージには柿﨑さんの想いがたくさんつまっているんですね。

柿﨑さん他の会社だったら、多分これらのデザインは通っていなかったと思います(笑)。
インハウスデザイナーって、デザインを考えるのと同じくらい、考えを周りに伝えることが大事なんじゃないかと考えていて。なぜこのデザインにしたのか、自分のなかで何度も何度も行ったり来たりして、内輪ウケで終わらない、分かりやすいものになるようデザインはかなり考えて、周りの人にしっかり説明するようにしました。

――デザインを考えて、さらに伝えることが大事とのことですが、BAKE Inc.のアートディレクターのお仕事って、どんな役割があるんでしょうか?

柿﨑さん入社してびっくりしたんですけど、商品をより魅力的に魅せるためのデザインにかかわることなら端から端まで全部やるんです!現在はパッケージやポスターのデザイン、ビジュアルの写真、あとは店舗の設計チームと一緒にディレクションを担当していますが、入社したての頃は店舗スタッフの靴をどうするとかまで考えてましたね。BAKE Inc.の店舗は、足元が見えるように設計することで焼きたてを提供する工房感を出してるんですけど、その時は足元がばらばらだと全体が揃って見えないなぁと思い、ブランドと色を指定したスニーカーにすることにしました。
他にも店長さんやスタッフから相談を受けて、店内のマネートレーやお客さんが使うペンのことまで考えてました(笑)。

――そんなに細かいところまで、柿﨑さんが考えていたんですね!

柿﨑さんそうなんです。でもそれがブランドをつくるアートディレクターの醍醐味なのかなって思います。デザインを考えて作るだけで終わるだけじゃなくて、その先でスタッフがどういう風にお客さんに説明するか盛り上がってくれているのを見たり、社内の人にデザインについて話したりする時、すごくやりがいを感じます。

――デザインの背景にこめられている思いとかを、店舗のスタッフさんにまで伝えるブランドってなかなかないかもしれないですよね。

柿﨑さんお店の最前線にいる店舗のスタッフって、自身もブランドであり、ブランドの象徴だと思ってるんです。なのでみんながブランドらしさを考えてくれると嬉しいですね。

お菓子が美味しいことが一番のモチベーション!BAKE Inc.のお菓子は進化し続ける

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――デザインについて色々お話しいただいて、改めてBAKE Inc.はブランド一つ一つが個性的だなぁと思いました。

柿﨑さん実はそれぞれのブランドにキャラクターを設定しているんです。例えばチーズタルトは、BAKE Inc.初の旗艦ブランドで、なんでも最初に経験している苦労したブランドなので、しっかりもので優等生な長男みたいな(笑)。
そういうキャラクター設定をすることで、ブランドの軸をなんとなくみんなに分かってもらえるようにしています。

――ちなみにPRESS BUTTER SAND とChocolaphil™はどういうキャラ設定なんですか?

柿﨑さんPRESS BUTTER SANDは髭がもじゃもじゃで、男らしくて、仕事は厳しそうだけど遊び心があるおじさん。Chocolaphil™は頭が良くてアウトプットがセンセーショナルな、イケてるリケジョです(笑)。

BAKE Inc.はお菓子を進化させるっていうステイトメントを掲げていて、美味しさに自信はあるので、他のお菓子屋さんではできないことに挑戦していくなかで、お菓子の豊かさや、面白さ、楽しさをブランドごとのキャラクターで表現していきたいなと思います。

――新しいことに挑戦し、進化し続けるって大変なことだと思います。それでも柿﨑さんが良いものを作りたいと思う、モチベーションはなんでしょうか?

柿﨑さん“BAKE Inc.のお菓子は美味しい”っていうのが、一番のモチベーションなんです。久しぶりにBAKE CHEESE TARTを食べた時、改めて「美味しい!」って感動したことがあって。国内外問わず、一人でも多くの人に知ってほしい、食べてほしい、っていう気持ちで取り組んでいます。うちの商品って、想いやこだわりは色々つまっているけれど、突き詰めた結果、割と見た目がシンプルになっているんですよね。言葉少なな可能性のある子だと思っているので、それをデザインの力でもっと魅せてあげたいと思います。

――最後に、柿﨑さんの今後の目標を教えてください。

柿﨑さんまだアイデア段階なんですけど、すごくおいしい乾パンを作りたいです。災害時って、パンやご飯を食べたいと思う人が多いと思うんですけど、そこにお菓子があったらもっと心が満たされるんじゃないかなって思っていて。BAKE Inc.のお菓子がどんな場所でもどんな状況でも心を満たせられるお菓子になればと思います。
最終目標は、宇宙にBAKE Inc.のお菓子をとばすことです!いつになるかは分からないですけど、叶えたいですね。

――柿﨑さん、ありがとうございました!今後どんなお菓子が誕生するのか、楽しみにしています!

◆BAKE Inc. アートディレクター:柿﨑弓子
BAKE クリエイティブ部 部長。武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科卒業後、デザイン事務所を経て、2016年BAKE入社。各ブランドのプロモーションや店舗グラフィックなどの制作、PRESS BUTTER SANDの立ち上げに携わる。

◆BAKE Inc.
https://bake-jp.com/

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