CREATOR クリエイティブなヒト
温泉街で暮らすうつわ作家 椎猫のコラム「白魚さんの日常」vol.3

こんばんは。椎猫白魚(しいねしらうお)です。数年前から、縁もゆかりも無かった佐賀県の嬉野温泉で有名な街へ移り住み、うつわなどを作っています。
このコラムでお届けするのは、縁もゆかりもない地方の街で暮らす作家の日々です。作る人にとって制作環境やその周辺のことはとても重要だと思っていて、都市や地元とは違う、知らない地方で暮らす作家の日々の生活ってこんな感じなんだなぁ〜と感じてもらえたら嬉しいです。
今回の内容は、こちら!
連載第三回は、「花瓶を持って散歩へ行こう」「白魚さんの住処」「ものづくりの原点旅行へ」の3本です。
さ〜てはじめは、
花瓶を持って散歩へ行こう
ハローネイチャー!今月のローカル暮らしの日常は、やっぱり散歩です。都心に比べれば外出するのは少し安心感はありますが、遠出はちょっと不安。なので、なので家の周りを散歩するのにハマっているのですが、近頃の散歩は少し様子が違います。そう、花瓶を持って散歩なのです。片手に収まる程の小さな花瓶を持って近くの川辺へ。花瓶に似合う植物をガサガサと探しながら散歩をするのです。
普段は晩ごはんのおかずのことを考えてる散歩道でも、立ち止まって植物に近づいたり触れたり、葉っぱをめくって見たりすると、今まで気づかなかったところに植物の蕾があったり、へんてこな色の虫がくっついてたりして面白い。
今回の散歩で見つけた植物は、フェイクなグリーンが強いハナツルソウとプチプチが可愛いハゼラン。花瓶はSF小説に出てきそうな小さなフラワーベースです。朝になると陽の光を浴びてピンク色の小さな花を咲かせてくれます。ハナツルソウは根っこが出てきたらプランターに植え替えよう。
さて、お次は
白魚さんの住処
嬉野温泉街からシーボルトの湯の先にある橋を渡って、金龍という雰囲気のある”おでん”って書かれた赤ちょうちんの前の細い路地をちょっと入って、じゃり道を少し歩いたところにオレンジ色の屋根の建物があります。まるでお爺ちゃん家のような格子とすりガラスの引き戸を開けると、玄関の片隅にもうすぐオープンの不思議なコーヒースタンド(たぶん)があって、靴を脱いでコーヒーを片手に長い廊下を進んだ先に、大浴場と小さく書かれた札が置かれた扉があるので恐る恐る開けてみて下さい。ガラガラと少し響く音の先にだいたい白魚さんがいるアトリアがあります。いつの日か遊びに来てください。お手紙でした。
最後は、こちら!
ものづくりの原点旅行へ
佐賀県有田町に源右衛門窯という長い歴史を持つ窯元があります。古伊万里の伝統技法を継承する民窯として、今日は食卓を彩る器を主に手仕事をされています。その敷地の中にひっそりと立つ古伊万里資料館が今回の目的地です。
古伊万里資料館には、江戸時代から明治初期に作られた食器や調度品、東南アジアやヨーロッパへと運ばれた輸出品などが収蔵されているのですが、この資料館の大きな特徴は、所蔵品の全てが造り手の視点で捉え、蒐集されているところなのです。個人でこれだけの量を集めるのもすごいと思うのですが、その思いが伝わってくるものが、収蔵品のとなりにそっと置かれている一枚の紙なのです。この紙には品名や制作年の他にその器に対する思いが書かれています。
”江戸末期から明治初期にかけての作品である見事なロクロと大胆にして細かい絵付けは正にその頃の完成した職人芸の極致と言えよう。また窯上りも最高である。” 染付桜門絵大皿より
この言葉たちを読んでいると当時の作り手へのラブレターのようで胸が熱くなります。一つの器を通して、昔の作り手と今の作り手が繋がって見えるのが、今回のものづくりの原点なのです。
源右衛門窯には、古伊万里資料館の他にも職人さんのいる工房を見学出来たり、ショップがあったりと有田焼のものづくりの心を感じ取ることが出来ます。
少し落ち着いたら、ものづくりの原点を探しに旅に出かけても楽しそうですね。
それでは、また〜
登場人物:源右衛門窯 @gen_emon_kiln イラスト:daimonhikari @daimonhikari
椎猫白魚 / 器作家
東京生まれ、長崎育ち。佐賀のとある温泉街でうつわを作っています。植物にまつわる器や食器など。最近は地元の作家とお土産作りをしたり、リバーサイドハウスの準備をしている。「ハマ」2019/RIVER SIDE HOUSE (by Ryokan Oomuraya)、「嬉野に越して来た大門と中村と生まれも育ちもここの宮崎がやる展示」2019/旅館大村屋 湯上り文庫など。
ウェブサイト:https://siineshirauo.thebase.in/
Instagram:https://www.instagram.com/shiineshirauo/
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