CREATOR クリエイティブなヒト
忠地七緒の「写真家が一冊の“何か”をつくるまで」vol.1

こんにちは。フォトグラファー/ライターの忠地七緒(ただちなお)です。普段は雑誌・WEBを中心にアイドルや暮らしまわりのことを撮影しています。この連載では自身の作品として一冊の”何か”をつくるまでの道のりをゆるく綴っていきますので、楽しんでもらえるとうれしいです。
突然ですが一冊の“何か”って何だと思いますか?実は決まっていないのです。「紙媒体をつくる」ということは決めています。でもそれが雑誌なのかZINEなのか写真集なのか、何も決めていません。
第一回では一冊の“何か”を制作しようと思い立ったきっかけ、内容をあえて決めていない理由、そして連載という形で過程を公開するワケについてお話していきます。
一冊の“何か”をつくろうと思った理由。
3年前、女の子を台湾で撮り下ろして写真集を出版しました。表参道ヒルズで写真展をして、haconiwaのインタビュー(→前編・後編)でも取り上げてもらい、手応えを感じましたし、仕事の幅も大きく広がりました。でもその後、忙しさを言い訳になかなか自分の作品を世に出せずにいました。
出版から1年が過ぎ、2年が過ぎ…。何かつくりたいとは思うものの、結局後回しにする日々。じゃあなぜ2020年の今、制作を決断したのか。きっかけはコロナ禍です。やりたいと思った時に動くしかないと腹をくくりました。
普段、私は出版社や制作会社などから依頼を受けて仕事をしています。撮影すること、執筆することに仕事として取り組める今の環境をこよなく愛しています。一方、じわじわと思いはじめたこともあります。「誰かに依頼される自分でいることも大事だけど、個人的に良いと思う人・モノの魅力を自分の責任で届けていくことにも挑戦したい」
それはクライアントワークに一種の限界を感じているからです。“限界”というのは決してマイナスな意味ではありません(笑)クライアントの意向があって、予算があって、締切があって。その中でいいものを生み出すのはとても楽しいです。だから大好き。
その反面「あと1時間撮影できたらもっといい表情を撮れるのに」「この話はもう少し深堀りした方が面白いかも」と思う瞬間もあります。フリーランス独立から4年、自我が芽生えてきたのかもしれません(笑)そういう「こうしたい!」を制限なく、自分の責任で、かつ手に取れる形で届けることに挑戦したくなりました。
個人でつくるから規模は小さいかもしれないけれど、小さくとも志のあるものを定期的に発行していきたい。収益を得ていくことにも挑戦したい。イメージはイラストレーター・大橋歩さんによる『アルネ』のようなもの。
内容を決めず、植物のような有機的なものづくりを。
はじめにも書きましたが、現時点で決まっていることがほとんどありません。名前もページ数も判型もなーんにも決まっていません。でもそれが良いと思っています。
最初からコンセプトや内容をガチガチに決めるのではなく、木が伸びやかに枝葉を茂らせていくように、ご縁や直感、一つひとつの決断を大事に制作していきます。
すでに決めていることは2つだけ。写真と文章(インタビュー)をどちらも楽しめること。撮り下ろす女の子のこと。
私はフォトグラファーですが、ライターとして仕事をすることもあります。撮ること書くことどちらも好きですし、両方担当することで届けられる世界観があると信じています。一作目は写真集にしたので、今回は「写真パート」と「文章パート」に分けて、どちらも楽しめるようなものにしたいと企んでいます。
そして私の生きる糧といっても過言ではない「女の子を撮ること」。今回、媒体作りを決意したのは心から撮りたいと思える人に出会えたことも大きいです。昨夏Instagramでたまたま見かけた女の子。昨年2回撮影した時、果てしない魅力を感じて、なんだか怖くてしばらく撮影できなかったほどです(笑)
女の子の名前は中台麻佑さん。写真パートは彼女の撮り下ろし写真をメインに構成していきます。
制作過程をリアルタイムで共有してみよう〜!
雑誌をつくる、写真集をつくる、ものをつくる。何かをつくる人の完成インタビューや成功談はよく目にしますが、過程がリアルタイムで明かされることはほとんどありません。でも私はその過程にこそ興味深いエッセンスが詰まっているように感じます。
「A案とB案で悩んで、結局C案を採用した」「予算が足りなくてアイデアでカバーした」ものづくりにはこういった小さな選択がぎゅっと詰まっています。だから今回、媒体を生み出す道のりをあえて“連載”という形で公開してみようと思いました。
一冊の“何か”ができるまでをゆるゆる綴りながら、制作の参考にしてもらえて、かつ「私も何かやってみようかな」と勇気のかけらになるような記事を届けていきます。私の3年ぶりの挑戦、そして連載も楽しんでもらえるとうれしいです。今冬〜来春の完成を目指しています。
突然ですが今日は撮影初日!
そして今日は撮影初日。記事が公開される頃には神奈川県の真鶴という港町で麻佑さんと二人きりで撮影しています。次回は撮影場所の決め方や洋服のスタイリング、撮影の裏話などをご紹介しようと思います。どうぞお楽しみに!
●プロフィール
忠地七緒 フォトグラファー/ライター
雑誌編集者を経て、雑誌・Webを中心にアイドル、ファッション、ローカルなど撮影。インタビュー執筆も行うことで写真・文章両面から立体的に引き出す独自のアプローチが評判。
Instagram:https://www.instagram.com/naotadachi/
WEB:https://naotadachi.com/
note:https://note.com/naotadachi
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