CREATOR クリエイティブなヒト
忠地七緒の「写真家が一冊の“何か”をつくるまで」vol.2

こんにちは、フォトグラファー/ライターの忠地七緒(ただちなお)です。第一回では一冊の“何か”の制作を思い立ったきっかけや完成形を決めていない理由をご紹介しました。
「続きが楽しみ!」「私も何か始めようかな」などたくさんの反響、本当にありがとうございます。第二回は要となる撮影のことをお話しようと思ったのですが、エピソードが山盛りで一記事にまとめてしまうのはもったいない!
撮影当日の話は次回たっぷりお届けすることにして、今回はそこに至るまでの準備について書いてみます。なぜなら撮影は撮影日だけで完結するものではないから。コンセプト決め、モデル、場所、洋服…と、過程にもたくさんの選択が詰まっています。
普段あまり明かされることのない、でもとても大事な“裏側”の話を今回はしてみます。
コンセプトは「女の子のありのまま」
写真をはじめて6年。一貫して「女の子のありのまま」を撮ることを大事にしてきました。ピース写真でもなく決め顔でもなく、自然にこぼれたくしゃっとした笑顔が一番かわいいと思っています。
そして「ありのまま」というのは笑顔だけではありません。あまり見せることのない怒ったり泣いたりする姿もまた、その人の「ありのまま」だと思っています。
私は誰しも二面性を抱えていて、その二面性にこそ「らしさ」が宿ると考えています。今って表の見せ方だけがクローズアップされがち。でもいつも元気な人なんてきっといないし、人間ってもっと多面性を持っているはず。
表も裏もひっくるめたそのままの自分がチャーミング、ということを伝えたくて写真を撮っています。
でもここ数年は「ありのまま」を見せてくれる女の子に出会えませんでした。人は自分の見え方を気にします。それは当たり前のこと。
ただ、ありのままを撮りたい私と見せたいイメージがある女の子の間にギャップがあったりもして。良いと思う写真を「この表情は微妙なので使わないで」と言われたりすると、やっぱり切なくて…。
さらけ出してくれる女の子との出会い
そんな時インスタグラムで一人の女の子を見つけました。髪が真っ黒で底知れぬ瞳をしていて。心がざわざわして、衝動的に「撮りたい!」と思いすぐDMを送りました。それが今回のモデルの中台麻祐さん。
何度か撮影してみて、今まで撮ってきた女の子と何かが違ったんです。たとえば半目でも白目でもNGがないし、変なポージングをお願いしてもどこか楽しそう(地面に寝そべるの好きです〜と言ってました)。そのさらけ出し感が撮っていて心地よくて。
この子を被写体に一冊の“何か”を作りたい!と思って有楽町のルノワールで相談したところ快諾。ここ数年の想いが結実したような、とにかくうれしかったのを覚えています。
舞台は神奈川県・真鶴。
さて、そろそろ今回の撮影の話に進みますね。実はこの撮影はシリーズ三作目です。2016年はグアム、2017年は台湾、そして今回は神奈川県・真鶴。写真家の私と女の子2人きりで旅することで生まれる「ありのまま」を撮ることを軸にしています。
それは旅先で二人きりになることでじっくり向き合えるから。二人きりだから繕いようがなくて、普段は話さない打ち明け話もしちゃうし、時にハプニングが発生することも。
1対1で向き合い続けることで生まれる喜怒哀楽が写真に現れるのは生っぽく、女の子の「ありのまま」に少し触れられる気がするのです。
はじめは海外での撮影を検討していましたが、コロナ禍で難しいな〜どうしようかな〜と考えていた時、ふと「あ、真鶴で撮ろう」と思いました。
海も山もあって情緒があって。人があったかくて、泊まれる出版社・真鶴出版があって。行くたびに心がほどける町・真鶴。真鶴を舞台に、のびのびとした麻祐さんを撮り下ろせたらいい写真が撮れると確信しました。
スタイリストさんにお願いできなかったけれど…
場所が決まったら、当日着てもらう洋服を考えていきます。実は当初、スタイリストさんに入ってもらおうと考えていました。スタイリストさんって魔法使いみたいで、私が想像もしない服の色使いや組み合わせで女の子をよりかわいくしてくれます。
今回どうしてもお願いしたい方が一人いて、熱めの想いをメールにしたためご相談したのですが、スケジュールが合わずご一緒することは叶いませんでした。
とても残念でしたが、他の方にお願いすることは考えられず。「ありのままを撮りたいなら麻祐さんの私服でスタイリングしよう!」と気持ちを切り替え、二人で5〜6パターンのコーディネートを組みました。
コーデ組みをビデオ通話でしたのも印象深いです。あらかじめ洋服のイメージを麻祐さんに共有し、実際に着てもらってコーディネートを決めていきます。真鶴は緑や土などアースカラーが多いので、映える赤や白、薄いブルーをメインに選んでいきました。
天気予報とにらめっこしながら迎えた撮影日はその日だけ夏が戻ってきたような晴天。これ以上ないロケーションの中、みずみずしく撮り下ろしてきました。
ということで撮影エピソードは次回をお楽しみに〜!写真もこの連載で初公開します〜!

忠地七緒 フォトグラファー/ライター
編集者を経て、雑誌・Webを中心にアイドル、暮らし、ローカルなど撮影。インタビュー執筆も行うことで写真・文章両面から立体的に引き出す独自のアプローチが評判。
Instagram:https://www.instagram.com/naotadachi/
WEB:https://naotadachi.com/
note:https://note.com/naotadachi
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