CREATOR クリエイティブなヒト
忠地七緒の「写真家が一冊の“何か”をつくるまで」vol.6

こんにちは、フォトグラファー/ライターの忠地七緒(ただちなお)です。今回はマガジン『あわい』を制作するにあたって心がけていることを紹介します。それは「誠実・正直」であること。なんだかどこかの会社の社訓みたいですね(笑)
依頼は直接会って、想いを伝える
私はフリーランスのフォトグラファー/ライターなので、誰かに仕事を発注することより、仕事をお受けすることが多いです。編集者、デザイナー、アートディレクター…さまざまな方から仕事を受けていて、その依頼方法は千差万別。
「わー!こんなにクリエイターのことを考えて依頼してくれるんだ!」といううれしいものもあれば「カメラマンのクレジット、別の人の名前だぞ…!」というものまであって(笑)
やりとりはメールが主流で、撮影まで顔を合わせず進むことも多いです。それはそれで効率的で良いのですが『あわい』では依頼段階からとことん丁寧に取り組みたいと考えていました。
なぜならお互いのモチベーションにつながるし、細部のこだわりって完成した媒体にも必ず表れるから。
誌面に登場する方は3名、制作パートナーであるデザイナーさん・製本会社さんも3名。その全ての方に一度お会いする時間をいただき、『あわい』の趣旨を説明し、なぜ登場してほしいか、協力してほしいか、想いを伝えました。手紙を綴ったこともありました。

今の世の中、そういう時間や手間をかけるプロセスって面倒がられたり、疎ましがられたりするのかもしれないけれど…。結果的に全員が快諾してくださったことは本当にうれしかったし「この方法で良かった」と小さな自信につながりました。
当たり前になっている“無理”をお願いしない
また無理をお願いしないことも大事にしています。たとえば原稿確認やデザイン出しの期日は余裕を持って。急いでいる時って「翌日中に戻してください」なんてお願いしてしまうことも。でも相手の時間をお借りしているわけで、その時間が短いって失礼ですよね(納期に余裕を持った仕事をしている人もたくさんいますが◎)。
謝礼についても今の自分がお支払いできる最大限をお渡しするよう心がけました。個人制作でスポンサーもついていないので支払えるお金には限度があり、大手企業のようなふんだんな予算はないのですが…。個人であることに甘えて、相手に無理を強いるのは違いますもんね。
正直に、というのは気持ちやその時のタイミングを信じて、縛られることなく制作していることです。途中で妊娠がわかったり、その結果執筆がなかなか進まなかったり…とスケジュールが後ろ倒しになってしまったのは反省点ですが、キリキリして作りたくなかった。ものづくりをする人がいい状態であれば、完成品にその空気が宿るはずだから。
表も裏もクリーンなものづくりが届けば
独立から4年が経ち、さまざまな仕事を経験させてもらいました。中には「効率的であればいい」「相手の気持ちは置き去りでも仕方ない」「連絡なしにフェードアウト」などモヤっと感が残るものも残念ながらありました。
見た目の良さや言葉の巧みさ、キャッチーさではなく、制作陣の魂がクリーンであるものが届き、きちんと売れていく世の中であってほしい。そのためにできることをまずは『あわい』でやってみたという感じです。
さて、その結果はいかに。引き続き、誠実に正直に制作を進めたいと思います。

●プロフィール
忠地七緒 フォトグラファー/ライター
編集者を経て、雑誌・Webを中心にアイドル、暮らし、ローカルなど撮影。インタビュー執筆も行うことで写真・文章両面から立体的に引き出す独自のアプローチが評判。
Instagram:@naotadachi
WEB:https://naotadachi.com/
note:https://note.com/naotadachi
忠地七緒の「写真家が一冊の“何か”をつくるまで」
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