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忠地七緒の「写真家が一冊の“何か”をつくるまで」vol.8

忠地七緒の「写真家が一冊の“何か”をつくるまで」vol.8

こんにちは、フォトグラファー/ライターの忠地七緒(ただちなお)です。6月15日から始まった雑誌『あわい』の先行予約。作って終わりではなく皆さんに届くことが大事だと思っているので、多くの方に興味を持ってもらえてうれしいです。

さてさて、今回はものづくりに欠かせないお金の話をしてみようと思います。

世界観を広げることに投資したい

『あわい』の制作を始めた理由は、魅力的だと思う人・事柄を自分の責任で届けることに挑戦したかったから(vol.1に詳しく書いています)。ただ実はもう一つのきっかけがありました。

それは昨年春に給付された持続化給付金。ここ数年、何度も媒体づくりを計画し「お金をどう集めるか」で立ち止まっていた私にとって、またとない機会でした。いただいたお金をなんとなく使うのではなく、せっかくなら自身の世界観を広げることに投資したいと考えました。

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(麻佑さんの写真は“色”が鍵になっています)

当初、制作費50万円を想定していましたが、制作が進むにつれてやりたいことが増えていって。デザイン、印刷・製本、撮影・取材経費を合わせて最終的に70万円となりました。

いくらで販売するのがベスト?

では価格と部数はどう設定するか。『あわい』でお金儲けしたい!みたいなことは考えていませんが、みんなで心を込めて制作したこと、定期刊行を予定していることから次号の制作費が生み出せる価格・部数にしようと決めました。

たとえば私が読者だったら『あわい』にいくら出すでしょう。今まで自分で買った個人制作の雑誌やリトルプレスは1,000〜2,000円くらいの予算感。

「1,500円はちょっと高いかな」「でも1,200円は安いかも」みたいな感じで最終的に1,300円に決めました。そのさじ加減は感覚です。

印刷部数への葛藤と決断

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(何度も修正を重ねたしるし)

価格が決まったら70万円の制作費をどうペイしていくか考えます。たとえば500部を定価販売する場合1,300円×500部=65万円。完全な赤字です(笑)

1,000部を定価販売するとしたら1,300円×1,000部=130万円。制作費を差し引いても60万円の利益が生まれるため次号の制作費に充てられます。

個人で1,000部売り切るハードルの高さをひしひしと感じながら「多くの人に届けたいなら、部数が多い方が可能性は上がる」と腹をくくり1,000部印刷することにしました。その決断は数週間悩みましたね…。

どのくらいの謝礼で依頼するか。価格をどのラインに設定するか。何部印刷するか。完成した雑誌からはなかなか見えない部分ですが、一つひとつ葛藤と決断が隠されています。

安くもないし、全国書店にも並ばないけど

大手出版社が出す雑誌と比べると1,300円という価格は高いかもしれません。発売日に全国の書店に並ぶ仕組みもなく、現時点ではオンラインストアで注文した方だけに届きます。

それは一見、手間かもしれないけれど『あわい』は価格以上の価値があると信じているし、私は自分の手で梱包して一人ひとりに届けられることを幸せに思っています。

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(タイトルの“あわい”感もお気に入りです)

先行予約は残り5日。美しい世界にふれたい、弱さを受け入れたい、前に進むきっかけが欲しい。言いようのない閉塞感を感じている、誰かの言葉や生きざまに救われたい。そんな方におすすめです。

1冊、1冊が次につながります。興味をお持ちいただいた方はぜひ手に取ってもらえるとうれしいです。

→先行予約や詳細はこちらから

●プロフィール
忠地七緒 フォトグラファー/ライター
編集者を経て、雑誌・Webを中心にアイドル、暮らし、ローカルなど撮影。インタビュー執筆も行うことで写真・文章両面から立体的に引き出す独自のアプローチが評判。
Instagram:@naotadachi
WEB:https://naotadachi.com/
note:https://note.com/naotadachi

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