CREATOR クリエイティブなヒト
大伴亮介の「日常ワンシーン画」 Vol. 4 傘

こんにちは。イラストレーター・デザイナーの大伴亮介です。
日常にはさまざまなワンシーンが存在します。
しかし、そのほとんどは心にひっかかることもなくただ流れ去って消えてしまいがちです。
そんなはかない記憶の雑魚をすくいあげ魚拓のようにイラスト化し、そこになにかしらの考察を記していこうというのがこのコラム『日常ワンシーン画』です。
個人の経験が舞台とはなりますが、皆様にもなにかを感じとっていただけたら幸いです。
第4回 「傘」のワンシーン
日常には傘が登場します。
たくさんの傘が人々を雨から守り、そして、置き忘れられてきました。
今回はそんな傘にまつわるワンシーンをすくいあげていきます。
【1】ビニール傘のベルトが伸びてしまったシーン
使い込まれたビニール傘には味が出てきます。透明だったビニール部分は霧がかったように白く濁り、骨はゆがみ、酷使されたベルトはだらしなく伸びきってしまいます。
【2】段差に引っかけた傘がギリギリでぶらさがるシーン
施設のトイレなどを利用する際に傘をちょっとした段差に引っ掛けることがあります。ゆらーりと不安定にゆれる傘は落下寸前でギリギリ静止。指先だけでぶらさがるボルダリング選手を見ている時のような緊張感が漂います。
【3】はずれた傘の骨がなかなか元に戻らないシーン
骨と布の長さがキッチリ同じであるためかなり強い張力と戦わなければならず、弓を引くような姿勢をキープしながらパーツの小さな穴めがけて棒の先端を差し込むという高度なテクが求められることになります。
【4】わりと序盤から傘袋がキツいシーン
かなり早い段階で「あ、これはダメですな」と悟ることがあります。そこから先はキツすぎるズボンを力任せに履くように強引にかぶせていくしかなく、最終的に半分くらいまで入ればOKといった空気になります。
【5】傘の先端が袋を貫通していたシーン
力任せで強引に入れた人間にはこのような報いも訪れます。
【6】折りたたみ傘を反対方向に巻いてしまったシーン
布のヒダを一枚ずつキッチリと開き、シワを丁寧に伸ばしながら方向を整え、ごわつかないように絞って紐をクルッ、さあこれでばっちり。というタイミングで巻く方向が逆だったことに気づきます。
【7】折りたたみ傘を伸ばしたまま持つシーン
濡れたままの折りたたみ傘をカバンにしまうのは気持ちの良いものではないし、軽く電車に乗る際は降りた駅でどうせまた開くのでいちいちしまいたくない。折りたたんだとしても棒を縮めてしまうと濡れている布の部分が手に接することになる。結果、まるでゲームに出てくる打撃系の武器のように長く伸ばしたまま持つことになったりします。
【8】折りたたみ傘の棒のつなぎ目に髪の毛がはさまるシーン
メカニズムは謎ですが、折りたたみ傘の棒の関節部分に髪の毛を持っていかれることがあります。とつぜんチクッとした痛みが走り、頭をポリポリ掻きながら確認したそこには一本の髪の毛が。行き場のないプチ怒りが宙を漂います。
【9】身に覚えのない傘を発見したシーン
傘立てや物置の奥から「え、誰の?」という傘が出てくることもあるかもしれません。無意識に買ったのか、他人のものを間違えて持って帰ってきたのか、来客が置き忘れていったのか、化学反応かなにかで色や柄が変化したのか、怪奇現象か。真相は謎に包まれています。
今回は以上です。どうもありがとうございました。
皆様よいワンシーンをお過ごしください。
イラストレーター・デザイナー。図形や色面を使った絵づくりベースに、商品や広告などのビジュアル制作をおこなっています。
日常のささいな瞬間を切りとって描いた「ワンシーン画」シリーズはSNSにて随時更新中です。
Web: https://www.r-otomo.com/
Twitter: @R_OTOMO
Instagram: @otomoryosuke
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