CREATOR クリエイティブなヒト
大伴亮介の「日常ワンシーン画」 Vol. 5 電車の中

こんにちは。イラストレーター・デザイナーの大伴亮介です。
日常にはさまざまなワンシーンが存在します。
しかし、そのほとんどは心にひっかかることもなくただ流れ去って消えてしまいがちです。
そんなはかない記憶の雑魚をすくいあげ魚拓のようにイラスト化し、そこになにかしらの考察を記していこうというのがこのコラム『日常ワンシーン画』です。
個人の経験が舞台とはなりますが、皆様にもなにかを感じとっていただけたら幸いです。
第5回 「電車の中」のワンシーン
日常には電車が登場します。
電車はとても便利なものです。「電気列車」の略でしょうか。「電動アシストつき自転車」も略せば電車ですね。
今回はそんな電車の中でおこるワンシーンをすくいあげていきます。
【1】車両の揺れでドアがひとりでに開閉するシーン
古い車両で発生しやすいシーンです。反復横跳びのように左右にひたすら動きつづけるドアは見ていてとても心が乱され、金切り声のように鳴りひびく連結部のきしみ音とセットでお化け屋敷の扉のようにも思えてきます。
【2】つり革のリングが微妙な角度で静止しているシーン
リングとビニール部分のほんのわずかな摩擦力で生み出される視覚的違和感。誰の人生にもなんの影響もおよぼさない優しいワンシーンです。
【3】人の頭に当たりそうでつり革を離しづらいシーン
混んでいる電車でたまに困るのが、つり革から手を離そうとしたらちょうどその真下に人の頭がある状況。このまま手を離せばターザンロープのような軌跡で頭に直撃するし、だからといって「つり革が当たるのでどいてください」と声をかけるのも変です。その人が移動するまで待つか、最悪コツンとぶつかってしまっても大丈夫な程度の軽さで(笹舟をそっと川に流すくらいの優しさで)手を離すしかないわけです。
【4】隣人との距離感を考えて中途半端な位置に座るシーン
「微妙な知り合い」や「今日はじめて会った人」と並んで座る際など、座席の距離感がむずかしい場面はあります。密着するのは抵抗があるし、一席ぶん空けるのも不自然だし。シートの境界線を尻で感じながら落ち着かない時間を過ごすことになります。
【5】隣のリュックのひもがあって座りづらいシーン
たった一本のひもによる鉄壁のディフェンス。コートのすそは気にしてもリュックのひもは本人の体に感覚がないため飛び出ていることに気づきにくいのかもしれません。
【6】席をつめたのに座ってもらえなかったシーン
目の前に二人組が来たので移動して二席ぶん空けてあげた。しかし座ってくれなかった。そういうことは人生においてよくあります。もの悲しい気分になるだけでなく、つめた方向に座っていた人(上の絵だとピンクの服の人)から「いきなり意味もなく近寄ってきた不審者」に思われてしまう恐れもあり、良いことがひとつもありません。
【7】空き缶が車内をころがるシーン
揺れる車内の床を空き缶がコロコロと転がっていて、みんな「自分の足元にだけは転がって来ないでくれ」と願いつづけている。そんなワンシーンはよく見かけた気がするのですが、なぜか最近はあまり遭遇しない気がします。人々のマナーが向上したからでしょうか? ペットボトルやボトル缶(キャップを閉じてバッグにしまうことができる)の普及率と関係があるのでしょうか?
【8】車窓のステッカー広告が剥がされかけているシーン
ちょうど人が触りやすい高さに貼られているせいか、爪で剥がされかけているステッカー広告をたまに見かけます。一度剥がしかけた部分はシワシワに丸まってしまうので、とても残念でかわいそうな状態になります。
【9】発車ベルが鳴ったから急いで飛び乗ったのに意外とまだ発車しなかったシーン
絶対に乗らねばならぬ電車。急に鳴りだす発車ベル。本来乗りたかった車両位置よりもだいぶ手前で飛び乗ったものの、意外とまだまだ発車せず。乱れる呼吸をおさえて平静を装いながら(これだけ余裕あるならもうちょっと先の車両まで行けたのではないか?)と考えたりします。
今回は以上です。どうもありがとうございました。
皆様よいワンシーンをお過ごしください。
イラストレーター・デザイナー。図形や色面を使った絵づくりベースに、商品や広告などのビジュアル制作をおこなっています。
日常のささいな瞬間を切りとって描いた「ワンシーン画」シリーズはSNSにて随時更新中です。
Web: https://www.r-otomo.com/
Twitter: @R_OTOMO
Instagram: @otomoryosuke
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