CREATOR クリエイティブなヒト

イラストレーターせいのちさとの「胸キュン制作日記」vol.1 Super Market (前編)

イラストレーターせいのちさとの「胸キュン制作日記」vol.1 Super Market (前編)

はじめまして。イラストレーターのせいのちさとと申します。
みなさんは、他の人がどんな気持ちで、どんなふうに作品を作っているか、気になることはありませんか?

私は、大いにあります!
ほかの人の制作過程を知ると、その人の頭の中を覗いたようで、非常に面白いものです。
「すごい!自分では全く思い付かなかった!!」
「なんで、このモチーフで作ろうと思ったの?」
「どうやってつくってるの?」
驚きや疑問が次々と湧いてきます。新しい制作のアイデアにつながることもしばしば。

本連載では、私がものをつくるまでのいきさつ、途中経過から完成までを紹介していきます。題して「胸キュン制作日記」。よろしければお付き合いください。


はじめはhaconiwaさんの10周年記念イベント「haconiwa Super Market」に出品する作品の制作過程を、全2回でお届けします!


4月××日 (晴れ)

今日は「haconiwa Super Market」の出品作品について考えてみようと思う。
制作の中で、一番好きなのがアイデアを考えるところ。とてもワクワクする。

さて、テーマは「Super Market」。切り口次第でどんな作品にすることもできる。
私はイラストレーターなので、オーソドックスにイラストを描く方向でいきたい。

制作を念頭に置きつつ、あらためてスーパーの魅力について考えてみる。自分は主に売られている「食べ物の見た目」に興味を持っているようだ。

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対して、スーパーという施設全体・買いもののシステム・レジ・お店の人・お客さんなども、もちろん面白いと思うが、今回はあまり食指が動かない。食べ物関連でいこう。

さらに、具体的なアイデアを考えていく。
自分が楽しく描けて、かつ見た人に喜んでもらえそうなものにする。多くの人にとって、わかりやすい、明るい雰囲気が好ましいだろう。

食べ物の絵をカラフルに色鉛筆で描いていくのはいいかもしれない。少々ありきたりの感もあるが、イラストがいい感じで描ければ、かわいい作品になりそうだ。

ためしに2、3個の食べ物の絵を想像してみる。

悪くはない。しかし・・・なんだか味気ない。食べ物2、3個だったらうちにもある。

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ちがう。こうじゃない。
スーパーの楽しさは、とにかくたくさんの食べ物があるところなのだ。

「たくさんのもの・・・?」
「そうか!とにかくたくさん!たくさん食べ物を描きたい!」
「いや、食べ物を描きたいんじゃない!色とりどりの食べ物の中に囲まれている楽しさ、スーパーマーケットの楽しさそのものを描きたいんだ!!」

たくさんの食べ物のイラストが並んでいる様子を想像する。
圧倒的胸キュンである。
脳内ではもう完成した気になって祝杯をあげはじめた。

膨らんでいく妄想

調子に乗って、さらに胸キュンなアイデアを思いついてしまった。
食べ物のイラストを「赤」と「緑」のグループに分けたら面白いのではないだろうか。

赤の食べ物のイメージは、生命力やエネルギーが満ちている感じだ。見ていると元気になってくるような作品にしたい。

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対して、緑の食べ物のイメージは癒しや爽やかさだ。見ているとリフレッシュできるような作品にしたい。

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そして、それぞれのイラストはZINEにもまとめよう。色違いの2種類のZINEを想像し、妄想は加速する。

今度は、全体の統一感を大切にするために、モチーフ選びや描き方にいくつかルールを設ける。

たとえばこんなルール。
「全てのモチーフはA5画用紙縦に描く。背景は白無地。1枚につき1つのモチーフ。」
こうすることで、カタログのような雰囲気になるだろう。

また、こんなルールも。
「海外の食品も置いてあるような、大きなスーパーをイメージしてモチーフを考える。」
スーパーの雰囲気なども、想像しておくことで、全体の統一感が出るのではないか。

他にも色々とルールを設けて全体のイメージを決めていく。
よし、かなり方向性が決まってきたぞ。

4月××日 (くもり)
モチーフ決め & アイデアスケッチ

「赤のグループ」と「緑のグループ」にどんなモチーフを入れるか考える作業と、アイデアスケッチを同時並行的に行なっていく。
1枚1枚のイラストの構図、色味、パッケージのデザインを考えるのは、難しいがとても楽しい作業だ。この段階でのアイデアスケッチをいくつか紹介してみよう。

【赤のグループ】

■トマト缶
トマト缶は問答無用でかわいいモチーフだ。できれば赤グループを牽引するにふさわしい存在となっていって欲しい。
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■コーレーグース
泡盛に唐辛子を漬け込んだ、沖縄の辛味調味料。泡盛のラベルが素敵すぎるので、そんな雰囲気にできたらよいと思う。
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■ビーツ
ビーツを切った時の鮮やかなピンクはとても美しい。ここはひとつ、断面を積極的に見せていきたい。(スーパーで切って売られていることはほぼないが)
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【緑のグループ】

■ピクルス
こちらは緑グループの主役に抜擢された。緑グループらしい爽やかさと、楽しく明るい雰囲気を兼ね備えたルックスがたまらない。
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■スイスチャード(別名:うまい菜)

スイスチャードという野菜をご存知だろうか。このスケッチのように、茎がピンクやオレンジなど、とても鮮やかなのだ。味もおいしい。あまり知られていないので、モチーフにするかどうか迷ったが、緑グループに華やかさを添えるために、急遽参加してもらうことにする。
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アイデアスケッチの完成

全モチーフの大まかなアイデアスケッチが出来上がった。こちらはパソコンに取り込んで一覧にしてみたものである。ちなみに、空白があるのは、失敗したスケッチをパソコンで消したからである。

【赤のグループ】
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【緑のグループ】
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こうしてたくさん並ぶと結構かわいい気がする。あとはイラストを1枚1枚描いていけばよい。楽しみだ。

しかし、このときはまだピンときていなかった。「40個のイラストを制作する」ということが意味することを。

いや、本当は気づいていたのかもしれない。気づいていないわけはない。

このあと、長く険しい試練の日々が待ち受けているのであった。
(後編へつづく)

イラストレーター/せいのちさと

イラストレーションを通して、「世の中に胸キュンなものをもっと増やしていきたい」という気持ちで活動しています。鉛筆や色鉛筆、ペンなど、アナログの画材が大好きです。

HP:https://seinochisato.com/
Instagram:https://www.instagram.com/seinochisato/
Twitter:https://twitter.com/kyuseisya_poppo

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