CREATOR クリエイティブなヒト
イラストレーターせいのちさとの「胸キュン制作日記」vol.2 Super Market (後編)

はじめまして。イラストレーターのせいのちさとと申します。
みなさんは、他の人がどんな気持ちで、どんなふうに作品を作っているか、気になることはありませんか?
私は、大いにあります!
ほかの人の制作過程を知ると、その人の頭の中を覗いたようで、非常に面白いものです。
「すごい!自分では全く思い付かなかった!!」
「なんで、このモチーフで作ろうと思ったの?」
「どうやってつくってるの?」
驚きや疑問が次々と湧いてきます。新しい制作のアイデアにつながることもしばしば。
本連載では、私がものをつくるまでのいきさつ、途中経過から完成までを紹介していきます。題して「胸キュン制作日記」。よろしければお付き合いください。
第2回はhaconiwaさんの10周年記念イベント「haconiwa Super Market」に出品する作品の制作過程の後編です!
前編はこちら
崩壊と再構築
「SUPER MARKET」の制作は、順調に進んでいるかのように見えた。しかし、ここである問題がもちあがってきていた。
現実を認めるのが怖いので、3日ほど放置していたが、さすがに限界だ。
勇気を出してhaconiwa編集部の方に連絡する。
「ごめんなさい。イベントまでに当初の予定だった40枚のイラストが描き終わらなさそうです。出品数を減らしてもよいですか。」
描き始めてみると、工程に時間がかかり、どう考えても終わらないことがわかったのだ。今後は、より余裕をもってスケジュールを組むことが大切である。
諦めて、32点のイラストをイベントに出すことにする。モチーフを削って、こんなラインナップになった。
失敗した時は成長のチャンスだといわれている。「あのときの失敗のおかげで、今があるのだわ・・・」と思えるようになりたいものだ。
制作風景の紹介
ここで、ある作品の制作風景を紹介してみたい。
モチーフはドライソーセージである。今回はフランスの「ソシソンセック」という種類のドライソーセージを描いていく。
まず、下描き用紙と鉛筆を用意する。枠線や方眼はAdobe Illustratorでつくった。自分でカスタマイズできてとても便利だ。Illustratorがなくなったら、私は生きていけない。
ドライソーセージ本体や、周りを包むネット(網)の「基本の形」を描く。はっきり言ってめんどくさい。きっちりしているのは苦手なのだ。でも、この作業を丁寧にやらないと、あとで世にも恐ろしいことが起きる。
「基本の形」に沿って細部を描き込む。ソーセージの形をガタガタさせたり、ネットの形をユラユラさせたり、貼ってあるシールの文字を描き込んだりする。ここまで来ると楽しくなってくる。
次は本番の画用紙に色鉛筆で描いていく。使う色鉛筆は、この年季の入った色見本を見ながら、あらかじめ決めておくことが多い。
下描きの上に画用紙を載せて、色鉛筆でなぞっていく。このとき、トレース台という文明の利器が活躍する。トレース台もなかったら生きていけない。たまに己の脆弱性にゾッとさせられる。
なぞりおわったら、下描き用紙を外して、描き込んでいく。
まずはドライソーセージの断面から描いていこう。
文字を描く時には私の全集中力を注ぎ込んでいる。本当のところを言うと、1文字描いたら半日は休みたいところだ。
ドライソーセージの表面を描く。表面に白い粉をふいている感じがでると、おいしそうに見えるだろう。
かなり描き込みが進んだ。もうすぐ出来上がるという時、幸せな気持ちがやってくる。
そして、完成した作品はこちら。補色のオレンジと青を使ったパッケージ?が胸キュンである。
ついに32枚が完成!
10月某日、全イラストが完成した。一つのテーマで、ここまでの枚数を描いたのは今回が初めてだったので、感慨深いものがある。
正直に言うと最後の方はかなりキツかった。
プロジェクトが始まったときはあんなに元気いっぱいだったのに、終わりの方では完全に息切れしている。
夫に聞いてみた。
「なんで最後の方はこんなにキツいのかな?最初と同じことをやっているのに」
「マラソン選手だって、フルマラソンの最後の方がキツくない人はいないでしょ」
言われてやっと気がついた。人間は走る距離が短かろうが長かろうが、ロボットのようにずっと同じように走れるものだと思っていたということに。そしてそんな人間はいないということに。
しかし、テンパりつつも、完遂させることができた。応援してくれた周りの人と、頑張ってくれた自分の身体に、心から感謝である。
最後に、出来上がったイラストをいくつか紹介しよう。
■コーレーグース
前回の連載でも触れたコーレーグース。唐辛子の花や葉っぱなどを、紅型風にあしらってみた。自分ではとても気に入っている。
■ざくろ
つぶつぶの赤く透き通った美しさを表現したいが、リアルに描きすぎるとほかのモチーフと画風が違ってしまう。バランスを整えるのが、本当に難しかった。
■パスタ
「カラフルなトリコロール(3色)のパスタを描いたら、絶対かわいい!」と思って描き始めたが、ほとんど精神修行だった。もっと複雑な「ねじってある形のパスタ」「いろいろな動物の形のパスタ」とかにしていたら、発狂していただろうと思う。
■オイルサーディン(魚の缶詰)
魚と外国の海をイメージしたデザインを考えてみた。海の風景が若干、ヒッチコックの「鳥」みたいな不穏な空気を醸し出してしまってはいるものの、非常に気に入っている作品のひとつだ。
■番外編:スイスチャード(不参加)
スイスチャードは前回の連載で紹介していたが、残念ながら今回の「SUPER MARKET」には参加しないことになった。なぜなら、完成作品がどう見ても邪悪な植物になってしまったからだ。正体不明の攻撃をしかけてきそうである。今回のテーマには残念ながらそぐわない。個人的にはけっこう好きなのだが。
(実際のスイスチャードはとってもおいしい、栄養価も高い野菜だよ☆)
32枚の作品を並べてみると、なかなか圧巻で、胸キュンな「SUPER MARKET」が出来上がったと思う。最後に宣伝で恐縮だが、これらのイラスト原画やイラストを載せたZINEを以下のイベントで展示・販売するので、お時間のある方は是非見に来てほしい。
haconiwa creators exhibition 2022『SUPER MARKET』in Tokyo
会期:2022年10月22日(土)-10月23日(日)
時間:11:00-18:00 ※最終日は17:00まで ※最終入場は終了時間30分前まで
会場:コクヨ東京品川オフィス「THE CAMPUS」北館1F COMMONS
東京都港区港南1-8-35(JR品川駅港南口より徒歩3分)
※大きな階段の裏側に入り口があります。
入場料:入場無料(ただし、事前入場予約が必要となります)
WEB展示会場:https://haconiwa10th.studio.site/
イラストレーター/せいのちさと
イラストレーションを通して、「世の中に胸キュンなものをもっと増やしていきたい」という気持ちで活動しています。鉛筆や色鉛筆、ペンなど、アナログの画材が大好きです。
HP:https://seinochisato.com/
Instagram:https://www.instagram.com/seinochisato/
Twitter:https://twitter.com/kyuseisya_poppo
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