CREATOR クリエイティブなヒト
大伴亮介の「日常ワンシーン画」 Vol. 8 やってみる

こんにちは。イラストレーター・デザイナーの大伴亮介です。
日常にはさまざまなワンシーンが存在します。
しかし、そのほとんどは心にひっかかることもなくただ流れ去って消えてしまいがちです。
そんなはかない記憶の雑魚をすくいあげ魚拓のようにイラスト化し、そこになにかしらの考察を記していこうというのがこのコラム『日常ワンシーン画』です。
個人の経験が舞台とはなりますが、皆様にもなにかを感じとっていただけたら幸いです。
第8回 「やってみる」ワンシーン
日常にはやってみることが登場します。
理由もなく、やってみる。やってみて、やっぱりなにもない。
今回はそんなやってみたワンシーンをすくいあげてみます。
【1】もう何もないシールの枠を剥がしてみるシーン
抜け殻のようになったシールの枠だけを剥がしてみることがあります。剥がしたところで貼りたいわけでもないし、クシャッと汚く丸まってしまうし。ただ、よくよく考えてみれば枠もシール部分も素材はまったく同じなわけですし、枠の形をしたシールだと思えばこれも立派なシールなのかもしれません。
【2】トイレットペーパーの芯を強引につなげてみるシーン
筒状のものがふたつあればつなげてみたくなるのが人間です。同じ径なので当然うまくスポッとはまるはずもなく、つぶしながら強引にねじこんでつなげた結果、それ以上でもそれ以下でもない物体が完成します。
【3】ストロー袋の接着剤の固まりをむしり取ってみるシーン
パックとストローをつなぎとめている乳白色のもの。指先で遊べるほどベタベタしているわけでもなく、揉んで楽しいほど柔らかくもない。ただ、これをベリッとむしる瞬間にしか味わえない感触は確実にあります。
【4】ペンのキャップに指をはさんでみるシーン
このようにキャップに指をはさむとすごく気持ちがいいです。爪にツボがあるのかもしれません。
【5】ガムの外側の包み紙だけ抜かずに残してみるシーン
板ガム自体が世の中から減ってきた気もしますが、銀の包み紙だけをスススと抜いてガムを食べきると、このようなものができあがります。SF映画に出てくるビームがいっぱい発射される武器、もしくは空気清浄機のフィルターのような。
【6】水滴を指であつめて落としてみるシーン
雨が降ったあと、鉄棒や手すりにきれいな等間隔で水滴がぶらさがっているのを見かけます。それを指でツーっとなぞって落としていくのは、剃り残しがないカミソリのCMのような爽快感があります。手はびしゃびしゃに濡れます。
【7】瓶のキャップの輪っかを取らずに飲んでみるシーン
落ち着かない見た目ではありますが、この輪っかをちぎってしまうと鋭利で痛々しいゴミが出てしまうので、このように付けたまま飲むという人は意外と多いのではないでしょうか?。
【8】ボールチェーンの留め具に玉を2個入れてみるシーン
人が生きていく上で抱えている恐怖のひとつに、バッグにつけたボールチェーンが知らぬ間に外れて落としてしまったらどうしよう、というのがあります。ボールを2個はさみ込んだからといって外れづらくなるわけではないとは思いますが、おまじないとしての効力はありそうです。
【9】クリップを伸ばしてみるシーン
たいくつな授業や会議の最中にぼーっとしていると、無意識にクリップを伸ばしていることがあります。こうなったらもう最後まで伸ばしきって直線を目指したくなり、固定する機能を失ったクリップはただのゆるい針金と成り果てます。
【10】箸袋を開いてみるシーン
フチだけが接着されている袋をつぅーと開いていく気持ちよさ。絵の右上あたりにある細いゾーンをきれいに剥がすのが意外と難しかったりします。箸袋もひらいたので、コラムもおひらきとさせていただきます。
「日常ワンシーン画」の連載コラムは今回が最終回です。読んでいただき本当にどうもありがとうございました。
それでは皆様、これからもよいワンシーンをお過ごしください。
大伴亮介
イラストレーター・デザイナー。図形や色面を使った絵づくりベースに、商品や広告などのビジュアル制作をおこなっています。
日常のささいな瞬間を切りとって描いた「ワンシーン画」シリーズはSNSにて随時更新中です。
Web: https://www.r-otomo.com/
Twitter: @R_OTOMO
Instagram: @otomoryosuke
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