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不変であることの魅力

はじめまして今回から箱庭に仲間入りしましたイソザキです。
食とデザインをこよなく愛しています。

ところでみなさん、食品パッケージはお好きですか?
近頃は百貨店や地域のアンテナショップなどでおしゃれなパッケージに出会うことが多く、ついついジャケ買いしてしまいます。
その一方、私を虜にしているのが味もパッケージもほぼ昔のままのロングラン商品。「レトロフーズ」と呼んでいます。

今回は、そんなレトロフーズを3つご紹介しましょう。

鈴屋の「レモンケーキ」

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鈴屋さんは大正13年創業、和菓子・洋菓子共に様々な人気商品を作られてきました。昭和55〜60年頃に鈴屋さんのレモンケーキが登場します。
当時、お菓子の金型の業者さんがレモン形の焼き菓子の型を開発し、全国の洋菓子店で作られ、ポピュラーなお菓子となりました。

包装紙がきゅっと閉じられた様がなんともお行儀よく、形とサイズ感はまさにレモン。
昔はお客様が来た時のお茶請けにするなど、ちょっとかしこまった時に食べられる、お菓子のイメージでした。

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レモンケーキといえば黄色の紙に緑と赤の差し色の印刷でキャンディ包みしているのが私の中では王道のイメージ。鈴屋さんはまさにイメージのど真ん中のビジュアルです。
包装紙はほぼ変わらぬものをお使いのようですが、代表の鈴木さんのお話しでは「商品そのものの良さにこだわりたいので、包装紙は既製のものです。」なのだそう。
でもこの黄色の薄紙を見ると嬉しくなってしまうのは私だけではないはず。

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レモンケーキの特長をお聞きしたところ「すべてのお菓子においても言えることですが、標準的なものから一手間ないしは二手間かけることを心がけています。」と、これは詳しく聞かずにはいられません。
では、そのこだわりご説明しましょう。

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まず表面のコーディングは程よい酸味のあるレモン風味のホワイトチョコ。これをたっぷり全面コーティング。

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ほら、裏面もしっかりコーティングされていますよ。
鈴屋さんでは機械を使わず職人さんが一つ一つ手作業でコーティングされているそう。簡単なことではありません。だから1日に作る数に限りがあります。それでも丁寧に作ることを大切にされています。

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半分に切ってみました。柔らかでホロホロのレモン色のカステラの中にはバニラクリーム!このクリームは濃厚なバタークリームがベース。甘みと酸味のバランスが良いです。

鈴屋さんがお店を構える和歌山県田辺市は温暖な気候でレモンの産地。約20年前からレモンは田辺産を使用しています。レモンに限らず、素材はできるだけ良いものを、地元のものをモットーとされています。

ここ数年、レモンケーキの人気が再び高まっているそうで、新商品として作るお店も増えているそうです。
懐かしさと新しさのあるレモンケーキ。手土産として持って行きたくなるお菓子です。

木次乳業の「木次パスチャライズ牛乳」

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次のレトロフーズは木次乳業さんの「パスチャライズ牛乳」。
3年の開発期間を経て、昭和53年に発売。
赤と黄色のパッケージって牛乳ではあまり見かけませよね。でもこのパッケージ、ちゃんと牛乳っぽい。

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パスチャライズ牛乳は1000ml、500ml、200mlと容量別で3種類あります。どれもデザインは同じなのですが、紙パックの大きさに合わせて「木次牛乳」の文字を細長くしたり、潰したりしてバランスをとっています。
私は200mlのデザインがオススメ。手のひらに乗る小さな紙パックにちょっと潰した文字がバランスよく配置されています。

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2色刷りかと思いきや、バーコードのみブルーの3色刷りでした。コードを正確にスキャンするためにこうなったと推測できますが、これが偶然の産物で、いい感じに差し色になっています。

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バーコードの下にはこんなメッセージが入っていました。ほっこりします。

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ところで「パスチャライズ」ってなんだか音感のよい言葉ですがどういう意味かご存知ですか?
私は知らなかったので調べてみました。
主に牛乳に用いられている加熱殺菌法のひとつとして「パスチャリゼーション(またはパスチャライゼーション)」という方法があり、これを用いた牛乳を「パスチャライズ牛乳」と呼ぶそうです。
「木次パスチャライズ牛乳」は65℃30分の低温殺菌だから栄養成分や牛乳本来の風味を損なわないのだそうです。

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気になるお味の方は…
ちょっと驚きました。ふだん飲んでいる牛乳とはなんだか違います。
甘みとコクが強い。
これはパスチャリゼーションだけによるものではありません。奥出雲の牧場で化学肥料を使わない牧草を食べてのびのびと育った元気な牛のお乳だからです。良い素材の味をそのまま届ける製法でできたのがこの牛乳ということです。
そのこだわりをもっと知りたい方は公式サイトを覗いてみてくださいね。

つるやパンの「サンドウィッチ」

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ラストはつるやパンさんの「サンドウィッチ」。
昨今、具材がたくあんという斬新な発想の「サラダパン」で全国でも知られるようになったつるやパンさん。
でも実は、地元滋賀県での一番人気がこの「サンドウィッチ」なんだそうです。

つるやパンさんは昭和26年創業。戦後間もなく「おにぎりに変わるパンがほしい」とのお客さまの声から生まれたのが「サンドウィッチ」と「サラダパン」だったそうです。当時はとてもハイカラな食べ物だったと思います。

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現在代表の西村さんのおばあさまが雑誌で見たマヨネーズソースを作ってみたところ、とても美味しかった。また、アメリカではパンにハムなどの具を挟んで食べていると知ったものの、当時のお肉のハムは高級品。手軽に食べられる代わりのものはないかと探したところ、大手ハムメーカーが作っていた魚肉ハムとの相性がピッタリ。この二つをはさんでできたのが「サンドウィッチ」です。ちなみに、昨年この魚肉ハムの製造終了に伴い、しばらくの間、魚肉ソーセージを使用していましたが、製造していただけるメーカーさんと出会うことができ、半年の試作を経て今年3月に今までと同じ魚肉ハムでの復活を遂げました。

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そして主役のパンですが、こちらも「サンドウィッチ」のために作られました。まん丸の形が特長です。実はこの丸さが美味しさの秘訣なんです。

四角い食パンは耳が硬くなりがち。丸い型で焼くと火の通りが早く、耳まで柔らかく焼ける。昔の食パンは丸型がスタンダードだったそうです。
味はほんのり甘く、ふわふわの食感。塩っぱめの魚肉ハム、たっぷりのマヨネーズとピッタリです。

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ではパッケージを見てみましょう。潔い1色刷り。グッときます。
こちらは創業者でもある西村さんのおじいさまによるデザインです。発売当初からリニュアールはされていないということ。西村さん曰く「魚肉ハムだから漁網をイメージしているかもしれませんね。真意のほどはわかりませんが。」もしそうであれば、青色も海のイメージということでしょう。
フォントのレトロ感も抜群ですね。

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「サンドウィッチ」のために作られたこの食パンは現在ラスクとしても販売しています。
そしてこの4月から滋賀県長浜市にサンドウィッチが主役の2号店がスタートしました。お客さまが好きな具材をチョイスし、オーダーしてから作る進化したサンドウィッチです。これは楽しそう!長浜に観光に行かれた際に立ち寄ってみてくださいね。

◆参照サイト
鈴屋:http://dxcake.jp
木次乳業:http://www.kisuki-milk.co.jp/index.html
つるやパン:http://www.tsuruyapan.jp/