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棚の間を探検するように建築模型を鑑賞できる、国内唯一のミュージアム。

こんにちは。箱庭のシオリです。
今、建築好きやアート好きの間で話題となっている場所に遊びに行ってきたので、レポートしたいと思います!

6/18、天王洲アイルに「建築倉庫ミュージアム」がオープンしました。

“天王洲”と聞くと、以前ご紹介した「PIGMENT」を思い出します。そのPIGMENTから程近くにオープンしたのが今回ご紹介する「建築倉庫ミュージアム」。手掛けているのは、もちろん、天王洲アイルを中心に保存保管業を展開している会社「寺田倉庫」です。

PIGMENTでは、アートや伝統文化を“保存する”というコンセプトでしたが、今回の建築倉庫ミュージアムでは、「建築模型を保存・保管している倉庫をそのまま展示としても見てもらおう!」という場所なんだそう。
しかも、国内外で活躍する日本人建築家や設計事務所による、大変貴重な建築作品の模型ばかりが集められているというから、驚きです!

早速、館内を覗いてみましょう。

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まず出迎えてくれたのは、私の身長の2倍以上の高さがある大きな扉!倉庫に入っていくワクワク感がありますよね。この扉を入ると受付があり、その横にはさりげなく建築模型を入れるための“箱”が積んで置いてありました。模型を守るものとして大事なものであり、箱の開け方も模型の一部という想いも込めて、置かれたんだそうですよ。この段階ですでにこだわりが詰まってます!

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受付で私たちを出迎えてくださったのは、館長の徳永雄太さん。今回特別に館内を案内してくださいました!現在展示・保存されている模型は、徳永さんお一人で集められたんだそうです。こだわりの展示方法や、おすすめの楽しみ方などを教えて頂きました。

さぁ、いよいよ展示スペースへ!

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中へ入ると、ザ・倉庫の雰囲気が広がっていました。広さ約 450 ㎡、天井高 5.2m の大空間に合計 100の棚が並ぶ光景は、圧巻!すべてオーダーメイドだという白い棚に、たくさんの建築模型が置かれています。どこから見ようか迷ってしまいますが、現在埋まっているのは6割くらいだそう。これからどんどん増やしていくそうです。

日本の建築模型の素晴らしさを実感できる場所。

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(入ってすぐのところで目に留まった坂茂氏の作品たち。左:紙の教会、右:壁のない家)

日本の建築は、世界でも注目が集まっているそうで、建築を見ることを目的に海外から日本に遊びにくる方も少なくないんだとか。日本で暮らしていると、日常でそれを肌で感じることは少ないですが、こうして一か所に集まった数々の作品を見ると、日本人建築家が世界で活躍していることを実感することが出来ます。

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(山本理顕氏設計「ザ・サークル―チューリッヒ国際空港複合模型」)※写真奥側の空港建物が山本氏設計

実際の建築物だけでなく、その模型にも日本ならではの特徴があるんだそうです。
海外では、3Dプリンターを使って木やプラスチックなどで作られることが多いのですが、日本では“紙”が多用されるんだとか。また、ひとつの建築物のために作られる数も海外に比べると格段に多く、500~600個、多いときは1,000個ほどになることもあるそうなんです。
繊細な素材を使い、作られる数も膨大な量になる。だからこそ、プロによる保存が可能な建築倉庫が必要なんですね。

実際に建つことのなかった幻の建築を、模型で見ることができる!

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この模型は、香山壽夫氏の「カトリック四谷聖イグナチオ教会」のコンペティション模型です。東京・四ツ谷にあるこちらの教会ですが、20年以上前にプレゼンが行われ、残念ながら採用されなかったのがこちらの建築模型なんです。

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まさに“幻”となったわけですが、建築としては評価されていて、それをこうして間近に見られるようになったのは建築倉庫ミュージアムが出来たからなんです。ちなみに、こちらの木には“へちま”が使われているんですって!

建築家の頭の中が垣間見える検討模型。

ここには、竣工模型や構造模型など、いろんな種類の模型が置かれていますが、中でも注目したいのが「検討模型」です。検討模型とは、建築家が建築設計を行う際に設計内容を確認するために作る簡易模型のこと。

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o+h設計「小屋と塔の家」の検討模型を見てみましょう。3つ並んだ模型を左から順に見てみると、まずは建ぺい率(建築面積の敷地面積に対する割合のこと)や構造を作ってみて、その次の段階としてドアの付け方などのディテールを詰めていく。最後にアイデアやデザインを加える、という考え方の過程がわかります。

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こちらは、北川原温氏設計「中村キース・へリング美術館」の完成模型。オブジェのように見えるけど、美術館なんですね!検討模型と合わせて見ると、まるで彫刻を造るようにアートな視点で発想されて作られていったのが分かりました。

完成された建築だけではわからない、作られる過程が目に見えて分かるのは、面白いですね。

その場の感動を写真に収めて楽しめるミュージアム。

建築模型ミュージアムでは、館内の写真撮影がOK(フラッシュ撮影はNG)なんです。「この模型の繊細さ、すごい!」「この建築は実物見てみたくなるな~!」という感動を、写真に収めて楽しむことが出来るのは、うれしいポイントです。

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かわいい!と思わず撮影したのは、o+h設計「東松島 こどものみんなの家」の完成模型。

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こちらは隈研吾氏の「カサ・アンブレラ」という洒落のきいたネーミングの作品ですが、カップルが佇む様子が素敵ということで、撮影する方が多いんだそうです。

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こちらも同じく隈研吾氏の作品。一目瞭然、浅草寺の雷門です。雷門を臨む近くの建物のプレゼンに使われた模型ですが、雷門自体がこのクオリティ!思わずカメラを向けたくなります。

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そしてその近くにあるのは…スカイツリーではないですか!この眺めには、ちょっとした館長のこだわりがあるんですよ。実は、この模型の浅草とスカイツリーが、実際の地図とだいたい同じ配置になっているんです!しかも、ちょうど棚と棚の間の通路は、隅田川に見立てられます。この館長・徳永さんのこだわりポイントには、びっくり!たまに、これに気付く鋭いお客さんもいらっしゃるとのこと。

思わず写真に収めたくなるというのは、建築模型がアートであることが分かりますね!

倉庫だから置き場所や、作品が常に変化する。

一般的に美術館の展示は、会期中に展示場所や作品が変わっていくなんてことは、なかなかありませんよね?でもこちらの建築模型ミュージアムは、倉庫である以上、新しい模型が搬入されたり、置き方が変えられたりするということが起こります。「今日新作入荷しました」なんてタイミングに出会う可能性だってあるのです。

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私たちがおじゃましたときには、田根剛氏が「21_21 DESIGN SIGHT」で開催された「建築家 フランク・ゲーリー展 “I Have an Idea”」のために作ったというゲーリー自邸展示模型が、特別展示として置かれていました。
いつも新鮮さをもって楽しめる場所だからこそ、一度きりでなく何度も足を運びたくなります。

他にもご紹介したいものがたくさんありましたが、あとは実際に遊びに行ってのお楽しみ!今日ご紹介したのは、ほんの一部でしかありません。建築を勉強している方は何時間いても楽しめるのはもちろんのこと、建築の知識がないという方でも、模型の美しさや倉庫という他にはない展示施設に、感動すること間違いなしですよ。
平日は21時まで営業(20時最終入館)しているのでお仕事帰りに、休日はじっくり時間を使って、是非遊びに行ってみてください~!

    建築倉庫ミュージアム

    URL:http://www.archi-depot.com/
    開館日:火曜日〜日曜日
    (月曜日休、ただし月曜日が祝日の場合は翌火曜日休)
    開館時間:11:00-21:00 入館料:一般1,000円、高校生以下及び18歳未満500円(税込)
    住所:東京都品川区東品川2-6-10 寺田倉庫本社ビル1F