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ひとつのデザインが生まれたお話から、改めて感じること。

こんにちは、シオリです。
普段、箱庭編集部は東京を拠点にして、仕事をしています。そうすると、どうしても東京を中心とした情報が多くなりがちなのですが、最近ではデザインで地域を盛り上げようとする動きが活発だったり、東京のデザイナーさんが地域のデザインを手掛けたりと、そんな情報を耳にすることも増えてきたような気がします。

今日は、最近出会った、“地域”の素敵なデザインをご紹介したいと思います。
佐賀県にある、「埋金木工所」のデザインです。

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埋金木工所は、佐賀県にある会社。組子や漆喰などの様々な技術を持ち、「木と土と紙で創る住空間」をコンセプトに家づくりを行なっています。そのロゴは、扱う素材である木・土・紙の3つをバランス良く配置し、家の屋根の形と佐賀の豊かな自然をモチーフにしたデザインになっています。

素敵な“地域のデザイン”のお話、聞いてみました。――佐賀県「埋金木工所」のデザイン
WEBサイトを見てみると、まず飛び込んでくるのは、美しい山林の風景。“木工所”というと、WEBサイトでは手掛けた内装や作業所の写真が一番に使われそうですが、良い意味で期待を裏切ってくれました。そんなところから、自然から生まれる素材を大切に、住空間を作っていることが伝わってくるような気がします。

素敵な“地域のデザイン”のお話、聞いてみました。――佐賀県「埋金木工所」のデザイン
このデザインをつくられたのは、グラフィックデザイナー・栗崎洋さんです。
株式会社佐藤卓デザイン事務所から2015年に独立し、今はフリーで活躍されています。普段は東京を拠点にしながらも、他の地域の案件や、海外のお仕事をすることもあるそうです。そして、栗崎さんのデザインした埋金木工所のロゴデザインは、Tokyo TDC賞のロゴ部門に入選されています。

今回、そんな栗崎さんに、埋金木工所の素敵なデザインが生まれたときのお話を伺いました。

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栗崎さんは、埋金木工所の三代目・埋金宏光氏とアメリカの留学先で出会ったのが縁で、このデザインを引き受けることになったんだとか。依頼を受けたあとは、最初の現地視察で、埋金木工所に「木と土と紙で創る住空間」というコンセプトがあると聞きます。そこから、木・土・紙の3つのバランスで成り立っている会社なんだということや、家や自然を連想するモチーフを組み込むことなど、言葉で詰めていく作業をしながら、ロゴを形にしていったそうです。

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また、ロゴにも山を連想させる形として組み込まれた佐賀の豊かな自然は、WEBサイトにもふんだんに取り入れようと、以前から風景の写真が素敵だと思っていた写真家・村松正博氏にお願いしたんだとか。4日間程の時間をかけて、地元の方も知らないような場所へ行き撮影したという写真は、WEBサイト全体の雰囲気を作り上げています。

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サイト内には、「POSTER」というカテゴリ―があり、そこでは埋金木工所の様々な光景が見られるようになっています。その写真たちは、ぬくもりや温かさを感じるものばかり。例えばこちらの木くずの写真は、作業している方の汗まで伝わってきそうですよね。こういったストーリーを感じさせるデザインに、こだわったそうです。

私達は、WEBサイトを見る時、より視覚的に美しいもの、スト―リーがあるものに、自然と引き込まれるようにして見ているのかもしれません。その“引き込まれる”感覚が実感できるサイトになっているんです。

部分的な依頼でも、全体で考えた提案を。

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最初は、“ホームページをリニューアルしたい”という依頼だったそうですが、栗崎さんは、依頼を受けた時点でロゴデザインをつくるところから提案しようと思ったんだとか。
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デザインをするとき、デザインしたものが周辺でどう機能していくのか、そして全体でどのようなバランスになるのかを考えるという栗崎さん。例えばWEBサイトだけの依頼だったとしても、ロゴやカタログ等も一緒に提案をした方が良いとなれば、一緒に提案をする。ある程度形にして見せてあげることで、クライアントもイメージしやすくなり、納得してもらえるんだそう。

そんな、全体から捉える考え方によって生まれたロゴだったんですね。

地域デザインの仕事で、大切なこと。

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地域のデザインのお仕事をするにあたって、東京での仕事と違うことはあるんでしょうか?それについて聞いてみると、特に仕事の仕方を変えるということはないけれど、改めて考えてみると、地域の習慣やペースを尊重した上で、話をより大切にしているということかな、とのお答えが。住む場所が違えば生活習慣に違いがあるのは当然のことで、東京で当たり前に思っていることが、当たり前でないということもある。それをきちんと感じ取り、その地域の習慣になるべく合わせるようにすることが大切なんですね。

確かに、違いがあるからこそ、会話をしようとする。だから、クライアントの想いをより反映させることが出来たり、その“違い”に魅力を見出すことが出来たりするのかもしれない。そんな風に感じました。

デザインから広がる、様々な繋がり。

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冒頭でも触れましたが、栗崎さんがデザインされた埋金木工所のロゴは、Tokyo TDC賞のロゴ部門で入選しています。そこから埋金木工所のことを知った方もいるでしょうし、その他にもデザイン関連の取材が来たこともあったんだとか。そんな風に、いろいろな繋がりを生み出している埋金木工所のデザイン。これからも様々な繋がりを生み出してくれるに違いありません。

私達も、普段は東京にいるけれど、いろんな地域の方と交流することが出来れば、そこから様々な出会いがある。WEBが発達してSNSが活発な今だからこそ、そういったことが可能だし、積極的に取り組んでいける時代でもあるんだなぁと、改めて感じたのです。

*  *  *

ひとつのデザインが生まれたお話、いかがでしたか?
聞いてみると、自分の普段の仕事を見直したり新たな視点を感じられたりと、新鮮な気持ちになりました。
これからも、もっともっとたくさんの、素敵なデザインに出会えますように。

    ◆お話を伺った方
    栗崎洋
    2社の実務経験を経て、株式会社佐藤卓デザイン事務所に入所(2012-2015)。
    様々な案件に関わった後、2015年独立。
    紙媒体を中心としたグラフィックデザイナーとして活動している。
    http://www.hiroshikurisaki.com/

    ◆参照元サイト
    埋金木工所
    http://www.umegane.com/