アジアンタイポグラフィデザイン

書体好きのみなさん、必読の1冊。

こんにちは、箱庭編集部 moです。
デザインをするとき、デザイナーやクリエーターのみなさんにとって文字はとても大事な要素の1つだと思いますが、その中でも“漢字”は私たち日本人にとって避けられない重要な言語のひとつです。
今回ご紹介するのは、そんな漢字を含むアジア圏の優れたタイポグラフィを集めたデザイン書『アジアンタイポグラフィデザイン』です。書体好き・文字好きのみなさんはきっと興味をそそられる内容となっていますよ。

アジアの表意文字に、いかなるデザインが可能か?

本書は、数千年の歴史を持つアジアの表意文字に、いかにすぐれた書体デザインが可能か探るグラフィックリファレンス集。台湾、香港、中国、日本、韓国の作品から選りすぐったクオリティの高いデザイン100事例以上が図版とともに紹介されています。各作品の制作コンセプトやバックグラウンドも解説されているので、気になる作品はじっくり読んでみましょう。早速内容を見てみましょう〜!
アジアンタイポグラフィデザイン
こちらは中国の牛肉の鍋料理に力を入れるレストラン“牛事制造局”のブランディングデザイン。フォントデザインは中華民国時代のフォントの形状を参考にしているそうですが、日本人の私たちには馴染みのない書体なので新鮮に感じられます。日本のデザインでは漢字に加え、カタカナ、ひらがなもデザインに取り入れることが多いので、漢字と英語だけでデザインされたチラシはとてもおもしろく感じます!

アジアンタイポグラフィデザイン
こちらは台湾のタイポグラフィデザイン。“新”という文字を大きく取り扱ったブランディングデザインが印象的です。
本書の序章で、“漢字は一文字にすでに意味があるから、一文字ごとのフォルムに表情や性格を視覚的に与えることが出来るのであり、その力を与えることができるのはデザイナーなのである。”という一文がありますが、まさにこちらのデザインは一文字に表情・性格を与えていて、“新”という文字がいろんな意味を訴えかけているように感じます。一文字でこんな表現が可能なのも漢字ならではないでしょうか。

アジアンタイポグラフィデザイン
パッと目に入ってくる迫力のある文字使いをしているこちらのデザインは、鹿児島の芋焼酎ブランドのもの。5種の薩摩芋をブレンドしていることから、タイポグラフィも5種の薩摩芋を象徴したデザインになっているそう。いも判から着想を得たというマークも使われており、日本の中でもその土地・地域ならではの表現やアイデアがおもしろいです。

アジアンタイポグラフィデザイン
こちらの3つのデザインはクライアントもデザイナーも異なりますが、どれも漢字を主役にしたグラフィカルなデザインとなっています。左ページの“風姿花伝”という文字のデザインでは“風”のかぜかんむりの中を四角いグラフィックで表しています。しっかり漢字で書いていなくても“風”という文字に見えるのが不思議じゃありませんか?こういったデザインを見ると、アジアンタイポグラフィの可能性が様々であると感じられます。また、こんなにシンプルなデザインなのに洗練された華やかさがあるのも、漢字そのものの魅力のような気がしました。

よりアジアンタイポグラフィを掘り下げる

本書ではこれまで紹介した実例集のほかに、ロゴタイポグラフィやエクスペリメンタルタイポグラフィなどより文字にフィーチャーしたデザインも紹介されています。中でも広東語の実験字体やシャトルフォントの実験字体など、今まであまり見たことのなかった書体デザインが興味深いです!どれも古くからある字体の特徴を理解し、新しい書体デザインとなっています。こんな文字だったら漢文を読むのも楽しくなりそう!と感じる文字ばかり。ぜひ本書で実際見て感じてくださいね。

いかがでしたか?私たちは毎日と言っていいほど目にする漢字ですが、デザインするとなると奥が深いなぁ〜と改めて感じる1冊でした。また他のアジアの国々のデザインの表現を感じることで、今までとは違う新しい漢字の見え方もあると感じました。
文字好きのみなさんやデザイナー・クリエーターのみなさんにもきっと役立つ1冊です。気になった方はぜひチェックしてくださいね。