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週末読みたい本『看板建築図鑑』

週末読みたい本『看板建築図鑑』

こんにちは、haconiwaキュレーターのカナコです。
今日ご紹介するのは、建築や空間デザインに関心のある方に是非お手に取って頂きたい一冊。全国の看板建築のファサード(立面)に着目した『看板建築図鑑』です。

看板建築の基礎知識から学べる!

「看板建築」の理解を深めるため、本書は看板建築の成り立ちや特徴をご紹介するページからスタートします。度々登場する専門用語についての予備知識もこちらで深められますよ。

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大正〜昭和初期にかけて関東を中心に流行した町家建築である「看板建築」。いわゆる「建築家」ではなく大工さんや家主の方が西洋建築を模して作っており、1つとして同じものがないんだそう。実際の西洋建築には存在しないレリーフがあったり、西洋風の中に日本らしい模様が入っていたりと独創性あふれる意匠で、多くのファンを惹きつけています。

時間をかけて描かれた精緻な立面図に注目

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本書の特徴は、何と言ってもその迫力あふれる立面図です。一級建築士をお持ちで、もともと建築設計に携わっていた著者の宮下潤也さんが、人々の熱意が息づく看板建築に魅了され、その価値を広めるためにイラスト化したのが始まりだそう。

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なんと今回は、イラストができるまでのプロセスを大公開。描き手の存在を排除し、フラットな視点で看板建築を見ることができるようにと、あえてCADを使用した線で立面図を描いているんだとか。その後Photoshopで着色していくそうですが、9割の作業をマウスとキーボードで行なっているというから驚きです。

写真から線画に落とし込むだけで、複雑なものだと4時間ほどかかってしまうほど緻密な作業。仕事の細やかさから、宮下さんの看板建築への愛が伝わってくるようですね。細部まで描き込まれていて、見ていると目が離せなくなってしまうほど素敵なんです。

全国各地の約60の看板建築をご紹介

本書では、秋田から佐賀まで、全国の約60の看板建築を扱っています。

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各看板建築は、迫力満点の立面図のほか、その建物が生まれた経緯、さらに見るべきポイントを、タイトル通り「図鑑」のようにご紹介。1つ1つの特徴がとても分かりやすいんです。

それでは、気になった看板建築をピックアップして見ていきたいと思います。

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まずは、二軒長屋でアシンメトリーな見た目がかわいい「金子商店」。現存はしませんが、リアルな立面図のおかげで、魅力が存分に伝わってきます。

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こちらの「植村邸」は多角形の屋根が特徴的です。こんな素敵な建物に住んでいた人がいるなんて、羨ましいなぁと思ってしまいました…。現在は「江戸東京たてもの園」に移築されているそう。本書を片手に足を運んでみたくなりますね。

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続いては京都の「ニュー大文字」。近代的でエレガントな建築に「炭火焼 鮮魚料理 鍋」と書かれたどこか生活感溢れるオーニングの組み合わせが面白いですね。上部に瓦屋根がちらりと見えていますが、町家形式の建物の正面だけを洋風に設えた、京都らしい看板建築なんだそうです。

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最後は「ミナ ペルホネン松本店」。元々は薬局だった建物を、アパレルショップとして活用しているそう。100年ほど前の看板建築が、どのように現代のショップに使われているのでしょうか。実際に旅行してみたくなりますよね。

読み応え抜群のコラムも!

ぱらぱらめくっているだけでも楽しい『看板建築図鑑』ですが、読み物も充実しているんです。

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看板建築にまつわる豆知識など、さらによく知るためのコンテンツが盛りだくさんです。こちらでは、まちなかの看板建築に似た建物をご紹介。まちにある建物の特徴や歴史を知れば、まち歩きの楽しみが増えそうです!

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「食べ歩き看板建築」というページも。住宅であったり、使われていなかったりと入ることの出来ない看板建築も多い中、グルメを堪能できる場所もご紹介。実際に訪れて、外観も内観も食事も楽しんでみませんか?

味わい深い看板建築の魅力が詰まった一冊

看板建築がよく分からない方も、建築のプロの方も、様々な視点で楽しむことのできる一冊。看板建築を詳細に扱った今までにない貴重な本になっています。気になる方はぜひお手に取ってみてくださいね〜。

看板建築図鑑

発行:大福書林
著:宮下潤也
税込価格:3,080円
https://daifukushorin.stores.jp/items/5ddcc875a551d531e5e50d20

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