DESIGN クリエイティブなモノ・コト
街がどんどんプラモデルに変わっていく!?「静岡市プラモデル化計画」にインタビュー

こんにちは、haconiwa編集部の山北です。
気になる商品やブランドの担当者さんに開発経緯やデザインのこだわりを聞いて深掘りする「商品開発の裏側」のコーナー。
第6回は、プラスチックの部品を組み立てて作る“プラモデル”をシティプロモーションに活用したユニークなプロジェクト「静岡市プラモデル化計画」にインタビュー。市内にプラモデルメーカーが多数あり日本一の出荷額を占める静岡市は、世界的にも注目されるプラモデルのまち。そんな静岡市で行われている静岡市プラモデル化計画とは、どのようにスタートし、どんな活動をしているのでしょうか?今回は、静岡市役所の産業振興課プラモデル振興係・佐野さんにお話しをお伺いしました。
街そのものを観光装置に! “プラモデル化”のアイデアはどのように生まれた?
――静岡市が中心となって行っている「静岡市プラモデル化計画」。ユニークな名前ですが、一体とはどんなプロジェクトなのですか?
静岡市役所産業振興課プラモデル振興係 佐野さん(以下、佐野さん):静岡市プラモデル化計画は、静岡市の地域資源でもある“プラモデル”を用いて地方創生に活用していこうということでスタートしたプロジェクトです。
静岡市役所と株式会社静岡博報堂様、株式会社博報堂ケトル様の間で包括連携協定を締結し、3者でこの計画を発表しました。
――静岡市はお茶などのイメージもありますが、なぜプラモデルを活用しようと思ったのですか?
佐野さん:プラモデルは静岡市が国内出荷額を8割以上占めており、同じような地域資源を持っている地域はないんです。
また、「静岡ホビーショー」という模型の展示会も毎年静岡市で開催しています。全国からプラモデルメーカーが集まって新商品を発表したり、国内に限らず世界中から模型ファンが集まって自慢の作品を展示したり、といった一大イベントです。このようなことからも、プラモデルは静岡市の唯一無二の地域資源ではないかということで、今回プラモデルを打ち出した取り組みを行っていくことになりました。
――そこでまずスタートしたのが、プラモデルを模したモニュメントをまちに設置する“プラモニュメント”ですね。組み立て前のプラモデルを大きく再現したインパクト大なビジュアル!この思い切ったアイデアはどのように生まれたのですか?
佐野さん:当初からプラモデルを活用して街そのものを観光装置にしていくようなイメージがありました。誰が見ても、静岡に降りたらすぐにプラモデルのまちだと分かるような。
その時参考になったのが、デンマークの都市ビルン(Billund)は「レゴのまち」と呼ばれていて、そこにはまるでレゴブロックで作ったような建物など、いろいろなものをレゴで再現した施設があります。このまちからヒントを得て、静岡市もプラモのモニュメントをまちに置いてみたらどうだろう?というアイデアが出ました。そこでプラモデル化計画をやっていきますと発表したのが2020年の2月ですね。
――その頃だと、ちょうどコロナの流行が始まったタイミングですね。
佐野さん:そうなんです。やはり行政的にもコロナ対策の方が重要ですし、観光の足が途絶えていたこともありなかなか進みが鈍くなってしまいました。そこから約1年経った2021年にプラモニュメントを市内に3カ所・4基設置することができて、本格的にスタートしました。
プラモらしさと実用性のバランス。リアリティにこだわった細部のデザインに注目!
――2021年に設置したのが静岡市役所静岡庁舎の「郵便ポスト」と、JR静岡駅南口広場・ツインメッセ静岡前の看板3基。郵便ポストは実際に投函可能なんですよね。
佐野さん:はい。本来のポストと同様に実際に手紙やハガキを投函して送ることができます。
このポストは今回のプラモ化計画を機に新しく設置したもので、静岡市と日本郵便株式会社様とで包括連携協定を結んでおり、一緒にまちを盛り上げられたらと思い郵便ポストのプラモニュメントを制作しました。
郵便ポストのプラモデルを組み立てる前の状態をイメージして、各パーツとそれを繋ぐ枠の部分(ランナー)を配したデザインにしており、プラモデル業界の監修も受けながらモックアップを制作してよりリアルな見た目を目指して作っていきました。

――ぱっと見で「プラモだ!」とわかる見た目は海外の方にも喜ばれそうですよね。ただ、実際に使える部分を設けると組み立て前のパーツとどう組み合わせるか、リアリティ面で検討が必要そうですね。
佐野さん:そうなんですよね。ここが難しいところで、そのまま本物のプラモデルのように組み立てパーツに分解しちゃうと、何だか分からなくなってしまうし実際に使うこともできない。利用者の方にオブジェではなくポストだとわかっていただきながらプラモデル感が出るようなパーツのバランスを出すのがなかなか難しかったです。デザイナーさんの方で何回もレイアウトを練り直していただいて、プラモ感もありつつちゃんと使えるモニュメントに仕上げていただきました。
――本来のプラモデルサイズから何倍も大きなモニュメントとして再現する上で、難しかったポイントはありましたか?
佐野さん:本当に細かいところなのですが、プラモデルのパーツとパーツを繋ぐ枠(ランナー)の接続部分を「ゲート」というのですが、ゲートは本来ニッパーで切りやすくするように細くなっているんです。でもこのプラモニュメントでは切れてはいけない部分になりますので(笑)どうにか丈夫な構造にできないか検討したところ、パーツの後ろ側にゲートがついている「アンダーゲート方式」という形を採用することにしました。
佐野さん:この方式は実際のプラモデルにもある構造なのですが、モニュメントで再現することでリアリティも増しつつ強度面の不安を解消することもできました。
あと、手順を説明するときに必要な数字を各パーツに記した「ナンバータブ」をモニュメントにもつけるなど、細かいところもなるべく本物のように再現しています。模型ファンが見た時に「こんなところまで作り込んでいるんだ!」「アンダーゲート方式なんだ」と楽しんでいただけたら嬉しいですね。
――他にもJR静岡駅南口広場やツインメッセ静岡前にプラモデル化計画の看板3が立っていますよね。
佐野さん:はい。駅の南口広場とツインメッセ静岡前にあるプラモニュメントは模型の世界首都静岡の文字を配しており、一部は顔はめパネルならぬ“体はめ”プラモニュメントになっています。人型の位置で体をはめるとまるで自分がプラモデルのパーツになったみたいに写真が撮れる遊び心を加えてみました。静岡市の玄関口である駅前広場で、ぜひ観光の際には楽しんでいただけたらと思います。
――駅にはもうひとつ、プラモデルのボックスアートで有名な島村英二さんが描いた看板も設置してありますそうですね。
佐野さん:親子でプラモデルを楽しむことをテーマに、郵便ポストのプラモニュメントのプラモを作っている様子を描いていただきました。普段はプラモデルで作る戦車や車を描くことが多いのですごく悩みながら制作していてだいて。ここにも左上に静岡市のタブを付けるなどしてプラモ感を出しています。
――今年3月にも新しいプラモニュメントが設置されたのだとか?
佐野さん:はい!西日本電信電話株式会社静岡支店様と行った公民連携の第一弾プラモニュメント「公衆電話」がお披露目になりました。こちらはJR静岡駅のコンコース内(北口)に設置していて、郵便ポスト同様に誰でも実際に使用することができます。
――公衆電話の台や受話器もパーツとして再現されている!細部までじっくり眺めたくなります。
プラモデルの技術を未来へ繋げる。市内の子どもたちへのプラモデル教育も。
――実際にプラモニュメントを設置して、静岡市や県外の方の反応はどんなものがありましたか?
佐野さん:特に大きかったのがSNSでの反応ですね。プラモニュメントの投稿に多くの方から反応をいただきまして、「行ってみたい」とか、中には「ニッパーで切り取ってみたい」とか、嬉しいお声をたくさんいただきました。私たちとしては、プラモニュメントのねらいが伝わったのかなと感じているところです。
あと、県外の方から「プラモニュメント見て歩きたいんだけど、どこにあるの?」という問い合わせもいただいたり。県外からわざわざ見て巡りたいと思っていただけたのは嬉しいです。
――ちなみに、新しいプラモニュメントの設置予定はあるのですか?
佐野さん:現在、様々な企業の皆様に働きかけている段階で具体的な設置の予定はまだありません。ただ、企業の皆様もとても興味を示していただいていることから、今後、さらに増やしていきたいと考えております。
――佐野さんの中で「こんなのあったら面白そう」なプラモニュメントの構想はありますか?
佐野さん:そうですね…。あくまでも個人的な意見ですが、もっと大きなスケールで、例えば公園そのものもがプラモデル化するみたいなのがあったら面白そうです。実現できるかはわかりませんが、プラモデルのまちを体感できるような場所がいくつもできればいいなと思っております。10年後など先の未来では、いろいろなものがプラモデル化した静岡市になっているかも(笑)
また、静岡市プラモデル化計画はものづくりやプラモデルに関する知見や技術を学びながら自らプラモデルを活用したまちづくりに参画する人財を育成する「ものづくりプラモデル大学」の開講や、静岡市内の小学校を対象にした授業の開催など教育にも力を入れています。小学校での授業は、実際にプラモデルメーカーの方に来ていただいて、プラモデルメーカーってこんなお仕事をしているんだよという話をしていただいたり。実際にそのメーカーさんでつくっているプラモデルをみんなで工作するという授業もやっていて、年間で約10校が参加しています。
――プラモデルのまちならではの英才教育ですね!
佐野さん:せっかくプラモデルのまちですので、市内の子供たちはみんなプラモデルを作ったことがある、というようなことを目指したいと思っています。
――佐野さん、ありがとうございました!今後の静岡市がますます面白いまちになっていきそうで楽しみです。
シティプロモーションとしてプラモデルを活用し、リアリティ抜群なモニュメントを設置する「静岡市プラモ化計画」。観光として訪れた方はもちろん、自分の住むまちがどんどんプラモ化していく様子はワクワクしますね。まち全体がプラモデルだらけになっている未来もそう遠くはないかも?静岡市へ訪れた際はぜひプラモニュメントに注目してまちを巡ってみてください!
OTHER SERIES POST この連載のその他記事
NEWS 最新記事
PICK UP
注目記事
EXHIBITION
いまオススメの展示・イベント