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デザイナーに聞く!推しフォント 12選 【日本語編】

デザイナーに聞く!推しフォント 12選 【日本語編】

こんにちは、haconiwa編集部です。
印刷物やWEBなどをデザインする上で重要な文字のフォント。フォーマルで硬い雰囲気のものから可愛いデザインのものまで、伝えたいイメージに合わせてさまざまな種類があります。お仕事や制作でフォントを選ぶ際に、どれを使おうか迷ったことがある方も多いのではないでしょうか?

そこで本日はhaconiwa creatorsに参加するグラフィックデザイナー8名の「推しフォント」を調査しました!選んだ日本語フォントの推しポイントや実際に制作した事例も回答いただいたので、ぜひフォント選びの参考にしてみてください。

●明朝体

A1明朝

2206_oshifont_A1明朝

モリサワ最初期から長く愛されているオールドスタイルの明朝体。漢字のゆったりとしたカーブと、かなの優美な表情が生み出す独特の味わいが特徴です。デジタル書体化にあたって、画線の交差部分に写植特有の墨だまりを再現するなどし、やわらかな印象と自然な温かみを感じさせる新しい書体として生まれ変わりました。可読性にも優れているので、ニュアンスを活かした大きな見出しから本文まで幅広く活用することができます。

グラフィックデザイナー
廣﨑遼太朗さん
 @ryotarohirosaki

2206_oshifont_hirosaki
「A1明朝」には墨だまり(角の丸み)があり、明朝だけど固くなりすぎないナチュラルな印象が好きです。また、カーブがスムーズすぎないのもいい意味でゆったりとした抜け感を感じて使いやすいです。風合いのある紙媒体との相性も良く感じます。
逆にデジタル媒体でもA1明朝を使う事で人工的になりすぎない自然なやさしさを出すこともできます。

アートディレクター/イラストレーター
ウラシマ・リーさん
 @urashimalee

2206_oshifont_urashima
私も「A1明朝」はお気に入りで、とにかく美しい日本語フォントだと思います。ゆったりしたフォルムと細部に良い湿度感があります。紙面をしっとりと美しく仕上げたい時はまっさきに候補に入れます。

イワタ細明朝体

2206_oshifont_岩田細明朝

金属活字時代から書籍などに多く使われてきた「イワタ細明朝体」。シャープなエレメントで表現され、本文から大見出しまでの広範囲な文字組版に対応した、ファミリーの充実したスタンダードな明朝体です。

デザイナー
千星健夫さん(NECKTIE design office)
 @necktie_design_office

2206_oshifont_necktie
デジタル化もされていますが、やはり金属活字のものが好みです。デジタルの岩田細明朝体はとても可読性に優れていてそれはそれで好きではありますが、金属活字のものは、活字特有のマージナルゾーンや押した感などの奥行きはデジタルでは出すことができない魅力だと思います。より金属活字の雰囲気に近い「イワタ明朝体オールド」もあります。金属活字は今も横浜・築地活字さんで購入可能ですよ。

A-1_03

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昨年、世田谷区松陰神社前に店舗を構える古書店「nostos books」さんと東京香堂さんがコラボレーションして制作したオリジナルお香「テリムクリ」のパッケージデザインを担当させていただきました。その際、タイトル文字を岩田細明朝で活版印刷しています。

【Adobe Fonts有】貂明朝(テンミンチョウ)

2206_oshifont_貂明朝

貂明朝は新しいアドビオリジナルの和文書体です。コンセプトは「かわいくも妖しい」。明朝体の伝統に沿っていますが、線は若干太めで丸みを帯びており、字画のアキは小さめ。欧文用文字も全て含んでいます。

アートディレクター/イラストレーター
ウラシマ・リーさん 
@urashimalee

2206_oshifont_urashima
最近知ったフォントなのでまだデザインで使ったことはないですが、こんなに可愛い明朝体があったなんて!と驚きました。Adobe fontなのでWEBも印刷も使えておすすめです。

●ゴシック体

A1ゴシック

2206_oshifont_A1ゴシック

A1明朝の基本となる骨格を参照して作成された、オールドスタイルのゴシック体ファミリー。線画の交差部分の墨だまり表現や、エレメントの端々に僅かな角丸処理を加えることで、温もりのあるデザインに仕上げています。 LからBまで4つのウエイトで展開されています。

イラストレーター/デザイナー
大伴亮介さん
 @otomoryosuke

2206_oshifont_ootomo
書体選びは適材適所が理想だと思うので、単純に自分の嗜好に染み込んでいるフォントを選んでみました。薄くコーティングしたような微量の角丸処理が効いていて、常温なたたずまいの中にも適度な粘り気と旨味があるのが好きです。

otomo_oshi

ちなみに、自分のコラム「日常ワンシーン画」のタイトルでも使用しています。やや小ぶりでゆとりがある雰囲気もよく、毎日食べてもとくに飽きない白米のような距離感でよく使用しています。

筑紫AMゴシック

2206_oshifont_筑紫AMゴシック

今年の3月にリリースされたFontworksの新書体「筑紫AMゴシック」は、アンティークな⾻格を持ち、スッキリとしたモダンなエレメントでデザインした⾓ゴシック体。今までの⾦属活字の流れを受けたオールドな⾓ゴシック体や、近年のモダンな⾓ゴシック体とは⼀線を画くデザインとなっています。

アートディレクター/デザイナー
野田久美子さん
@nodakumi

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既存のゴシック体のフォントは欧文フォントの定番「Helvetica」に合わせて開発されたものが多い中、同じく人気度の高い欧文フォント「Futura」に合うゴシック体として開発されたものが「筑紫AMゴシック」です。
筑紫AMのAは「Antique(アンティーク)」のA、Mは「Modern(モダン)」のMから名付けられたように、手書きのアンティークな骨格と、抑揚が抑えられた幾何学的なエレメントから成り立つ、「シンプルだけど、遊び心のある」「可愛く明るい印象の中にも、落ち着きがある」他にはない絶妙なデザインを”推し”にしたいと思いました。

noda_oshi

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2020年に制作させていただいたFontworksさんの2021年のカレンダーで、12月の書体として筑紫AMゴシックのデモ版(当時まだ開発中だったため)を使用させていただきました。
12月のイラストを担当していただいた松本セイジさんの、シンプルだけれど遊び心のあるイラストに、こちらの書体は非常にマッチしていると思います。

【Mac標準搭載・Adobe Fonts有】凸版文久見出しゴシック

2206_oshifont_凸版文久見出しゴシック

凸版印刷オリジナル書体とその源流にあたる築地体を参考に作り上げたどっしりとした骨格に、角を落としたやわらかい肉付けをすることで現代的なニュアンスを加えた書体。シャープなエッジとモダンなデザインを備える英数字と相まって、クラシカルになりすぎない絶妙なバランスに仕上がっています。見出し書体にふさわしい力強さをもちながらも、どこか温かみを感じさせる書体です。

グラフィックデザイナー
吉田雅崇さん
 @mzabc

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基本的に目を引くような部分に使いやすいフォントですが、きれいに組んでも崩して組んでもどこか親しみのある雰囲気があるので重宝しています。PC上で頭を悩ませながら扱うのではなく、学級新聞の見出し部分だけワープロで打って、それを印刷して切り貼りしたような感覚で使うと良い感じです。

2204推しフォント_吉田さん

以前制作した、タワーレコードのキャンペーンビジュアルのキャッチコピー部分に使用しました!

こぶりなゴシック

2206_oshifont_こぶりなゴシック

「字面が小さめで、ふつうで素直なかたちを持ち、詰め組みしたときも美しい、やわらかな印象の書体」を目指して開発されました。書体名は、小振りな、ちょっと小さいという文字の特徴そのものから取られています。2006年にリリースされて以来、とくにエディトリアルデザインの現場で根強い人気を誇る、ゴシック体の定番書体のひとつです。

アートディレクター/イラストレーター
ウラシマ・リーさん
 @urashimalee

2206_oshifont_urashima
「こぶりなゴシック」で初めて文字を組んだ時の衝撃がまだ残っています。文字のふところを大きく取りつつ字面率を小さくしているので、ベタ組みで本文を作っても余裕を感じます。控えめながらも紙面をやわらかく上品にするところが魅力です。

【Mac/Win標準搭載】游ゴシック体

2206_oshifont_游ゴシック

游ゴシック体ファミリーは、游明朝体と一緒に使うことを想定して開発された、スタンダードな角ゴシック体ファミリーです。 ややフトコロがせまい漢字と、伝統的なスタイルを持ったすこし小さな仮名の組み合わせが、このファミリーの大きな特徴です。

アートディレクター/イラストレーター
ウラシマ・リーさん
 @urashimalee

2206_oshifont_urashima
先ほどの「こぶりなゴシック」と同じJIYUKOBOさんが作成しているフォントなので、似ているとよく言われます。汎用性が高く使いやすさで頭一つ抜けているフォントです。Mac/Winの互換性もあるのでクライアントとの資料共有でも崩れることがなく頼れるところが推しポイントです。

中ゴシックBBB

2206_oshifont_中ゴシックBBB

「中ゴシックBBB」は基本的な書体として長く愛されてきた伝統的なゴシック体です。オーソドックスな字形に、アクセントのあるエレメントをもち、文字の大きさは全角に対してやや小さめなので、可読性と安定感がよく、読ませる用途に向いています。また、適度な太さは、明朝体と同じ紙面に配置しても違和感がないので、雑誌本文や、キャプションなど小サイズでの使用に最適な書体です。

アートディレクター/デザイナー
多田明日香さん
@asuka_tada

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「中ゴシックBBB」は細めの線が優しく見えるフォントなので、企画書などでもよく使います。また、作字をするときのベースの書体に選ぶことも多いです。

2206oshi_tada01

2206oshi_tada02

グラフィックと詩をレイアウトした風呂敷を制作した際にも使用したのですが、グラフィックを囲うように和文を配置しても違和感なくデザインできるのは中ゴシックの小ぶりでオーソドックスな書体ならではだと思います。

クナド

2206_oshifont_クナド

装丁家・グラフィックデザイナー・書体デザイナーの山田和寛が主宰する「nipponia」のかなフォント「クナド」。写真植字の創設者・石井茂吉の初期のゴシック体にインスパイアされて制作された書体です。

デザイナー
千星健夫さん(NECKTIE design office)
 @necktie_design_office

2206_oshifont_necktie
「クナド」はいい意味で無骨で古めかしいのに、ウェイトがたくさんあったり、オールドスタイルフィギュアがあったりと現在のデジタルフォントの環境に合わせて作られているところがポイントが高いです。かなフォントなので、漢字は先ほどのA1ゴシックなどが相性がいいと思います。

ユールカ

2206_oshifont_ユールカ

遊び心のある脱力系のゆるい書体です。ひと文字がそれぞれ不安定かつユニークなデザインで、手描き風書体のもつ「あたたかい」「やさしい」「素朴」を表現するのに最適で、さらには極太ウエイトならではの「柔らか」「ほがらか」な表情も持っています。

グラフィックデザイナー
岡口房雄さん
 @fusaof

2206_oshifont_okaguhi
文字の造形がコミカルで非常にかわいいです。
僕の場合、大きい扱いのタイトルロゴなどは、自分で作字したり、フォントの原型をとどめないぐらい加工しちゃう場合が多いのですが、フォーマットで毎回打ち変える文字や書籍の中ページなどにコミカルな文字が必要になってくる時に、こういったフォントが重宝しています。

丸アンチック

2206_oshifont_丸アンチック

「新丸ゴ」用のかな書体「丸アンチック」は、オールドスタイルの丸ゴシックかな書体です。従来の字面の大きい丸ゴシック体のかなと違い、「アンチック体」の骨格を活かして設計されているので、落ち着きと味わいを感じさせる独特の雰囲気を持っています。強い個性はないながらも、太いウエイトの温もりのある暖かな印象から、細いウエイトのさわやかな印象まで、それぞれにイメージを活かした使い方ができます。

グラフィックデザイナー
岡口房雄さん 
@fusaof

2206_oshifont_okaguhi
かな書体のため漢字が無いのですが、太さがLからUまで6種類あります。極太のUが非常にありがたいです。丸い書体は沢山あると思うのですが、自分のデザイン的にはこれが特にシックリきました。

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デザインを担当した小学館ゲッサンの漫画「怖面先生のおしながき」の単行本に使用しています。丸アンチックはカバー等の作者の名前に使っていて、先ほどのユールカはカバー等の巻数と目次ページ等に使用しました。


定番から少し珍しいものまで、さまざまなフォントが集まりました。みなさんのフォントへの熱い想いも垣間見えましたね。フォント選びに悩んだ際はぜひ参考にしてみてください。

次回は「デザイナーに聞く!推しフォント 10選 【欧文編】」をご紹介します。お楽しみに!

◆メインビジュアル
グラフィックデザイン:廣﨑遼太朗 @ryotarohirosaki
1996年2月27日生まれ
名古屋市立大学 芸術工学研究科 修了
現在はデザイン事務所に勤務しながらイラスト、アートワークの制作をしています。主に花のアートワークがメインです。

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