DESIGN クリエイティブなモノ・コト
グラフィックデザイナー佐藤卓さんが手がけた120のマークの制作背景に触れる!『マークの本』

こんにちは。haconiwa編集部 モリサワです。
毎週金曜日にお届けしている「週末読みたい本」のコーナー。本日ご紹介するのは『マークの本』です。
シンボルマークやロゴ制作の背景を、佐藤卓さんの言葉でテンポよく解説。
本書は、グラフィックデザインの第一人者として多方面で活躍している佐藤卓さんが手掛けた120のシンボルマークやロゴを集めたガイドブック。「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」などの商品から、企業やブランド、美術館のシンボルに至るまでをオールカラーで収録。制作背景にある佐藤さんの考え方や技術を紹介しています。
佐藤さんが最も伝えたいことに焦点をあて解説されているため、デザイナーだけではなく、あらゆる方がテンポよく読み進められる内容になっていますよ~。
ページをめくると、このように左ページに解説、右ページに大きくロゴマークが掲載されています。
この逆さに傘を持っている人が表現されたブルーのマークは、2007年に21_21 DESIGN SIGHTで開催した「water展」のマーク。水をテーマにした展覧会に、メッセージ性のある象徴的なマークが必要だと考えて制作されたのだそう。
どうして通常、雨をよける「傘」をあえて逆さにして雨を集めている様子をデザインで表現したのでしょうか? 世界では蛇口から出る水を安心して飲めない国がほとんど。食べ物や工業製品を作るために多くの水が使われているんだそう。人類がこれから水をどうデザインできるのか、地球上で生命が生き延びていけるのか……。雨を集める形の「さかさかさ」に込められたメッセージをぜひ読み取ってみてくださいね。
ちなみに、このマークは、展覧会の開催と同時にあえて著作権フリーにされたのだそう。水を考えるプロジェクトにどんどん使ってほしいという願いがこめられています。
こちらは国立科学博物館のシンボル。佐藤さんがシンボルを制作する際は、まずその場所がどんな意味を持っているのかを突き詰めることからスタートするのだそう。子どもの頃から訪れる度にワクワクさせられる国立科学博物館は、想像を提供してくれる場。佐藤さんは、実際にスケッチをしながら恐竜の上顎(うわあご)をモチーフにしたシンボルマークにたどりついたのだとか。
なんと、左側のページには不採用の一例も紹介されていました。完成したシンボルマークはあえて、恐竜の上顎だと見る人に気づいてもらう必要はなく「何だろう?」と想像してもらうために表現を抑えているのだそう。こうして過程を知ると、マークの細かい部分にも興味が湧いてきて面白い~!



このようにシンプルで洗礼されたマーク、ロゴ、ロゴマークが次々と紹介されていきます。中には、道路標識のような絵や図で表現した「ピクトグラム」も。本来マークだけで成り立たせるピクトグラムですが、ここではなく“マーク”と“文字”の両方を使って、より強い注意喚起がされています。商品パッケージの狭いスペースに、縦に並べても横に並べてもキレイに揃うように工夫されたデザインですよね。現在は、カップ麺だけではなく様々な商品にこのシステムが採用されているのだそう。「小さな整理整頓」というタイトルもステキですね!
佐藤さんがマークを制作してクライアントに提出するときには、方向性の異なるアイデアを最低でも3案、多ければ10案提出することもあるのだそう。こうして読み進めていくと、依頼に合った意図や背景を把握した上で、社会情勢や価値観を踏まえ、ビジュアル化しさらに磨き上げていく過程があることがわかります。「こんなところにも実はこんな意味があったんだ!」という気づきがあるのも楽しいです。
マークに込められた120の背景が紹介されている『マークの本』。佐藤さんが制作したさまざまなデザインが集められた本は貴重ですよね~! 読み終わった後には、見慣れたマークも違って見えるかも!? 眺めているだけでも楽しい1冊です。
マークの本
発行元:紀伊國屋書店
著:佐藤 卓
装幀:芦澤 泰偉
本文デザイン:五十嵐 徹(芦澤泰偉事務所)
仕様:46判/268ページ
定価:本体2,500円+税
ISBN:978-4-314-01191-4
OTHER SERIES POST この連載のその他記事
NEWS 最新記事
PICK UP
注目記事
EXHIBITION
いまオススメの展示・イベント