DESIGN クリエイティブなモノ・コト
新横浜に旧郵便局を改修した文化複合拠点が誕生。新たなチャレンジが集まる「ARUNŌ -Yokohama Shinohara-」とは?

こんにちは、haconiwaのシオリです。
2022年8月10日、新横浜にこれまでにない新しい施設が誕生したのをご存じでしょうか?
長年郵便局として利用されてきた建物が、新しい形に。
切手の購入や荷物の発送など、日常生活で気づくと利用している郵便局。身近な存在と感じている方も多いのではないでしょうか?「ARUNŌ -Yokohama Shinohara-」は、そんな郵便局として長年利用されてきた建物を改修し、新たに誕生した施設です。
ただモノを「おくる」だけではなく、利用者自身がまた違う場所や価値観まで「おくられる」ような場=”未知への窓口”がコンセプト。「シェアキッチン」「マドグチ(一窓貸し&チャレンジショップ)」「シェアラウンジ」「フローズンカフェバー」「屋外出店スペース」「シェアハウス」の6つのコンテンツで構成される文化複合拠点です。


カフェを始めたいけど、お店を構える前にお客さんにフード提供してみたい。手作りのアクセサリーを作っているけど、販売してお客さんの反応を見てみたい。そんな何かにチャレンジしたい想いを持った方が、気軽に利用できるコンテンツが並ぶ「ARUNŌ -Yokohama Shinohara-」。もともと郵便局があった場所だけあり、地域のなかでもアクセスが良い立地で、お客さんも気軽に足を運びやすいのもポイントです。

手がけたのは、株式会社ウミネコアーキ。一人ひとりがより良く行動できるようにするための事業を展開する”Well-doing Company”として、建築設計のみならず、その前提となる調査研究・企画・コンサルティングから竣工後の不動産・管理運営に至るまでトータルデザインを行っています。そんなウミネコアーキがARUNŌを作ることになった経緯を、代表取締役の若林拓哉さんにお伺いしました。
若林さん「この物件の話をもらった時、一番に思ったのはこの建物が無くなってしまうのはもったいないということでした。建て替えの話も挙がっていたので、それならうちが丸ごと借ります、と。もともと、必要なくなったものは残す必要はないという考えですが、ここは1975年に、当時の郵政省が日本全国に郵便局を増やそうとしていた時期の建物。日本中でインフラを整えて行っていた時期でもあり、その頃に建てられた建物特有の面白さがあるんです。」

道路に面した大きな窓には、防犯用ルーバーが。郵便局だった名残は、極力残されています。役目を終えたら取り壊されてしまう建物もある中、「ARUNŌ -Yokohama Shinohara-」はこの時代の郵便局という存在のために作られた建築を見られる貴重な場所になるかもしれません。
地域の中心であることを活かし、さまざまなチャレンジが集まる場所に。

もともと郵便局だった背景から、地域の中心にあるという利点を活かすスペースにすることを考えたという若林さん。ARUNŌとして生まれ変わった後も、施設の機能面で、この地域から日本中へ、世界へひとりひとりの想いを届ける拠点となっていた郵便局の姿を新たな形で再現しています。
それを象徴するのが、「マドグチ」という壁に沿って設置されたコーナー。


マドグチは、誰でも開ける小さなショップ。「窓スペース」と呼ばれるレンタルボックス型の販売スペースは、壁に扉が付いているように見える「DOOR」と丸い形がかわいい「BINGO」の2種類が用意されています。ジャンル問わず、1スペース1ヶ月からレンタルできるため、気軽に利用することが可能。ポストのような集金箱(お客さまが商品の代金を入れるための箱)も印象的です。

「DOOR」の鏡は、シャンパンピンクで柔らかな印象に。また、良く見ると一枚一枚異なる形にカットされており、壁全体に動きを感じさせます。マドグチのデザインを手がけたのは、プロダクトデザイナーの大島淳一郎さん。若林さんが以前から親交があり、「建築家目線のデザインではなく、プロダクトデザイナーの目線でデザインして欲しい」という想いで声をかけたそう。その思惑通り、シンプルな内装のなかでも一際目を惹く存在となっていました。
飲食で何かをチャレンジしたいという方は、シェアキッチンが用意されています。こちらも、会員利用と1日だけのドロップイン利用が可能。金曜日の夜だけバーを開く会社員の方や、普段はお店をやりながらも新たな客層にも食べてもらいたいと週一で出店する方、お店を出す予定だったけれどさまざまな事情で出店できなくなり、今できることをしたいという方など、多種多様な方が集まり、いろいろな食に出会える場となっているようです。
屋外には、キッチンカーのスペースも。こちらにもいろんなジャンルの方が出店しており、この場所での出店をきっかけに地域のお店とコラボしたり、お客さんから予約が入ったりするほどの人気店もあるのだとか。そのうち、ここから大きく羽ばたいて自分のお店を持つという方も現れるかもしれない、そんな可能性を感じずにはいられません。
若林さん「ここで出店しているうちに“自分のお店を持ちたい”となったら、一つの理想系ですね。出店に必要な不動産、設計などの面は、すぐにサポートすることができるので。お店を出したいという話だけでなく、“なんか困っているけどどうしたらいい?”という相談がこの場所で生まれて欲しいなと思っています。例えば、実家が山を持っていて相続に困っているとか。不動産屋、設計事務所を訪ねるのは壁があるけど、ここでお茶しながら話ができたらいいなと。よろずや的なものでありたいと思っているんです。」
実際、店内で野菜販売を始めてみたところ、この周辺がちょうどコンビニやスーパーがないエリアのため、ちょっと野菜を買えることがありがたいと利用する方がよく訪れるように。そういう状況は、オープン前には想像もしていなかったこと。そんな、新しい価値が生まれるのは嬉しいとおっしゃる若林さん。今後も、何が生まれていくのか楽しみです。
“ARUNŌ”の形を、日本中へ。

ARUNŌのグラフィックデザインを担当したのは、COYOTE合同会社のアートディレクター・デザイナーの大本友里加さん。さまざまな層の人が訪れる可能性があることを念頭に、郵便局のように親しみを持ってもらえる場所になればとの想いを込めてデザインを作り上げていったそう。マドグチが象徴する“未知への窓口”というコンセプトを、扉や、ポストを連想させる丸みを帯びた形で表現しています。
ロゴの下にある番号は、この場所の市外局番です。ひとつのフォーマットとして日本全国へ広がっていくことを予定しているARUNŌ。そのため、デザインは人がたくさん集まる都会でも、住宅街でも、畑が多い田舎でも、どこの地域にいってもハレーションが起きないよう、ソリッド過ぎず、でも柔らか過ぎないことを意識したそう。カラーも、郵便局をイメージしながらも、柔らかい色をチョイスしています。
今後、日本全国に「ARUNŌ –Yokohama Shinohara-」のように築年数の経った元郵便局や地域の要にある建物を改修した同シリーズの施設を展開していきたいと考えているウミネコアーキ。
若林さん「我々はARUNŌというパッケージを提供する役目になり、その地域に根ざした方が設計したり、運営したりする形がベストだと思っています。そうすることで、その地域に必要な存在を作れると思うので。そのために、今ここで、そのノウハウを構築しているところです。」
「最終目標は47都道府県、さらには各自治体に一つ」と、おっしゃる若林さん。ARUNŌを通じて日本各地に“未知への窓口”が増えたら、面白そうですね!ARUNŌの今後に期待したいと思います。
ARUNŌ –Yokohama Shinohara-
住所:神奈川県横浜市港北区篠原町1410
アクセス:JR横浜線・新横浜駅 篠原口より徒歩4分
東海道新幹線・新横浜駅 西口より徒歩5分
※お車でお越しの際は近隣の有料駐車場をご利用ください。
WEB:https://u-aruno.com/
Instagram:https://www.instagram.com/u_aruno_/
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