DESIGN クリエイティブなモノ・コト
日本の切手を作る8人のデザイナーにフォーカス!『切手デザイナーの仕事』

こんにちは。haconiwa編集部 モリサワです。
毎週金曜日にお届けしている「週末読みたい本」のコーナー。本日ご紹介するのは『切手デザイナーの仕事 日本郵便 切手・葉書室より』です。
日本にわずか8人!切手デザイナーの仕事とは?が分かる1冊。
1年に約40件発行されているという、特殊切手。切手マニアでなくても気になるデザインのものが発売されると、ついつい買ってしまうなんてこともありますよね。そんな日本の切手を作っているのは、日本郵便の社員さんで、わずか8人のデザイナーなのだとか。
本書では、そんな「切手デザイナー」の仕事を、作家の間部香代さんが丁寧に取材。1人1人の仕事内容にフォーカスし、人物背景とともに紹介しています。
はじめて本になったことで明かされる切手デザイナーの姿は、興味深いものばかり。切手の解説や、そこに込められたそれぞれの想いやストーリーが満載。とてもユニークな内容の連続で、一度読み始めると止まりません!私たちが目にしたことがある切手デザインにまつわるお話もたくさん登場するので、切手好きの方はもちろん、デザインに関わる人、毎日仕事に向き合うみなさんのヒントになるような1冊です。
個性あふれる切手デザイナーの仕事から、その横顔までを様々なエピソードを交えて紹介。
切手デザイナーの仕事に詳しく迫るばかりでなく、それぞれの仕事のスタンスや人柄を手にとるように知れる楽しさがある本書。
最初に紹介されている玉木明さんは、切手のトークショーを開けば会場は満席になるという人気デザイナー。ファンの方々とオープンな関係を築いているそうで、イベント中に「この話は前にもしたっけ?」と玉木さんが問いかけると、客席のあちこちから「それは聞いた」と郵趣家(切手の収集を趣味とする人)から親しみを持って回答されるほど。
そんな玉木さんのお仕事のスタンスは「サムシング・ニュー」。何か“少し”の新しいことを心がけているのだとか。玉木さんが手掛けた2022年の「切手趣味週間」の切手からも、そのスタンスが垣間見えます。
玉木さんは、自らが手掛けてきた日本美術の金屏風をテーマにしたここ数年の重厚感ある「切手趣味週間」のデザインを一新。西洋画家に影響を与えた浮世絵を切手のモチーフに採用し、過去に登場した作品を、パールインキや版の凹版印刷でヨーロッパ調にリバイバルさせたのだそう。過去に使用したモチーフを大切にしつつ、どこかグラフィックな重厚感をプラスしたデザインがかっこいいですね~!
8人の中で私が気になったのは、2017年に入社された、吉川亜有美さん。美大や全国の郵便局を通じて情報を掲載するだけだった切手デザイナーの求人ですが、この年は一般に広く募集。見てもらえるんだろうか……という関係者の心配をよそに、求人がでるやいなや「日本でたった7人の仕事?」「こんな求人があるなんて」とTwitterでは想像以上に多くの反響を呼んだのだとか。
当時、子育て中だった吉川さんでしたが、ご主人の会社の人事の方から条件にあっているのではないかとタイミングよく情報をもらい、8人目の切手デザイナーの求人に応募。以前からプロダクトデザインの仕事を目指していた吉川さんに、切手デザイナーとしての人生が開かれたのだそう。
こちらの各地の郷土料理が俯瞰(ふかん)で表現された切手シート「おいしいにっぽんシリーズ」は、料理と美味しいものを食べることが趣味という吉川さんが提案したもの。日頃から愛読している雑誌「ブルータス」にも協力を仰ぎ、2020年からスタートした企画です。
そしてこちらも、吉川デザイナーが近年手掛けているという「年賀切手」。過去のデザインの流れを踏襲しつつ、新たな色やモチーフで新年を祝う気持ちを表現しているそう。令和4年のデザイン、ステキだな~とひそかに感じていましたが、吉川さんのデザインだったのですね!
このように読み進めていくうちに、私の好きなこの切手のデザインは「この方がデザインしたんだ!」とか、「こんなトライアンドエラーがあって出来上がったんだ!」など、新たな発見があります。
切手制作の流れや工程が分かるコラムも必見!
本の物語の中には、切手制作の流れや仕組みが分かるコラムも。デザインをする前後にも、切手の制作にはどんな工程があるのか、どのくらいの期間で制作されているのか、印刷の仕方、いろいろな切手の特徴など、写真と文章で詳しく解説されています。今まで知ることのなかった切手について、より深い知識を学ぶこともできますよ。
切手デザイナーの仕事は、決定権のあるクライアントや競合する商品もなく、ちょっと特殊なのでは?と想像してしまうかもしれません。しかし彼らの仕事の進め方は、切手・葉書室の中で意見を出し合い、デザイナー自身がベストを尽くす。その働く姿勢には多くの方が共感できるのではないでしょうか。
そんな参考にしたい仕事の実用書ともいえる、『切手デザイナーの仕事 日本郵便 切手・葉書室より』。切手デザイナーについてどんな仕事なんだろう~と気になった方は、ぜひチェックしてみてね~!
切手デザイナーの仕事 日本郵便 切手・葉書室より
発行元:グラフィック社
著者:間部香代
ブックデザイン:佐藤靖
撮影:青柳敏史(カバーほか)・布川航太(人物)
仕様:A5並製/192ページ
定価:1,980円(税込)
ISBN:978-4-7661-3716-3
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