DESIGN クリエイティブなモノ・コト
日常の景色を“一幅の絵”に切り取る。写真家ソール・ライターの未公開スライドを収録した『まだ見ぬソール・ライター』

こんにちは、haconiwa編集部の山北です。
毎週金曜日にお届けしている「週末読みたい本」のコーナー。本日ご紹介するのは、世界中で高い評価を得る写真家ソール・ライターの作品集『まだ見ぬソール・ライター』です。
ソール・ライターのアトリエに遺された未公開スライドから、厳選された76点を収録。
1940年代、絵画のようなカラー写真の先駆者として、また「ヴォーグ」「ハーパーズ・バザー」などの有名ファッション誌で活躍した写真家ソール・ライター。2006年にドイツのシュタイデル社から初の写真集『Early Color』が刊行されると、1940年代後半にしてすでにカラー写真を極めていたその才能に広く注目が集まるようになりました。
2013年に89歳でこの世を去りますが、ソールのアトリエには約1万あまりの膨大なスライド写真が無造作に遺されたままになっていました。
本書では、その膨大な作品の中から76点を厳選し、さらにソールのアトリエ風景や、カメラ機材などアーカイブ資料も公開しています。
表紙をめくると、見返し部分にソールのアトリエ風景が全面に印刷されていました。アトリエの間取りを模した目次もユニークです。
BOX1~3からなる作品群と、ソール・ライター財団のディレクターが語る3本のコラムが収録されています。
晩年のソール自らが暮らしたマンハッタンの街に溶け込むようにして写した「ストリート・フォト」。このシリーズはソールの美意識の真骨頂とも言われており、街と人々の何気ないシーンを写したものばかりです。
日常の景色を一幅の絵画に切り取るような、色彩と構図に対するこだわり。「何の変哲も無いものを写して、そのなかに“特別な何か”を見つけるのが好きなのです」とソールは語ります。
作品ページは余白が全てブラックで、スライドフィルムを投影して見ているようなレイアウト。ページをめくるごとに現れる景色に想像を膨らませるもよし、色彩や構図の美しさにソールの美学を想うのもよしな、作品をゆったりと味わえる内容です。
3本のコラム「ソールが遺したスライド―膨大なスライドフィルムに埋もれて過ごした貴重な日々」(マーギット・アーブ)「人生における大切な要素-ソール・ライターは、生涯、色を愛し、色にこだわり続けた 今ここに、写真家ソール・ライターを振り返る」(マイケル・パリーロ)「ディープ・ダイブ―これは、ソールのスライドアーカイブを掘り起こした ソール・ライター財団の奮闘記である」(マイケル・パリーロ)も必見です。
ギャラリストとして晩年ソールと深く親交したマーギット・アーブとその夫マイケル・パリーロが、ソールの意思を受け継いでソール・ライター財団を立ち上げたのが2014年。
アトリエに遺された作品整理から始まり、そこから約10年の時を経て、その成果として本書の刊行が実りました。彼らから見たソール・ライターの美意識や、知られざる10年間のドラマをコラムでは紐解いています。
厳選された「ストリート・フォト」に加え、ソールの思考と技術の秘密に迫る一冊『まだ見ぬソール・ライター』。これまでにない大判サイズ(A4変形)の本書で、ソールの美しい作品をぜひ堪能してみてください!
定価:4,180円(本体3,800円)
著者:ソール・ライター
マーギット・アーブ
マイケル・パリーロ
判型:A4変
総頁:160頁
製本:上製
ISBN:978-4-86152-890-3 C0072
発行元:青幻舎
OTHER SERIES POST この連載のその他記事
NEWS 最新記事
PICK UP
注目記事
EXHIBITION
いまオススメの展示・イベント