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今回のゲストは、美容文藝誌『髪とアタシ』の編集長ミネシンゴさんとデザイナー三根加代子さん

こんにちは!箱庭編集部です。

7月22日に東京おかっぱちゃんハウスで開催した、クリエイターのためのしゃべって、呑める、楽しい交流イベント「しごとパーラー」。当日、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

今回は、美容文藝誌『髪とアタシ』の編集長ミネシンゴさんとデザイナーの三根加代子さんをお迎えしました。苗字でピンと来た方もいらっしゃると思いますが、お二人はご夫婦です。ふたりで最小単位の出版社「アタシ社」を立ち上げ、『髪とアタシ』などの雑誌、書籍やパンフレットの編集、デザイン、撮影などをすべて行っています。出版社を立ち上げた経緯や『髪とアタシ』に込めた想い、いまのお仕事についてなど、お聞きしました。ふたりでのトークイベントは初めてということでしたが、さすがはご夫婦。息ぴったりのトークを繰り広げてくれました。盛りだくさんの内容ですべてをお伝えすることはできませんが、会場に足を運べなかったみなさんのために、ゲストのトークを中心にお届けしたいと思います。

これまでの美容業界誌とは違う、読み物として面白い美容文藝誌をつくる

箱庭(以下、箱):本日はしごとパーラーにお越しいただきありがとうございました。前回同様、案内役は箱庭編集部とイラストレーターのBoojilさんです。そして、今回のゲストは、美容文藝誌『髪とアタシ』の編集長ミネシンゴさんとデザイナーの三根加代子さんのおふたりです。まずは自己紹介をお願いいたします!

160722shigoto_01(写真右:編集長のミネシンゴさん、写真左:デザイナーの三根加代子さん)

ミネシンゴ(以下、シ):こんばんわ。美容文藝誌『髪とアタシ』の編集長をやっております、ミネシンゴと申します。もともとは美容師を以前やっておりまして、美容専門雑誌の編集者やホットペッパービューティー(※リクルート)での営業を経て、昨年4月に小さな出版社をつくろうということで、嫁の加代子と二人で出版社をつくりました。

三根加代子(以下、加):こんばんわ。美容文藝誌『髪とアタシ』のデザイナーをやっています、三根加代子です。ゼクシィ制作ディレクター(※リクルート)からWEBディレクター、広告代理店などを経て、今に至ります。よろしくおねがいいたします!

160722shigoto_02(美容文藝誌『髪とアタシ』)

箱:おふたりでつくっている雑誌『髪とアタシ』についてお伺いしたいのですが、その前に会場に来ている方で『髪とアタシ』を知っているという方どのくらいいらっしゃいますか?

(会場の参加者、5~6人が挙手)

シ:よっしゃー!5人くらいいましたね。美容師さんのトークイベントに呼ばれて行くんですが、実は美容師自身が知らないケースが多いんです。一般の方たちの方が認知されています。

箱:もともとは、どういった方に読んでもらいたくてつくった雑誌だったんですか?

シ:一番は美容師さんですね。でも、今毎号3000部刷っているんですけど、1500部以上が一般の方なんです。

箱:それはお二人の気持ちとしてはどうですか?

シ:嬉しいですね!
美容の専門紙の編集を2年くらいやっていたんですけど、出てくる美容師さんが偏っているケースが多くて、専門誌に出てくるカリスマ美容師さんって、本当にひとにぎりなんですよね。それで、そういった人たちじゃない人たちにスポットをあてて、トレンドとファッションとデザインを排除した読み物として面白い美容師さんを紹介する文藝誌をつくろうということで創刊したのが『髪とアタシ』なんです。美容業界だけで流通させるいわゆる専門誌じゃなくて、美容師のしごとや髪にまつわる話を一般の人に知ってもらいたいというのは、やってみたかったことの一つだったので、みんなが知ってくれるのは嬉しいです。

160722shigoto_03(『髪とアタシ』最新刊)

Boojilさん(以下、B):最新刊の特集は「BAD HAIR」ですが、「BAD HAIR」というとヤンキーですか…?

シ:ヤンキーとは限らないんですが、会いに行きましたね~。この写真、今年の3月なんですけど、大阪の難波です。ちなみにヤンキーの方々ではございません。昔からパンクバンドをやっている方々で、髪にもすごくこだわりを持っている人たちです。生き方やスタイルにある種の哲学を持っていて、本当にかっこいい人たちでした。

160722shigoto_04(『髪とアタシ』より)

B:そうなんですね。昔の写真かと思いました。

シ:現在進行形です!この特集をやりたいなと思ったのが、最近Good hairの女の子が多いなと思っていて。たとえば、女子大生100人見ても100人全員が一緒に見えてしまう。大袈裟かもしれませんが、そういう風に見えてしまうんですよ。モテ髪がフォーマット化されていて、いい子ちゃんが凄く多いんですよね。グッドガール、グッドボーイが多いなという印象がありました。それで、社会的にバッドが欲しいなと思ったんです。
欧米だと「BAD HAIR」という言葉が昔からあるんです。たとえば、昔のサッカー選手で、前髪が凄い短いんだけど襟足が凄い長い人とか、でっかいアフロヘアーの人。そういう髪を総称して「BAD HAIR」と呼んでいたんです。じゃあ、日本ではどういうのが「BAD HAIR」と呼ぶのかなって考えて、日本の「BAD HAIR」を集めて、新しいヘアカルチャーをつくりたいということです。

終身雇用の時代ではないから、自分で何かやろうと思った

B:なるほど、面白いですね。お二人で『アタシ社』を立ち上げたのは、シンゴくんが31歳のころですけど、30歳の節目とか考えたりしたんですか?

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シ:いや、節目とかはあまり気にしていなかったですね。ホットペッパービューティーの営業として働いていたんですけど、もともと契約期間が決まっていて、卒業するタイミングで独立支援金という形で100万円もらえるんです。卒業したら自分で何かやってみなさいっていう契約だったので、退職することは決まっていたんです。
僕の考えとしては、もう終身雇用の時代でもないし、自分で何かやった方がいいんじゃないかなというのは思っていましたね。何かやるなら若いうちにやっちゃえとも思っていました。

箱:立ち上げてからの1年3か月はどうでしたか?

シ:いやー、なかなか出版社って言いきれるほど本をつくれていないというのが実感です。自分で立ち上げたからには、リクルートにいたときよりも給料を稼ぎたいというのが密かな目標なんですけど、そうなると、受託案件がやっぱり増えますよね…(笑)。パンフレット制作や、フリーのライターとしてお仕事をいただいたり。そういったことを今でも少し続けながらやっています。

箱:具体的に今のおふたりの仕事は、受託と『髪とアタシ』の仕事の割合ってどんな感じなんですか?

シ:僕は受託が6割くらいかな。『髪とアタシ』を制作したり、日々発注が来るものを自分で梱包したり、事務処理したり、書店さんや美容ディーラーさんに営業したり、つくる仕事と売る仕事を両方やっていますが、それが4割くらいです。

加:『髪とアタシ』は、年間2回出るか出ないかなので、私はコンサル的なお仕事を引き受けていて、それが9割くらいですね。
いまは、自分たちが業務委託で受けた仕事を、自分たちがつくりたい雑誌をつくるための投資にしていますが、今後は、受託の仕事を減らしていって、自分たちの雑誌の売り上げで、自分たちの雑誌をつくるという方にスイッチできればと思います。2年くらいで出版社だけで食べていけるのが夢ですね。

出版社って意外と儲かる!?

B:2年って結構短いですよね?

加:出版社って、みなさんが思っている以上に、ちゃんとやれば儲かるんですよ!出版業界って下り坂なイメージがあるけど、ひとりやふたりで出版をやっている人たちから見ると、それはコストのかけすぎだったり、刷りすぎだったり、つくるときに広告主マターになりすぎて、面白い雑誌がつくれなかったり…。そういった負の連鎖になっていて、実は二人とかで出版社をやっていると原価がおさえられるので、5000部とか1万部とか売れば、二人だったら1年は食べていけます。

シ:独立する時に、フリーのライター・編集者になって稼ぐこともできたんですけど、僕たちは出版社にしたんですよ。著者になると本の売り上げの多くても10%とかがフィーになるんですけど、版元になると売り上げの60%〜70%くらい。そういった意味で、自分でつくって自分で売るって方がいいんじゃないかと思ったんですね。丹精込めてめちゃくちゃいい雑誌をつくって、コアなファンをつかまえれれば生きていけると思っています。

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B:編集のスキルはもちろんあったと思うんですけど、出版社としてのノウハウはどこで身に着けたんですか?

シ:独立前に、ひとり出版社としてやっている何人かに会って話を聞きました。ひとり出版社が、世の中には意外とたくさんいるんですよ。

B:でも、そうやって突然ご連絡して会ってくれるのは、シンゴくんの人徳でもありますよね。おふたりとも以前は会社員として働いていたわけですけど、そのころと独立して働いている今とで、心境とか変わりましたか。

加:会社の組織にあわなかったから、フリーが向いていたという世界ではないなと思っていて、会社勤めのころは単純に自分たるものがなくて、リクルートの三根という感じだったんです。だから、会社の人に評価されないと、自分の価値そのものがないと思ってしまうんですね。
いまは、『髪とアタシ』で世の中の人に伝えなきゃいけないと思ったものを伝えていて、それで稼いでいて。小さくても経済がまわりはじめると、自分の映し鏡的なもので、だいぶメンタルもラクになりました。会社勤めのころは気づけていなかったんだけど、こういうことだったんだなという感じです。

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「トークショー」の後は、参加者みなさんのお悩みをポジティブに解決する「お悩み相談室」をして、記念撮影。みなさん、とってもいい笑顔!
撮影後は、みなさんで呑みながら談笑する「懇親会」を開催しました。「Bar思春期」のタコスがこれまた美味しいんです。

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クリエイターさん同士の和がまた広がって、楽しい時間となりました!
みなさま、また次回お会いしましょう~。

    ◆トークゲスト
    ・美容文藝誌『髪とアタシ』の編集長 ミネシンゴさんと、デザイナー 三根加代子さん
    最小単位の出版社「アタシ社」を立ち上げ、『髪とアタシ』などの雑誌、書籍やパンフレットの編集、デザイン、撮影などをすべてお二人で行っています。
    Web site: http://kamitoatashi.fashionstore.jp/

    ◆案内役
    ・イラストレーター Boojil:http://boojil.com/
    ・箱庭編集部 森史子

    ◆creator’s meet up「しごとパーラー」
    しごとをテーマに、クリエイターのためのしゃべって、呑める、楽しい交流の場です。
    会場は築60年の古民家”東京おかっぱちゃんハウス”。
    ここに集うことで”しごと”のヒントをもらえたり、新しい”しごと”が生まれる場を目指して、定期的に開催予定。

    ◆東京おかっぱちゃんハウス
    WEB site:http://okappachan.com/