沖田修一監督、伊藤まさこさんトークイベント

こんにちは。あいぽんです。

30年間自宅から一歩も出ず庭の虫や植物を見つめ、絵を描いてきた伝説の画家熊谷守一さんを描いた映画『モリのいる場所』が公開となりました。

▶沖田修一監督のインタビュー記事はこちら

映画の公開を記念して、映画公開前夜に沖田監督とスタイリストの伊藤まさこさんのトークイベントが開催されました。もともと交友があったというお2人。お酒好きのお2人ならではの初対面のエピソードから、スタイリストの伊藤さんならではの『モリのいる場所』に関する質問など、いろいろなお話を伺うことができました。

和やかな雰囲気で行われた、トークイベントをレポートしたいと思います!

 

「沖田監督は作品と同じような人柄」by伊藤さん

お2人の出会いは雑誌の対談。“伊藤さんが会いたい人に会いに行く”という企画の中で、沖田監督へ打診したのがきっかけなのだそう。
沖田修一監督、伊藤まさこさんトークイベント

「沖田監督の作品が好きで、どういう人がこういう映画を撮っているんだろう?と気になったんですよね。それでお声掛けさせていただいたんです。

沖田監督がお酒好きということを聞いていたので、新宿のバーでお会いしたんですけど…。次に予定があると伺っていたのに、気にせずハイボールを飲んでいて(笑)。お会いして、作品の印象と同じ人柄でますます好きになりました」と伊藤さん。

その後も、伊藤さんのご自宅で食事を楽しむなど、交友関係が続いているのだそう!

 

なんとも言えない“いい匂い”がする映画

沖田修一監督、伊藤まさこさんトークイベント

伊藤さんもすでに沖田監督最新作『モリのいる場所』を観られているとのことで、トークは映画のお話に。

「今回の映画では、晩年のある1日を描いているんですが、この1日だけで熊谷さんの30年の暮らしを想像できるような作品にしたかったんです」と沖田監督が語るように、30年近く自宅と庭だけで暮らした熊谷さんの生活ぶりを垣間見ることができる99分になっています。

沖田修一監督、伊藤まさこさんトークイベント

「僕も撮影中の数ヶ月間、あの家と庭にいたんですけど、毎日少しずつ植物や風景が変わっていくんですよね。熊谷さんもそうだったのかなって思いました」と、沖田さんも熊谷さんの暮らしを体験しながらの撮影だったよう。

沖田修一監督作品「モリのいる場所」

「土の匂いだったり、畳に陽に照らされる匂いだったり、なんとも言えない“いい感じ”の匂いが漂う映画ですよね。黒電話の音もなんだか懐かしかったし、みんなどこかに懐かしさを感じるんじゃないでしょうか?

あと、映画の中の熊谷さんを観ていると、他人から見たらなんていうことのない小さな世界もおもしろがれる人なんだろうなと感じて…。私もまだまだ身の回りに見落としているワクワクするものがたくさんあるのかもしれないなって思いました」と伊藤さんは映画の感想をお話してくださいました。

沖田修一監督作品「モリのいる場所」

当時の家庭を再現しているということで、家の中のインテリアや衣装にもこだわりが詰まっています。

「樹木さんの衣装は自前なんですよ。撮影前から『こうしたい』など意見を出してくださって、ご衣装を用意してくれました」(沖田さん)。

 

家に人を招く楽しみ

沖田修一監督作品「モリのいる場所」

映画では、常に熊谷さんの家へ、人が入れ替わり立ち替わり出入りしています。開け放たれた窓や庭に面した縁側もあり、開放感たっぷりの間取りが印象的。

沖田修一監督作品「モリのいる場所」

「晩年の熊谷さんの家は、本当に人がたくさん出入りしていたとのことで、映画でもそういう家にしたいと思っていました。オープンな感じにするためにもともとあった壁をぶち抜いているんですよ。

うちの母はお寺の子供だったこともあり、常に人が出入りしている家で家族だけで食事を記憶がないらしいんです。そういうのに僕も憧れていたんですよね」と沖田監督。

日頃からご自宅に人を招くことの多いという伊藤さんも、「人が家に来るのっておもしろいですよね。自分をわかってもらえたような気持ちになるというか。人の家に行くものいいですよね。本棚に並んでいる本を見て、こういう本を読むんだ〜ってなったりして。ちょっと一歩踏み込んだ関係になれる気がします」とおっしゃっていました。

 

映画になりそうな美術館がたくさん!

沖田修一監督作品「モリのいる場所」

今回の映画は、『キツツキと雨』の撮影現場で、山崎努さんから「熊谷守一記念館」を教えてもらったことがきっかけ。伊藤さんは普段から美術館へよく出かけており、先日も『美術館へ行こう ときどきおやつ』という本を出されたばかりということで、美術館についてのお話も伺うことができました。

沖田修一監督作品「モリのいる場所」

「美術館って特別な場所ではなくて、パンを買いに行く、そのついでに美術館に寄るというような気軽なものでもいいのかなと思って。日本全国には美術館もたくさんあるので、行列に並ばなくても入れるような小さな美術館を中心に紹介しています。

どの美術館に行ってもドラマがあって、作家や研究者たちの物語はどれも映画になりそうなくらいですよ」(伊藤さん)。

最近では、『モリのいる場所』を観たこともあり、豊島区にある「熊谷守一美術館」も訪れたのだそう。晩年の熊谷さんが暮らしたご自宅を改築して作ったという熊谷守一美術館。映画を観て、熊谷さんがどんな作品を描くんだろう…と興味を持った方はぜひ!(ちなみに映画にはほとんど作品が出てきません)

映画は現在絶賛公開中!映画『モリのいる場所』を観ると、熊谷さんの作品を観に美術館へ出かけたくなったり、友人を家に招きたくなったり、身の回りをもっと観察したくなったり…何気ない日常にあるいろんなワクワクを探したくなってきます。小さな世界を描いた物語ですが、この映画をきっかけにご縁がつながって、ワクワクしたことに出会えそうな気分になれる作品です。ぜひ、劇場でお楽しみください♪

  • 映画『モリのいる場所

  • 2018年5月19日全国ロードショー
  • あらすじ:昭和49年の東京・池袋。守一が暮らす家の庭には草木が生い茂り、たくさんの虫や猫が住み着いていた。それら生き物たちは守一の描く絵のモデルであり、じっと庭の生命たちを眺めることが、30年以上にわたる守一の日課であった。そして妻の秀子との2人で暮らす家には毎日のように来客が訪れる。守一を撮影することに情熱を傾ける若い写真家、守一に看板を描いてもらいたい温泉旅館の主人、隣に暮らす佐伯さん夫婦、近所の人々、さらには得体の知れない男まで。老若男女が集う熊谷家の茶の間はその日も、いつものようににぎやかだった。
  • 出演:山崎努・樹木希林/加瀬亮/吉村界人/光石研
  • 監督・脚本:沖田修一
  • 制作:新井重人/川城和美/片岡尚
  • 公式ホームページ:http://mori-movie.com/

 

  • 沖田修一(映画監督)

  • 1977年生まれ。2001年、日本大学芸術学部映画学科卒業。2002年、短編『鍋と友達』が第7回水戸短編映像祭にてグランプリを受賞。2006年、初の長編となる『このすばらしきせかい』を発表。2009年、『南極料理人』が全国で劇場公開されヒット、国内外で高い評価を受ける。2012年公開の『キツツキと雨』が第24回東京国際映画祭にて審査員特別賞を受賞し、ドバイ国際映画祭では日本映画初の3冠受賞を達成。2013年2月、吉田修一原作の『横道世之介』が公開。第56回ブルーリボン賞最優秀作品賞などを受賞。国内にとどまらず、海外でも高く評価される日本映画界の期待の監督である。最新作は『滝を見にいく』(14)『モヒカン故郷に帰る』(16)。

 

  • 伊藤まさこ(スタイリスト)

  • 1970年、神奈川県横浜市生まれ。文化服装学院でデザインと服作りを学ぶ。
    料理や雑貨、テーブルまわりのスタイリストとして、数々の女性誌や料理本で活躍。なにげない日常にかわいらしさを見つけ出すセンスと、地に足の着いた丁寧な暮らしぶりが人気を集める。著書に『あの人の食器棚』『台所のニホヘト』『家事のニホヘト』(以上新潮社)、『おいしい時間をあの人と』(朝日新聞出版)、『おいしいってなんだろ?』(幻冬舎)など。最新刊に『本日晴天 お片づけ』(筑摩書房)、『美術館へ行こう ときどきおやつ』(新潮社)。
    美術館へ行こう ときどきおやつ