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オノ・ヨーコら40組のアーティストが参加!六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展「カタストロフと美術のちから展」をレポート
はじめまして!箱庭キュレーターの KIMI です。アートやデザインの展示を見によく出かけるので、これから展示レポートを主にお届けしていきます。
今回レポートをお届けする展示は、2018年10月6日(土)から2019年1月20日まで開催中の、六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展「カタストロフと美術のちから展」です。
カタストロフとは、“大惨事”という意味。
森美術館は2003年の開館以来、周年記念展においては全人類にとって普遍的なテーマを掲げてきました。
たとえば、2003年開館記念では「幸福」をテーマにした「ハピネス」展を、10周年の2013年には「愛」をテーマにした「LOVE展」を開催しています。
今回は「カタストロフ(大惨事)」がテーマで、これまで以上に重い印象ですが、それは森美術館があらためて「美術のちから」を問い直したいと考えたからです。
東日本大震災やアメリカ同時多発テロ、世界各地で絶えず起こっているカタストロフ。危機的な問題が山積する今日において、美術が社会を襲う大惨事や個人的な悲劇とどのように向き合い、私たちが再生を遂げるためにどのような役割を果たすことができるのか、美術が果たす役割についてあらためて考えることのできる展示です。
今回の展覧会は、国際的に活躍している現代美術のアーティストが、40組出展しています!たくさん見所がありすぎて、全てを紹介しいたいところですが、その中でもインパクトが強かった作品をいくつかお伝えしていきたいと思います。
大惨事が起こった時、美術はそれをどのように描いてきたか。
本展では、大惨事をどのように描いてきたかという記録の部分と、破壊から創造を生み出す「美術のちから」を紹介する2部構成になっています。
展覧会入ってすぐに目に飛び込んでくる最初の作品は、トーマス・ヒルシュホーンさんの新作インスタレーション《崩落》。
「トーマス・ヒルシュホーン《崩落》」
この2階建ての建物、コンクリートの壁が崩れているように見えて、見た瞬間「ぎょっ」とさせられたのですが、よく見ると段ボールやビニールテープなどで出来たフェイクで、ホッとしました。
(向かって左下の壁に書かれた文字)
奥の4つの壁には、それぞれに言葉が書かれていて、こちらは、エリ・ヴィーゼルさんの言葉『人間だけが破壊や消滅を引き起こすことも、防ぐこともできる』と書かれています。他にもパブロ・ピカソさんの言葉もあったり、ぐっと考えさせられる作品からのスタートです。
(ホァン・ハイシンさんの作品展示風景)
このホァン・ハイシンさんの作品は、個人的な悲劇や災難を表現した作品なのですが、ポップで鮮やかな色彩とは対象に、クリスマスツリーやスワンボートが燃えていたりして、ドキッとさせられます。
「ホァン・ハイシン《赤いカーペットの夢#3》」
こちらは結婚式のような風景なのに、会場はがらんとしていて、花嫁の顔がよく見えません。なんとも不思議な雰囲気で、私達の日常に潜む不安や葛藤を表現しているように思えました。
「平川恒太《ブラックカラータイマー》」
こちらの無数の黒い丸が並ぶ作品は、平川恒太さんの《ブラックカラータイマー》。
コレよく見ると…
マスクと防護服に身をまとった人々の顔が浮かび上がっています。見えますか??
これは、福島第一原子力発電所の事故後に現地で従事していた作業員の肖像なのだそう。全部で108個の電波時計に描かれた作品に耳を近づけると「カチッ、カチッ」と時計の秒針の音が小さく鳴っていました。これは、会場でぜひ作品の説明を読んで音を聞いてもらいたいなと思います。私はぐっと胸に響く音になりました。
破壊から創造を生みだす「美術のちから」の可能性について考えてみよう!
「アイ・ウェイウェイ《オデッセイ》」
第2部は、巨大なインスタレーションでスタートします。人物と見比べて、圧巻の大きさが伝わりますか?
美術家でもあり活動家でもあるアイ・ウェイウェイさんが、世界各地の難民問題についての取材に基づいた作品です。近づいてよく見ると、テントの中で過ごす人々の様子や、ボートに乗った人達、警察が何かを鎮圧している風景などが描かれています。難民問題の解決を訴えた作品、細部までじっくり見て頂きたいと思います。
作品から甘くて美味しい匂いがする!?
「CATPC & レンゾ・マルテンス」
私が、一番驚かされた作品がこちらの彫刻。実はこれ、皆さんも大好きなあの茶色くて甘い食材、チョコレートでできているんです。どう見ても胴像にしか見えない…。じっくり見ても信じられず、そっと近づいて見てみると、美味しい匂いがぷ〜んとしてきて、やっとチョコだとわかるほどでした。
来場者の皆さんが誰でも描くことができる参加型作品!
(港区南山小学校の6年生の皆さん)
展示会の最後を締めくくるのは、オノ・ヨーコさんの《色を加えるペインティング(難民船)》。
壁も床も真っ白のところに青・白・黒のクレヨンを使って、平和への願いを描く参加型作品です。
真っ白だったキャンパスに最初のメッセージを描いたのは、港区立南山小学校の6年生の皆さんと出展アーティストの皆さん。
森美術館キュレーターの近藤健一さんが最後にこの作品を展示した理由は、「明るい未来に思いを馳せながら好きなメッセージを書いていただいて、その思いを胸に日常に戻って頂きたい」との願いを込めたのだそう。
私ももちろん描いてきましたが、童心に戻った気分になり、純粋に平和を願う気持ちが生まれ、書いていてとても心が綺麗になった気がします。展示会の最終日には、一体どんな作品になっているのかが、今から楽しみ!
皆さんもぜひ、描いてみてください!
展覧会オリジナルグッズがオシャレで素敵!
(Tシャツ ¥2,808 クリアファイル ¥324 税込価格)
(展覧会オリジナルグッズ 左:軍手¥540 右:ツールボックス ¥3,456 税込価格)
ミュージアムショップには、オノ・ヨーコさんの関連グッズや展示会のロゴがデザインされた軍手やツールボックスなど、展覧会オリジナルグッズもありました。他にも、災害セットがあったり、非常食も販売されていました。こんな軍手なら作業が楽しくなりそうですよね!
森美術館15周年記念グッズも販売!
(上の20枚は、ミュージアム・リーグより厳選したマフラー。非売品)
(森美術館15周年記念《メイド イン カテランド》フットボール マフラー ¥8,640 税込価格)
展示会オリジナルグッズ以外に目に飛び込んできたのは、こちらのカラフルなマフラーたち。
上に飾っている20枚は、非売品ですが、一番下にずらっと並んでいる赤いマフラーは、2003年10月18日にオープンした森美術館の開館15周年記念に作られたオリジナルです。そろそろ寒くなってきたので、今からの季節にもぴったりですよね。
六本木ヒルズ内にあるオノ・ヨーコさんの作品も探してみて!
「オノ・ヨーコ/ジョン・レノン《戦争は終わる》」
六本木ヒルズ内にも、オノ・ヨーコさんとジョン・レノンさんの作品が展覧会開催中に同時に展示されています。こちらは、ベトナム戦争が激化していた1969年にニューヨークのタイムズスクエアをはじめとした世界
11都市で掲示され、その後も世界各地で行われてるプロジェクトです。
この日は雨が降っていたので、床にも文字が浮かび上がって、平和への強い意志がさらに伝わってきました。
どこに展示してあるかは、ぜひ探してみてくださいね。
えっ!と驚かされる作品が盛りだくさん。
「高橋雅子(ARTS for HOPE)《アートで何ができるではなく、アートで何をするかである》」
まだまだ紹介したいアーティストの作品がたくさんありますが、ここはグッと我慢。続きは、ぜひ会場で。
カタストロフ(大惨事)について改めて考える機会になり、アートの可能性の無限さに、自分にできることは何かも一緒に考えさせられる良い機会になりました。
今回紹介した作品以外にも、細部までよく見ると、えっ!となる作品が他にもたくさんあります。
ぜひ、合わせてじっくり観覧してみてください。
六本木ヒルズ・森美術館 15 周年記念展「カタストロフと美術のちから展」
会 期:2018 年 10 月 6 日(土)~2019 年 1 月 20 日(日)
会 場:森美術館
(東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53 階)
開 館 時 間:10:00-22:00 | 火 10:00-17:00
*いずれも入館は閉館時間の 30 分前まで *会期中無休
入 館 料:一般 1,800 円、学生(高校・大学生)1,200 円、
子供(4 歳―中学生)600 円、
シニア(65 歳以上)1,500 円
WEBサイト:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/catastrophe/index.html
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※当選は、チケットの発送をもってかえさせていただきます。