田根剛「未来の記憶」

こんにちは。箱庭キュレーターのKIMIです。
今日は、フランス・パリを拠点に世界各地で活動している建築家・田根剛さんの美術館での初めての個展「未来の記憶」を鑑賞してきたので、ご紹介したいと思います。

田根さんは26歳の時に、国際コンペ「エストニア国立博物館」で最優秀賞を受賞し、現在は建築作品だけでなく、舞台美術、展覧会の会場デザイン、国際フェアのインスタレーションなど、幅広く活躍しています。

田根剛「未来の記憶」(左側が建築家・田根剛さん。右側が映像を担当したアーティストの藤井光さん)

開幕式では、「場所の記憶から未来が生まれ、ひとつの時代が動き始める。展覧会という場所は、ひとつの時代を表現する場だという思いもあり、長い時間向かい合ってきたものをこの場で表現しました。」と語る田根さん。

そんな場所の記憶から生み出された建築、そして、未来へと繋ごうとする「未来の記憶」が今回の展覧会のテーマ。「建築は未来の記憶をつくること」という田根さんの建築に対する思想がとても素敵なんです。

まるで記憶の中を歩いているような感覚に!天井高6mの空間を埋め尽くすリサーチ手法!

田根剛「未来の記憶」

会場に入り、天井高6mの空間をドーンと使って、壁にも床にもたくさんのイメージとテキストが貼られた空間。田根さんがどのプロジェクトにおいても実施するリサーチの手法「Archaeological Reseach(考古学的リサーチ)」なのだそう。

田根剛「未来の記憶」

場所から連想される膨大なイメージを壁面に貼り、分類・調査を繰り返すことで思考を整理していくリサーチ手法。ここでは、「〈FICTION〉幻想も記憶である」「〈IMPACT〉衝撃は最も強い記憶である」など、古代から未来へ向かう記憶を12のテーマで掘り下げています。

田根剛「未来の記憶」

まるで記憶の断片の上を歩いていくようなイメージ。隅から隅まで、ひとつひとつを拾い上げて確認したくなるような、そんな気分になって、子どものようにくるくる何度も歩いてしまいました。

田根剛「未来の記憶」(エストニア国立博物館・映像:藤井光)

続いて、エストニア国立博物館を撮影した映像が巨大スクリーンで登場します。本当にすぐそこに存在しているような、一歩踏み出せば博物館に行けそうな感覚に陥り、エストニアを身近に感じることができました。いつか本当に行ってみたいですね。

数々の巨大模型が圧巻!展示方法にも注目です。

田根剛「未来の記憶」(エストニア国立博物館の模型)

次の部屋には、今まで手がけた建築物や現在進行形のプロジェクトなど、代表作7作品が並んでいました。先ほどの映像でも見た、エストニア国立博物館の10mにも及ぶ巨大模型の存在感の凄さはもちろんのこと、ぜひじっくり見て頂きたいのは、この展示の方法。

田根剛「未来の記憶」

古材の上に、いろんなものがバランス良く乗っているのです。

田根剛「未来の記憶」

これらは、Archaeological Research(考古学的リサーチ)の過程で集められたさまざまな資料やオブジェクトなのだそう。
なんだか宝探しでもしているようなワクワク感に、掘り出し物を探したくなっちゃいました。

田根剛「未来の記憶」(新国立競技場案の古墳スタジアム)

そんな中、私が一番ワクワクしたのは、この古墳スタジアムの模型。
2012年の新国立競技場基本構想国際デザイン・コンクールでファイナリスト11人の中に選ばれた作品です。奥にある巨大なスタジアムの模型の中には、実際に入ることができます。

田根剛「未来の記憶」

都心の中に、本当にこんな森のようなスタジアムがあったら、どんな感じなのだろうと、頭の中で妄想が止まりませんでした。

田根剛「未来の記憶」

そして、ここにも古墳にちなんだ展示物がチラリ。

他にもまだまだ見どころ盛りだくさんです。ぜひ、隅々までチェックしてもらいたい空間でした。

100作品以上の全プロジェクトをタイムラインで紹介!

田根剛「未来の記憶」

田根剛「未来の記憶」

最後に、「数々の挑戦」のテーマで、2004年以降今までに手がけたプロジェクトがズラリと並んでいます。ひとつひとつが想像をはるかに超えた素晴らしさで、実物が見てみたくなるものばかり並んでいました。建築好きにはたまらないゾーン。ここだけで、数時間使ってしまいそうです。

田根剛「未来の記憶」

田根さんの頭の中を覗き込んでいるような感覚になれる今回の展示。なんだか自分の脳内が広がったような気がします。ぜひ、皆さんも記憶の中を探検しながら、鑑賞してみてくださいね。

    田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ― Digging & Building

    会期:2018年10月19日(金)〜2018年12月24日(月)
    会場:東京オペラシティ アートギャラリー
    (東京都新宿区西新宿3-20-2)
    時間:11:00〜19:00(金土は20:00まで)いずれも最終入場は閉館30分前まで
    休館日:月(12月24日は開館)
    料金:一般 1200円 / 大学・高校生 800円 / 中学生以下無料
    URL:http://www.operacity.jp/ag/exh214/

    【同時開催】
    田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future ― Search & Research

    会期:2018年10月18日(木)〜12月23日(日・祝)
    会場:TOTOギャラリー・間
    住所:東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
    開廊時間:11:00~18:00
    休廊日:月、祝(11月3日、12月23日は開館)
    URL:https://jp.toto.com/gallerma/ex181018/index.htm