EXHIBITION いまオススメの展示・イベント
杉本博司と榊田倫之による新素材研究所の10年間にわたる活動を振り返る!建築倉庫ミュージアム企画展『新素材研究所・ -新素材×旧素材-』
こんにちは、シオリです。
芸術の秋、また魅力的な展覧会がスタートしました。現代アートと建築好きの方なら必見の企画展『新素材研究所・ -新素材×旧素材-』です。
開催されているのは、2016年に天王洲にオープンした「建築倉庫ミュージアム」。建築模型を保存・保管する場所であり、それをアートとして見せるという新しい視点で私たちを楽しませてくれていますが、2018年5月にリニューアルオープン。従来の収蔵庫そのものの展示から、新たに2つの展示室に生まれ変わり“より変化のある展示”を発信してくれています。
そして、今回新たにスタートしたのが、2018年10月21日(日)〜2019年1月14日(月・祝)まで開催の企画展『新素材研究所・ -新素材×旧素材-』です。
「新素材研究所」は、世界的に活躍する現代美術作家・杉本博司が建築家・榊田倫之と共に2008年に設立した建築設計事務所。「旧素材こそ最も新しい」という理念のもと、古代や中世、近世に用いられた素材や技法を現代にどう再編して受け継いでいくかという課題に取り組み、様々な作品を残してきました。直島の「護王神社」再建プロジェクトや小田原文化財団「江之浦測候所」などは、行ったことがある、聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
本展は、そんな新素材研究所の10年間の軌跡を、作品や素材を通して紹介する展示となっています。カタログからは建材を選ばず、骨董から産業資材まで独自の視点で見立てた素材を日頃から集め、それらを設計に生かして空間を作るという杉本博司氏、榊田倫之氏お二方の思考を垣間見ることのできるまたとない機会です!
今日は、その貴重な展示の様子をレポートでお伝えしていきたいと思います。
新素材研究所が10年間で手がけたプロジェクトの作品と素材が並ぶ
会場には、これまで新素材研究所が手がけてきたプロジェクトの建築模型、使用した素材の数々、そして杉本氏による竣工写真などが、美しく展示されています。
“素材”を展示すると聞くと、作品として形になっていないものが並ぶってどんな感じなんだろう?と思う方もいるかもしれませんが、展示そのものもアート作品と思えるほど、素敵にレイアウトされていました。聞くところによると、杉本氏が開催直前まで細かい調整を行なっていたのだとか。
方眼マットに並べられ展示されている様子も、なんだか素材というものを客観的に見ることができるようで、新しさを感じました。素材自体は昔から使われているものなのに、不思議です。
足元にも様々な素材が。古くから使われている石や木など、自然の素材が多いですが、こうして置かれていると無機質なようにも感じられます。
展示台をはみ出して置かれているのは、光学硝子。カメラのレンズにも使われている透明度の高い硝子です。これは、江之浦測候所で太平洋を望む屋外に作られた舞台の床として使われているものですが、こんなに間近で素材感を味わいながらじっくり見られるのはこの展覧会ならでは。
他にも、様々な素材と作品が美しく展示され、唯一無二の空間が作り上げられていました。
現地に足を運びたくなる!日本と世界の作品が一同に。
新素材研究所が手がけてきたプロジェクトは、日本全国、そして世界に点在しています。それぞれの現地に足を運ぶとなると大変ですが、本展覧会ではそれらが一同に会したと言っても良いほど。各地の作品が模型や写真で紹介されており、見ていると実物を見に行きたくなってしまう内容になっているんです!
まず、入口で私たちを出迎えてくれるのがこちら。香川県の直島にある「護王神社」再建プロジェクトの1/10模型です。石、木材、ガラスの素材が活かされた佇まいが印象的。
私は現地に訪れたことがありますが、本当に素敵な場所なんですよ。この模型を見ることで思い出して、また現地に足を運びたくなってしまいました!
そしてこちらは、杉本氏の構想から20年をかけて2017年に小田原に開所した江之浦測候所の模型と、杉本氏の代表作品「海景」が並べられた展示です。実際の施設も海に面したところに佇んでおり、水平線を眺められる場所にあります。その様子を再現したようなこちらの作品は、今回の展示作品の中でも注目の一つと言えます。
施設全体の模型とは別に、一部分を切り取った模型もあります。アートの起源に思いを馳せ、それを日本古来の伝統技法や近隣から出土した素材を用いて形にした施設である江之浦測候所。実は私、この模型を見たあとどうしても実物を見てみたくなり、翌週に行ってしまいました・・!みなさんも、きっとこの展示を見たら現地に行って見たくなるはずです。
ヴェネツィア建築ビエンナーレ2014にて杉本氏が発表したガラスの茶室「聞鳥庵(もんどりあん)」の模型はちょうど中心あたりに置かれており、一際目を惹きました。1/10の模型でも引き込まれるような魅力を放っているのに、実物はどんなに素敵だったのでしょうか。想像もつきません!
そんな風に、素材や模型、写真を見ていると、いろんなところへ旅しているような気分を味わえました。
ちなみに、今回の来場者にはこちらの新素材研究所作品集が配布されます。会場を楽しんだあと、自宅でも作品を楽しめるのは嬉しいですね。
建築に詳しい方もそうでない方も、たくさんの刺激をもらえる企画展「新素材研究所・ -新素材×旧素材-」。ぜひみなさんも、訪れてみてはいかがでしょうか?
新素材研究所・ -新素材×旧素材-
NEW MATERIAL RESEARCH LABORATORY・ -New Material × Old Material-
*展覧会タイトル読み「しんそざいけんきゅうじょてん -しんそざい×きゅうそざい-」
*「・」は「展」と新素材研究所設立10周年の「10」をかけている
会期:2018年10月21日(日)〜2019年1月14日(月・祝)
会場:建築倉庫ミュージアム 展示室A
住所:〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10
開館時間:火曜〜日曜11時〜19時(最終入館18時) 月曜休館(月曜が祝日の場合翌火曜休館)
入館料金:一般 料金 3,000円、大学生/専門学生 2,000円、高校生以下 1,000円
※展示室B観覧料、倉庫見学ツアー料(事前予約制)、新素材研究所作品集を含む
*障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。
*それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
https://archi-depot.com/exhibition/new-material-research-laboratory
-
◆関連イベント
ギャラリートーク
解説者:榊田倫之(敬称略)
日時:2018年12月1日(土)11時30分~12時
会場:展示室A
参加費:無料(事前申込不要。当日有効のミュージアム入場券が必要)
講演「新素材研究所の設計手法について」(仮題)
登壇者:榊田倫之(敬称略)
日時:2018年12月1日(土)14時~15時(13時30分より受付開始)
会場:寺田倉庫 TERRATORIA
定員:120名
参加費:無料(当日有効のミュージアム入場券が必要)
申込締切:11月30日(金)まで
申込方法:Eメール ※詳細はこちらのWEBサイトからご確認ください。
講演「新素材研究所創業記」(仮題)
登壇者:杉本博司(敬称略)
日時:2019年1月12日(土)14時~15時(13時30分より受付開始)
会場:寺田倉庫 TERRATORIA
定員:120名
参加費:無料(当日有効のミュージアム入場券が必要)
申込締切:1月11日(金)まで
申込方法:Eメール ※詳細はこちらのWEBサイトからご確認ください。