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多様な「石」をあらゆる視点から楽しめる!特別展示『石の想像界――アートとアーティファクトのはざまへ』に行ってきました。
こんにちは、箱庭編集部 moです。
今日は、JPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」で開催中の特別展示『石の想像界――アートとアーティファクトのはざまへ』をご紹介したいと思います。
わたしは以前から石や岩が好きで、旅行の際もその土地の石を拾ったりジオグラフィックを楽しめる場所を選んだりしています。今回「石」がテーマの展示ということでワクワクした気持ちで足を運んできました。
本展が開催されているJPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」は、日本郵便株式会社と東京大学総合研究博物館が協働で運営をおこなう施設。大学の研究室が関わっていることもあり、いつもの美術館とはまた違う楽しみ方ができる展示でした。それでは内容をご紹介していきます!
アートと非アートの境界とは?
本展は「石」がテーマとなっていますが、東京大学総合研究博物館の施設ということもあり、アートだけではなくサイエンスの分野からの視点も楽しめるのがとても興味深いです。
「アート(美術品)」としての石も、自然界から切り取られ研究室に持ち帰られ標本化された学術的な「ネーチャー(天産品)」の石も、どちらも「アーティファクト(人工物)」に変わりなく、美術展においてはアートのものも非アートのものも区別がつきにくく、違いを感じにくい。
そういった点に注目したことから、本展ではアート作品と学術標本が混在するように展示され、その対比を楽しむとともに、現代人にとって「石」という存在とその独特の造形美を再確認させてくれる内容となっています。
国内外のコレクション、学術標本、現代美術作品が約100点集結した“石”の展示
前述した通り展示室には美術品と学術標本が混在しており、年代も関係なく展示されています。「機能と想像界」「テクスチュア」など幾つかのテーマに分類された、ありとあらゆる「石」をそれぞれ観察し、自分なりに対比しながら楽しむことができます。
入り口から存在感を放つ、石の彫刻家・和泉正敏さんの作品『その頃』。大阪城再建の為に小豆島から切り出された岩から、建築に使用されなかった「残念岩」を切り取り作品にしたものだそう。
石という天産物に造形が与えられたことにより、美術品として価値のあるものとして生まれ変わったことが伝わる作品です。
こちらは紀元前300-100年に作られたとされる歴史的な石の彫刻『メスカラ女性立像』です。何千年も前に作られたにも関わらず20世紀のモダン彫刻のようなシンメトリーな美しい像で、キャプションを見て初めて美術作品ではなく学術標本だと知りました。
どちらも人によって彫刻された「石」であることは変わりありませんが、一方は美術作品で、もう一方は学術標本。見る人の捉え方によってアートにも感じるし非アートにも感じる。こういった対比が会場全体で楽しめる、ほかにはない実験的な展示となっています。
ありのまま「石」を感じ、楽しむ。
難しいことはいろいろ考えず、とにかくそこにある、ありのままの「石」を感じることが本展を楽しむコツだと思います。たくさんの展示品の中でわたしが特に気になった石をもう少しだけご紹介します。
考えぬかれた造形で、グラフィカルな影まで美しいバードストーンや環石
石のテクスチュアが美しく精巧に研磨されたバナーストーンなど、「とても美しい作品だなぁ」と思って見ていましたが、実は作品ではなく学術標本でした!!
「これは何の石だろう?めずらしい石なのかな?」と思ってキャプションを見てみると、ポリウレタン製のアート作品であることにまた驚かされました。
じっくり見ていても、美術作品と学術標本の間には違いがないように思え、むしろ学術標本の方が美しくよりアートに感じてくるものさえありました。
このほかにも、スケッチや模型などありとあらゆる「石」を見ることができます。学術標本なのか?美術作品なのか?ありのままに見て想像を膨らませる、まさに本展のタイトル通りの「石の想像界」が広がっています。
最後にこちらをご紹介。石の表情がとても綺麗でずっと見ていられる作品だなぁと感じましたが、美術作品ではなく東京大学の研究室で実際に使われている鉱物標本のプレパラートでした。
美術作品ももちろん美しく素晴らしいものが多いですが、今回サイエンスの視点からの「石」を見ることで、改めて石そのものの造形美や素材としての価値を感じました。
本展を通して様々な「石」を見ることで、「石」そのものの魅力を再確認するとともに、アートとは一体何なのか?と現代美術に対しても考察を深められる機会となりました。きっと他の美術館の展示とはまた違った楽しみ方ができるのではないでしょうか?
インターメディアテクはJR東京駅丸ノ内南口目の前のKITTE内にあるので、アクセスも便利です。気になった方はぜひ一度足を運んで、じっくり「石」の世界を楽しんでみてくださいね。
特別展示『石の想像界――アートとアーティファクトのはざまへ』
会期:2018年9月26日〜2019年1月27日
会場:JPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」
(東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE 2・3階)
開館時間:11:00-18:00(金・土は20時まで開館)※時間は変更する場合があります。
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日休館)、年末年始、その他館が定める日
入館料:無料
問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL :http://www.intermediatheque.jp/