石川直樹

こんにちは!箱庭キュレーターのKIMIです。
今日は、世界をフィールドに活躍する写真家・石川直樹さんの東京で初の大規模個展「この星の光の地図を写す」の内覧会に行ってきたので、ご紹介したいと思います。

石川直樹(石川直樹さんご本人)

石川直樹さんは、弱冠22歳で北極点から南極点までを人力で踏破、23歳で七大陸最高峰の登頂に成功しました。その後も世界各地を旅しながら、人類学や民俗学などの観点を取り入れた独自のスタイルによる写真作品によって、私たちの日常や世界を見つめ直す活動を展開し続けて注目されています。

2016年より日本各地を巡回してきた「この星の光の地図を写す」展。今回の東京でラストを迎えます。石川さんはまさにこの展覧会の開催地である東京の初台で生まれ育ち、東京オペラシティーでの開催は、感慨深いものがあるのだとか。

石川さんは開会式でも、「20年間の旅で撮影した、自分が見てきた光景がすべて詰まっているこの展覧会を、自分の生まれた故郷の思い入れのある場所で、2年間に及ぶ長い巡回展の最後を締めくくることができて嬉しいです。」と語っていました。

初期の作品から最新作まで盛りだくさん!

石川直樹展示風景(「DENALI」1998年 より)

展示は、まぶしいぐらいに真っ白の世界からスタートします。こちらは、石川さんの旅の原点、20歳の時に初の高所登山を経験、登頂に成功した北アメリカ・アラスカ山脈最高峰(標高6190m)の「DENALI」(デナリ)の風景です。白い世界の中にいるからでしょうか、写真を見た瞬間、自分も雪山にいるような感覚に包まれました。

石川直樹展示風景(「POLAR」2007年 より)

石川直樹展示風景(「POLAR」2007年 より)

石川直樹展示風景(「POLE TO POLE」2000年 より)

一般的に写真展では、一つ一つの写真の近くにキャプションが置かれていますが、本展ではそれが見当たりません。作品の説明はハンドアウトで見られるようになっており、展示会場には、「DENALI」、「POLE TO PLE」や「POLAR」、そして「ANTARCITICA」と、シリーズ名のみが書かれたスッキリとした空間になっているんです。

石川直樹

そんな中、各所に展示されている石川さんの文章にもぜひ注目して頂きたい。写真家だけでなく、文筆家でもある石川さんの思考と共に、ハッと考えされられる言葉が綴られていました。

ガラッと変わる展示風景に驚かされる!

石川直樹展示風景(「NEW DIMENSION」2007年 より)

真っ白い世界から一変して、深い赤の世界へ。こちらは、各地に残る先史時代の壁画を撮影した「NEW DIMENSION」シリーズ。

石川直樹展示風景(「NEW DIMENSION」2007年 より)

この色の変化に、体温や感情までもチェンジされた感覚に陥り、壁画だけでなく、そこにたどり着くまでの道のりや自然の様子が、よりリアルに目に入ってきました。

石川直樹展示風景(「CORONA」2010年 より)

石川直樹展示風景(「THE VOID」2005年 より)

さらに奥に進むと、これまた雰囲気がガラッと変わり、今度は濃い青の世界、ポリネシア・トライアングルの島々をとらえた「CORONA」と、映像作品の「THE VOID」へと続きます。

この空間にいると、今度は海の中を航海しているような感覚に。
石川さんは、1998年、南太平洋最後の航海士といわれるマウピアイルグ氏(サタワル島生)を訪ね、1ヶ月間彼に指示しスター・ナビゲーションを学び、同年秋には、サイパンからサタワル島までの1000キロに及ぶ航海に同行し、ピアイング氏によるスター・ナビゲーションを経験しています。

写真や映像を観ていると、石川さんが今まで体験した探検の楽しさだけでなく、過酷さまでも一緒に追体験しているような気分になり、心にグッとくるものを感じました。

石川直樹展示風景(「Mt.Fuji」2008年 より)

そして、展示はまだまだ続きます。少し落ち着いた雰囲気のグレーの世界。この部屋は、石川さんがトレーニングのために始めた富士登山での作品が並びます。雪の残る冬季も含め、30回以上登頂したんだとか。眺める山ではなく、登る山として富士山をとらえてみたいというのが撮影を始めた理由なのだそう。

石川直樹展示風景(「K2」2015年 より)

そして、また真っ白の世界がTHE NORTH FACEのテントと共に登場します。

石川直樹展示風景(「K2」2015年 より)

ここは、ヒマラヤの西端に位置する世界第2位の高峰に向かう遠征で撮影された「K2」。世界でもっとも登ることが難しく、「山の中の山」とも評されている場所。2011年以降、毎年通ったヒマラヤ8000m峰の高峰遠征の集大成として、2015年に挑戦したものの、相次ぐ雪崩などで断念することになったとのこと。

石川直樹(映像「K2」2015年 編集:山田慶太、音楽:坂口恭平)

展示では、パキスタンの街から遠征本番に至るまでを写真だけでなく、映像でも紹介しています。映像を観るのはテントの中で。靴を脱いで、ゆっくり座って観るスタイルは、山の臨場感が倍増しそうですね。

石川直樹展示風景(「K2」2015年 より)

テントの周りにも写真が浮かんでいるように展示されているので、こちらもお見逃しなく。

石川さんの活動の裏側を一挙公開!

石川直樹

展示の最後を締めくくるのは、「石川直樹の部屋」です。石川さんが遠征の際に携行し使用した装備や道具、旅先で手に入れたさまざまなモノが展示されていました。

石川直樹

この展示、至る所に石川さんの直筆のコメントがあるのですが、どれもこれもクスっと笑えるものが多くて、とてもおもしろいんです。
展示にあったスタンプを試しに押してみたら、コメント通りに“むちゃくちゃ”押しにくくて、爆笑してしまいました。

石川直樹

石川直樹

なんと「写ルンです」をガチで使っていたり、街でも山でもフィルムで撮影したりしている石川さん。世界で一番好きな動物は“ヤク”なんですって!そんな石川さんのお茶目な部分からリアルな事情までを知ることが出来て、とても身近に感じられるスペースでした。
ご紹介したのは、ほんの一部。まだまだ情報満載なので、隅から隅までじっくりゆっくり観ることをオススメします。

石川直樹展示風景(「Mt.Fuji」2008年 より)

石川直樹展示風景(「MAREBITO」2009年 より)

石川直樹展示風景(「POLAR」2007年 より)

1990年代終盤の初期作から最新作まで、初公開作品も展示されているので、石川さんが今まで歩んできた道のり、見続けてきた風景、山、自然、民俗、神々など、地球上の普段なかなか見ることができない景色を体感できる今回の展示。地球の新しい一面を知ることの出来る貴重な体験になるのではないでしょうか。ぜひ、じっくり鑑賞して頂きたいと思います。

    石川直樹「この星の光の地図を写す」

    会期:2019年1月12日(土)〜2019年3月24日(日)
    会場:東京オペラシティ アートギャラリー
    (東京都新宿区西新宿3-20-2)
    時間:11:00〜19:00(金土は20:00まで)いずれも最終入場は閉館30分前まで
    休館日:月(祝日の場合は翌火曜日)、2月10日(全館休館日)
    料金:一般 1200円 / 大学・高校生 800円 / 中学生以下無料
    URL:http://www.operacity.jp/ag/exh217/